2018年10月20日(土)

米中が「一時休戦」 米財務長官「貿易戦争を保留」
ちらつく米朝首脳会談への思惑

2018/5/21 17:57
保存
共有
印刷
その他

【北京=高橋哲史】貿易戦争の瀬戸際に立っていた米中が「一時休戦」で合意した。中国が米製品の輸入を増やすと表明し、米側はいったん矛を収めたかたちだ。だが、中国通信機器大手への制裁をはじめ双方の溝は少しも埋まっていない。形ばかりの合意を急いだ背後には、6月12日の米朝首脳会談に向けたそれぞれの思惑がちらつく。

ムニューシン米財務長官=AP

ムニューシン米財務長官=AP

ムニューシン米財務長官は20日の米テレビ番組で「貿易戦争を当面保留する」と明言した。500億ドル分の中国製品に高関税を課す対中制裁案を、ひとまず棚上げするという中国へのメッセージにほかならない。

これに呼応するように、中国の国営メディアはすぐさま「輸入拡大」を呼びかけるキャンペーンを始めた。

「農産品の輸入拡大はすばらしい生活への需要を満たす」。国営中央テレビは21日正午のトップニュースで、大豆や牛肉など米国が輸出を増やしたがっている産品をわざわざ挙げ、生活の質を高めるには輸入の拡大が欠かせないと訴えた。

中国の劉鶴副首相=共同

中国の劉鶴副首相=共同

米中がワシントンで17~18日に開いた貿易協議は協議終了から異例の1日遅れで共同声明を発表した。画期的な合意事項を盛り込んだわけではない。米側が求めてきた対中貿易赤字を2000億ドル減らす数値目標は入らなかった。中国にとって最優先の課題である通信機器大手、中興通訊(ZTE)への制裁緩和も素通りした。

米中関係に詳しい北京の外交筋は今回の協議が「内容に関係なく始めから『合意ありき』だった」とみる。それは協議前の17日に、トランプ米大統領が習近平(シー・ジンピン)国家主席の側近で、中国の代表団を率いる劉鶴副首相との会談に応じた時点で明らかだったという。

今月3~4日に北京で開いた第1回協議では、米側が期待していた習氏との面会が実現しなかった。両国の間に広がる溝の大きさがかえって浮き彫りになり、中国側は習氏と米代表団の面会に応じれば、習氏のメンツをつぶすおそれがあると判断したにちがいない。

それからわずか2週間、トランプ氏が習氏の意を呈する劉鶴氏との会談に踏み切ったのはなぜか。浮かんでくるのは急展開する北朝鮮情勢だ。

習氏は7~8日に北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長を遼寧省の大連に招いた。金正恩氏の訪中は3月下旬に続いてわずか1カ月あまりで2度目だ。習氏は金正恩氏の「後ろ盾」として、北朝鮮への影響力を強めている。

トランプ氏は10日に金正恩氏との史上初の米朝首脳会談を6月12日にシンガポールで開くと発表した。しかし、金正恩氏は首脳会談の見送りをちらつかせ、米側を揺さぶる構えをみせる。

共産党機関紙の人民日報(海外版)は19日付で「米韓は慎重に行動し、緩和に向かっている朝鮮半島情勢を逆戻りさせるべきでない」と北朝鮮を支持する論評を掲載した。北朝鮮が中国という後ろ盾を得て、米国に強く出やすくなった面は否定できない。

トランプ氏は金正恩氏との会談を成功に導くまで、北朝鮮への影響力を強める中国と事を荒立てるのは得策でないと判断した可能性が高い。

習氏からみれば、北朝鮮カードをフルに使って米国との貿易摩擦を「一時休戦」に持ち込んだ成果は大きい。実際に米国が対中制裁を発動すれば、中国経済への悪影響は計り知れないからだ。

もちろん、米朝首脳会談が成功裏に終われば、中国にとって北朝鮮カードの効果は薄れる。トランプ氏が再び攻勢をかけるおそれは残る。

今回の「合意」が時間稼ぎにすぎないことは中国側もよくわかっている。劉鶴氏は19日、中国メディアの取材に次のように答えた。「厚い氷は1日にして溶けない。米中間の長年の構造問題を解決するには時間がかかることも認識しなければならない」

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報