自転車通学、高1に「魔の6月」 気の緩みにご用心
自転車通学の高校1年生は5~6月に要注意――。通学に慣れ始めたこの時期に高校1年生の自転車事故が集中することが専門家の調査で分かった。2015年の通学中の事故は「高1の6月」が430件で最多。気の緩みが大事故を招く恐れもあり、関係者は「事故が増えることを意識して安全策の徹底を」と呼びかけている。

「一時停止する義務があるとは知らなかった」。17年6月の朝、群馬県内の公道で自転車で登校中に事故に遭った高校1年(当時)の女子生徒は振り返る。
緩やかな坂を下った信号のない交差点で自動車と出合い頭に衝突。腕の骨を折る重傷を負った。一時停止の標識と停止線は生徒側にあった。自動車に気付いてすぐにブレーキをかけたが、小雨で路上がぬれ、停止できなかったという。
18年5月上旬には千葉県内で高1生徒が登校時に他校の生徒と並走していたところ接触し打撲と擦り傷を負った。
自転車の専門家で構成し、適切なメンテナンス、マナーの啓発活動などに取り組む「自転車の安全利用促進委員会」(東京)が17年5月に発表した調査によると、15年に起きた全国の通学時の事故件数を学年別、月別でみると「高校1年の6月」が430件と最も多く、3年生の同じ月の約2倍。次いで「高1の5月」の423件が続いた。

委員会によると、高校進学で自転車通学を始める生徒が多く、4月は新しい通学路を注意深く通うため事故は少ない傾向にある。だが5~6月は緊張感が薄れ、危険箇所や交通ルールを熟知しないまま走るため事故が起こりやすいという。
発生場所は、比較的交通量が少ないとされる歩道のない裏道交差点が多く、車との出合い頭の事故が9割近い。信号無視や一時停止違反など、高校生の法令違反が全事故の約7割を占める。前照灯やブレーキなど整備不良もあり、同委員会は「防げたはずの事故が多くある」と注意を促す。
事故の頻発を受け、新学期の交通安全教室に力を入れる学校も多い。兵庫県姫路市立姫路高校は4月下旬、1年生を対象に地元警察を招き、校庭で車を使って死角を確認したり、傘を差して運転する危うさを体験したりする授業を行った。中正佳秀教頭は「入学後すぐ事故の怖さを伝え、安全意識を徹底させたい」と話す。
警察庁の統計によると、自転車を運転中の事故は全世代の中で高校1年にあたる「16歳」が突出して多い。高齢者や児童に比べ、高校生に該当する年齢層が際立っており、17年の自転車乗車中の負傷者数は15~19歳で10万人あたり274人と、全年齢層の70人を大きく上回る。
自転車施策に詳しい三井住友トラスト基礎研究所の古倉宗治研究理事は「教員など大人は交通安全を呼びかけるだけでなく、危険性が高まる学年や時期の統計を踏まえ、事故が起きやすい危険箇所を具体的に示す指導を心がけてほしい」と話している。
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