ソニー社長「センシングの研究投資を強化」
ソニーは22日、2021年3月期を最終年度とする中期経営計画を発表した。同日、本社で開かれた記者会見には、吉田憲一郎社長や十時裕樹最高財務責任者(CFO)が出席した。主なやりとりは以下の通り。
――今回の第3次中期経営計画で吉田社長の色が出ているのはどこですか。
吉田社長「色はあまり出ていない。『感動を呼ぶ』というビジョンは継続する。それを突き詰めるのが今回のメッセージだ」
――(自動運転に使う)センシング向けのCMOS(相補性金属酸化膜半導体)センサーで世界首位を目指すのでしょうか。自動運転市場はいつまでに拡大すると見込みますか。
吉田社長「設備投資のメインがCMOSセンサーとなる。その中にセンシング向けが入っている。今はセンシングで高い業界地位があるわけではないが、培ってきた技術で自動運転に貢献できる」
「自動運転は2030年ごろまでに普及すると言われているが、人工知能(AI)や画像認識技術の進化を見ていると早まるのではないか」
――ソニーの戦略として、持つべきIP(知的財産)の条件はありますか。AIやロボティクスで注力したい分野は。
吉田社長「IPは音楽、映像、アニメ、ゲームの4分野に注力する」
十時CFO「AIやロボティクスはエンターテインメントの分野で(犬型家庭用ロボットの)『aibo(アイボ)』を皮切りに始めた。aiboは介護や企業の現場で使われる可能性もある」
――中期経営計画でモバイル事業をキャッシュカウ(現金の稼ぎ手)と位置づけている。立て直しが必要ではないか。
吉田社長「長期的に持続可能なキャッシュカウにしたい。スマホは消費者向け家電で最大の市場だ。テレビ、カメラだけではなく、モバイルを持っていることが供給網の安全性につながると考えている」
――ここ数年で進めていた事業の入れ替えは終わりましたか。M&A(合併・買収)は想定していますか。
吉田社長「現状で事業の売却は考えていない。いまの事業をどう強化できるかを考えている」
――金融事業やソニー全体の営業利益目標を教えてください。
吉田社長「私の判断で営業利益目標の開示をするのをやめた。経営の長期的視点を大事にしたい。目標は重要だが、目標を定めると3年で成果が出ることにとらわれがちになる。代わりに3年間累計の営業キャッシュフローを目標として開示した。資本市場や株主から意見をいただき対話したい」
――テクノロジー企業として、競争環境をどう見ていますか。研究開発投資の見通しはどうですか。
吉田社長「テクノロジーの活用はエレキ分野にとどまらない。エンターテインメントやコンテンツ作成の分野もテクノロジーやAIを抜きに考えられない。金融分野もフィンテックがある。研究開発の絶対額は大きくは変わらないが、センシング分野や本社の研究開発費用を増やす」