2019年7月19日(金)

勝利のメンタリティー(山本昌邦)

フォローする

温故知新 W杯名勝負に見る超一流選手の存在感

(3/3ページ)
2018/5/25 6:30
保存
共有
印刷
その他

昔の試合映像を見ていると、いろいろな変化に気づいてそれも楽しい。例えば、スタジアムのピッチを取り巻く広告看板の数は大会を重ねるごとにどんどん増えていく。そこにビジネスモデルの変化を見て取れる。キヤノンや富士フイルムといった日本の企業の名がそこにあるのが誇らしい。

今と違う試合風景に懐かしさも

ルールも少しずつ変わっている。GKがバックパスを手で扱うのを見ると逆に新鮮に感じてしまう。かといって、リードするチームが露骨な時間稼ぎをバックパスを使ってするわけでもない。プレーの尊重という本質を理解してプレーしていたのだろう。

70年大会で初めて導入された警告・退場システムは選手に示されるカードの大きさに笑った。胸のポケットからはみ出るくらいに大きいのだ。キャプテンマークも70年大会はビニールテープを腕に巻いているかのごとくで、それが74年になると立派な腕章になっている。昔のサッカー選手はみんな、ピチピチのパンツを履いていた。そういう一つ一つが面白い。

W杯優勝トロフィーを手にするのはどこか。4年に1度の大舞台がまもなく幕を開ける(トロフィーを披露する元ブラジル代表のジウベルトシウバ氏)=共同

W杯優勝トロフィーを手にするのはどこか。4年に1度の大舞台がまもなく幕を開ける(トロフィーを披露する元ブラジル代表のジウベルトシウバ氏)=共同

ルール変更に関していえば、交代選手が2人だったことが勝敗に直結したと思える試合もあった。82年大会のフランスはそこで泣いたように思う。西ドイツのGKハラルト・シューマッハーに体当たりされた選手が負傷退場となり、その穴埋めで交代の2枠を使い切ってしまったのだ。それで延長戦で補充できない事態に陥り、カールハインツ・ルンメニゲ、ホルスト・ルベッシュと新鮮なFWを投入してきた西ドイツに1-3から追いつかれてしまった。

この準決勝はW杯史上初のPK戦にもつれこみ、ドイツのW杯PK戦不敗伝説の始まりにもなった。

2点差を追いつくドイツの精神力は本当にすごいけれど、それでも私はプラティニの素晴らしさに感嘆した。これまでの私の頭の中のプラティニは「将軍」の異名どおり、悠然と構えて、おしゃれに周りを動かすイメージだったのだが、西ドイツ戦のプラティニは「こんなに走るの」というくらい動きの質と量がすごかった。

パスを出して、ドリブルでボールを運んで、味方のパスを走って受けて、ゴール前でシュートも放つ、まさに大車輪の活躍。延長に入る前、みんなが疲れ果てて地面に寝転がって給水しているときも、プラティニは昂然(こうぜん)と胸を張って立っている。何から何まで「すごい男だ」と思わされた。

どんなに時代が変わって戦術的に進化しても、この競技の本質的な部分として、試合の帰趨(きすう)を大きく左右する時間帯で決定的な仕事をする選手が超一流と呼ばれることに変わりはない。ベッケンバウアーもクライフもプラティニも、そこらあたりの存在感は本当にまばゆいばかりなのだ。日本からこういう選手を出したいものだと切に思う。

ロシア大会は気象条件に恵まれた大会になる。試合開始は日本時間で夜の9時、午前0時、午前3時といった時間帯がメーンになる。午前3時はさすがにきついかもしれないが、多くのカードを勉学や仕事に支障のない範囲で見られることと思う。ぜひとも、一人でも多くのスポーツ愛好者にW杯を楽しんでもらいたい。

昔の名勝負を立て続けに見たせいで余計にそう感じるのかもしれないが、W杯を見るということは歴史の証人になるということ。見逃す手はない。

(サッカー解説者 山本昌邦)

「スポーツ」のツイッターアカウントを開設しました。

勝利のメンタリティー(山本昌邦)をMyニュースでまとめ読み
フォローする

  • 前へ
  • 1
  • 2
  • 3
保存
共有
印刷
その他

サッカーコラム

電子版トップスポーツトップ

勝利のメンタリティー(山本昌邦) 一覧

フォローする
南米選手権のエクアドル戦で、競り合う久保建(右)=共同共同

 6月のほぼ同時期、男子のサッカー日本代表はブラジルで行われた南米選手権(コパアメリカ)に、女子日本代表の「なでしこジャパン」はフランスで行われたワールドカップ(W杯)に参加した。男子は惜しくも得失点 …続き (7/4)

U―20日本代表はU―20W杯でエクアドル、メキシコ、イタリアと対戦する=共同共同

 6月、サッカーの日本代表は4台の“バス”をブラジル、フランス、ポーランドで走らせる。男子のU―20(20歳以下)、U―22(22歳以下)、フル代表、そして女子のなでしこジャパンである。それぞれ目指す …続き (5/23)

昇格組の大分の奮戦は驚きに値する=共同共同

 明治安田生命J1リーグは長丁場の戦いのほぼ4分の1を終えたところ。第8節終了時点でFC東京が6勝2分け(勝ち点20)の無敗で首位を走り、2位広島(同17)、3位名古屋(同16)と続く。一方、降格圏に …続き (4/25)

ハイライト・スポーツ

[PR]

新しい日経電子版のお知らせ

より使いやすく、よりビジュアルに!日経電子版はデザインやページ構成を全面的に見直します。まず新たなトップページをご覧いただけます。

※もとの電子版にもすぐ戻れます。