2019年4月25日(木)

米財務省の制裁乱用、ドル離れに?

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2018/5/23 2:00
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The Economist

マカオの銀行、バンコ・デルタ・アジア(BDA)の本店ほどレトロで落ち着いた雰囲気の銀行は珍しいだろう。植民地様式の淡い黄色の建物で、16世紀につくられた教会の向かいに立つ。入り口には、岩山の間を進む木造船を描いた大きな花瓶が並ぶ。外にはタイル張りの広場があり、ガジュマルの木の影で男たちがくつろぎ、年配の女性が昼食のゆで卵をむいている。

こんな地にある銀行が2005年、世界の金融界を牛耳る支配者の怒りを招き、その権力を思い知ることになった。BDAは、北朝鮮による資金洗浄に関与しているとして、当時の米財務省がBDAを問題視したのだ。預金者はパニックに陥り、世界中の銀行はBDAと距離を置くようになり、マカオ政府が介入に踏み切った。財務省はその後、米国の金融機関に対し、BDAと取引することを禁じた。こうして同行は、米国の金融システムから締め出された。

■世界的金融システムはすべてNYを経由

マカオは、米ワシントンから1万3000キロ以上も離れているが、米国のドルを巡る方針の影響を免れることはできない。ドルの優位性は、経済学者が言う「利用している人数が多いほど、新しい利用者にとっても便利になる」という「ネットワーク外部性」によって高められている。つまり、ある人が取引をしている相手からドルで受け取ってもいいと思うかどうかは、そのドルを受け取ってもいいという第三者が存在するかどうかで決まる。

ドルが受けている恩恵は、これだけではない。スタンフォード大学の教授だった故ロナルド・マッキノン氏が指摘したところによると、通貨の交換や国際決済において、あるいは貿易におけるインボイス通貨として利用されるなど、ドルは他の通貨を仲介するハブとなっている。150種類以上も存在する通貨が、それぞれ直接取引していたら、世界には1万1175カ所以上の外国為替市場が必要となる。だが、それぞれの通貨がドルと取引できれば為替市場は149カ所程度で済む。アフガニスタンの通貨アフガニをポーランドの通貨ズロチと直接交換できなくても、まずアフガニをドルに両替すればズロチを手に入れられる。

同じように、国際的な取引を担うすべての銀行がニューヨークに口座を持てば、どの銀行でも共通の金融ハブを通して他行に送金できる。「世界的な金融システムというのは下水道のようなもので、すべての下水管がニューヨークを経由しているということだ」と、カーネギー国際平和基金のジャレット・ブラン氏は説明する。

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