2019年9月16日(月)

準備宿泊1カ月、戻らぬ住民 福島県大熊町

2018/5/23 18:22
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東京電力福島第1原子力発電所事故で全町避難が続く福島県大熊町で、住民が夜間も自宅で過ごせる「準備宿泊」が、原発の立地自治体としては初めて開始してから24日で1カ月となる。来春を目指す避難指示解除に向けての動きだが、故郷に戻った住民は少ない。帰郷した住民からは安堵の声の一方、事故から7年たっても進まない復興に不満の声も上がっている。

大川原地区で新たな役場の建設が進む(18日、福島県大熊町)

大川原地区で新たな役場の建設が進む(18日、福島県大熊町)

「生まれ育った土地だから、やっぱりほっとするね」。大川原地区に暮らす井戸川清一さん(64)は20日、2017年にリフォームしたばかりの自宅で愛犬をなでた。「周りに人はいないけど、ここでのんびり暮らせるのがいい」

避難先の南相馬市で家を購入したが、住民の帰還を前提とした準備宿泊が始まると聞き、帰郷を決断した。自宅の放射線量を線量計で測ると、環境省が定める基準を下回る1日あたり約2マイクロシーベルトだが、山中など除染していない場所の線量は高い。「子供がいる人や若い人は怖がるだろう」と話す。

準備宿泊の対象は内陸部の大川原地区と中屋敷地区。両地区には昼間しか立ち入りできなかったが、4月24日から夜間の滞在も可能になった。町によると、5月1日時点で両地区合わせて計138世帯378人の住民票があるが、準備宿泊を申請したのは11世帯19人(同22日時点)にとどまる。

両地区の人口はもともと少なく町全体の約4%。町の中心部があったJR大野駅付近は帰還困難区域に指定されており、町は大川原地区を復興拠点にしたい考え。19年4月の開庁を目指して新しい町役場の建設が進むほか、復興住宅と商業施設、医療施設も作る予定だ。

だが復興庁が18年1月に全世帯を対象に行ったアンケート(回答率50.3%)によると、「戻りたいと考えている(将来的な希望も含む)」と答えたのはわずか1割ほど。約6割が「戻らないと決めている」と回答した。うち約4割弱の人が理由として「すでに生活基盤ができているから」と答えた。

帰還を決めかねている住民もいる。大川原地区の水道業、長谷川信一さん(71)は妻と5月から週末に準備宿泊をしているが、「来る度に周りの家が解体され、なくなっていく」と嘆く。

約1年半前に脳梗塞を患い、リハビリのため、避難先の同県本宮市にある病院に通う。「大川原地区で生活は厳しく、今は別荘のような状況だ。7年の歳月は長すぎた。もう少し早く住民が戻れる環境を整えられなかったのか」とため息を漏らした。

■避難解除の地域でも帰還進まず

 福島第1原発から20キロ圏に位置する福島県浪江町の一部、富岡町の大部分の地域は2017年春、避難指示が解除された。解除から1年余が経過したが、全人口に対する居住者の割合は浪江町の一部で4.0%、富岡町の大部分で5.8%で、帰還が進んでいない。

大熊町の復興計画によると、国道6号より東側で福島第1原発の周辺地域約1100ヘクタールは中間貯蔵施設の用地となる。町は大川原地区を復興拠点に、20年までにJR大野駅周辺の一部で避難指示を解除し、JR常磐線の再開にこぎ着ける計画だ。22年には大野駅を含む約860ヘクタールの区域で避難指示を解除する。解除後5年で居住人口2600人を目指す。

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