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サンウルブズ、初の連勝生んだチームの一体感

スーパーラグビーに参戦中の日本チーム、サンウルブズが参戦3季目で初の連勝を果たした。開幕9連敗という苦境からの脱出にもなる。当初の予定よりかなり後ろにずれたが、チームは徐々に成熟。6月に迎える大事な代表戦3試合にも追い風となる。

11日のレッズ戦と、続くストーマーズ戦。連勝した2試合には勝敗以外の「今季初」があった。防御ラインをタックルされずに突破した「クリーンブレーク」の数。チャンスの多寡に直結するこの指標に変化があった。

レッズ戦で今季初勝利を喜ぶ堀江(右から2人目)らフィフティーン=共同

今季は対戦相手に1試合平均16度の突破を許していたが、レッズ戦は6度、ストーマーズ戦は7度と初の1桁を記録。自軍のクリーンブレークは2試合とも相手を上回った。こちらも1年2カ月ぶりの出来事である。

6連敗中だった4月半ば、田辺淳コーチが挙げた課題もこの点だった。「ラインブレークされている回数がここ2年よりかなり増えている。タックルせずにトライにつながっているシーンがかなり多い」

今季は大量失点の敗戦が多いが、タックルの成功率が突出して悪かったわけではない。目立ったのは相手に触れることすらできずに突破される場面。1人で前に飛び出して間を走られたり、密集の両サイドに配置する人数を誤って外を抜かれたり。組織守備の乱れからだった。

ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC)は日本代表と同じ、速い防御ラインを今季から導入。ボールを奪いやすくなるメリットの一方、入れ違いに抜かれる危険性も高まった。9連敗中の失点は平均で41に達した。

意思疎通が向上し守備改善

ところが、レッズ戦では28失点と勝負に持ち込める数字に抑えられた。ストーマーズ戦も23失点。相手の不出来もあったにせよ、サンウルブズの守備が改善されたのは確か。その理由はいくつかある。

最大の要因は意思疎通の向上だろう。4月半ばまでの6試合はけが人の多発もあり、前の試合から先発が平均で8人交代していた。直近の5試合の入れ替えは平均4人。同じ顔ぶれで戦うことで守備時の呼吸は整った。

言葉の壁も徐々に崩れ始めた。今季の出場メンバーは海外出身者の方が多いうえ、英語を流ちょうに操る日本人も少ない。貴重なバイリンガルのリーチ・マイケルが苦労を明かす。「試合中が一番難しい。英語で(指示などを)話した後、すぐに日本語で言うこともあった」

難しい環境を克服するための取り組みがチーム内では行われてきた。SH田中史朗は「ディナーのときに席をバラバラにしていろいろな選手と話すようにしたり、細かいことでコミュニケーションが深まったりしてきた」。出身国の異なるメンバーが混然となっていた2015年ワールドカップ(W杯)の日本代表には及ばないが、徐々に一体感は高まりつつある。

1人が勝手に飛び出して防御ラインにひずみを生んだり、ラックの一方のサイドの人数が足りなくなったりする場面は減った。田辺コーチが特に修正が必要と指摘していたのがセットプレーとキックの後の守備だったが、こちらも改善。ラインアウトの獲得アップによってボールを奪われてからの逆襲を受けることはなくなった。キックを使った戦術への共通理解も深まりつつある。

チームの変化は、選手とスタッフの関係にもみられる。シーズン前半、選手からジョセフHCへの提言が通らず、多少の隙間風が吹いた。そこに連敗が重くのしかかる。流大主将によると、最も苦しかった4月の前半は「自信を失いそうになった」。練習の雰囲気が心配になるほど暗い日もあったが、コーチに守備の微修正を提案するなど選手側の歩み寄りもあって「ジェイミー(HC)と選手の確執のようなものが減ってきた」と主力の1人は言う。

ジョセフHCも手応えを感じているのだろう。初勝利の後にこう話した。「選手との関係が成長してきた。それは(日本代表の)テストマッチにも役立つし、同じような戦いができると思う」

連勝のタイミングは、開幕9連敗で目標の5強がほぼ消えた後だった。シーズンの計画づくりや選手のコンディション管理が適切だったか、見直しは必要だろう。自衛隊駐屯地での訓練を含む開幕前の猛練習は、シーズン後半まで戦うための体力の貯金をつくった一方、負傷で出遅れる選手も生んだ。

ただ、サンウルブズの好調は6月の日本代表のテストマッチにも好影響を与えそう。ジョセフHCが代表とサンウルブズの指揮を兼ねた最大の理由が、スーパーラグビーで勝ち癖をつけることだった。2勝を挙げたことで、17年より悪い成績のまま代表の活動期間を迎える事態は避けられた。

ナンバー8姫野和樹やSH流の成長、フッカー堀江翔太、WTB福岡堅樹の充実、リーチ、田中らの復調など明るい材料もある。

日本代表との「連携」がカギ

一方で、サンウルブズから代表に引き継げないものも存在する。2連勝の実質的な最優秀選手(MVP)、SOヘイデン・パーカーや、ラインアウトの核であるグラント・ハッティング、CTBマイケル・リトルの主軸は日本代表の資格を持っていない。穴を埋める選手に期待したいところ。

そのためには、本人の奮起だけでは足りないのだろう。サンウルブズで培った連係や戦術の成熟を、周囲がどうフォローできるかも問われる。

流は「試合に出たメンバーと、(サンウルブズで)出ていないメンバーがしっかりコネクト(連携)して代表戦に向かうことが大事」と言う。代表で主将を引き継ぐことになるリーチは「ちゃんと準備をすれば結果につながる。準備が一番大事」と話す。

19年のW杯でアイルランドやスコットランドという強豪からの勝利を狙う日本。やや力の落ちるイタリアとの2連戦や、ジョージアとの対戦は負けられない試合となる。ジョセフHCの中間決算ともいえるテストマッチ。サンウルブズではシーズン後半にようやく見せられたチーム力を、1試合目から発揮できるか。

(谷口誠)

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