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オリックス、真の4番不在 待たれる大砲の奮起

まさに鬼の形相だった。4月30日、オリックスの小谷野栄一はソフトバンク戦の一回、脇腹付近に死球を受けるとバットを投げ捨て、怒声をあげながらマウンド上の中田賢一に詰め寄った。小谷野は同月1日にも中田に当てられている。1カ月もたたないうちにまた、との思いが激しい感情の発露につながった。

打率は低いものの、首脳陣は小谷野について「ただ打つだけでなく、いろんなことができる」と信頼を寄せる=共同

小谷野の迫力、攻め手封じる?

あまりのけんまくに気押されたのか、中田は以後、生命線のシュートで右打者の内角を思うように突けなくなり、3回5失点でKOされた。今季初めて4番に座った、泣く子も黙る小谷野の迫力で早々に中田の攻め手を封じたとしたら、これも立派な4番の仕事。骨折しても打席に立ち、相手投手に内角攻めをためらわせた故・衣笠祥雄さん(元広島)の気概に通じるものを感じさせた。

試合後の小谷野は「そんなに怒っていないですよ。演技、演技」とさらり。この一件は落着という姿勢を見せたが、打者としての勝負に終わりはない。5月6日のソフトバンク戦の第1打席で今季1号本塁打を放った相手は中田。死球を巡る騒動のすぐ後の対戦で先制弾をお見舞いし、またも中田を敗戦投手にした働きは正真正銘の4番の仕事だった。

ロメロやマレーロ、T―岡田と大砲が居並ぶオリックス打線にあって長距離砲ではない小谷野を4番に据えた理由を、下山真二打撃コーチは「ただ打つだけでなく、いろんなことができる。そういう選手が一人いることでいろんな作戦が組みやすくなる」と話す。

投手有利のカウントになれば、決め球が甘いコースに来ることはまずない。そこで難しい球に大振りして三振するのでなく、たたきつけたり、右方向に転がしたりして進塁打が打てる小谷野を4番に置けば好機が広がるというわけ。下山コーチは「何かやってくれるというものを感じる」と、日本ハム時代の2010年に打点王に輝いた勝負強さも買っている。

期待されるT―岡田も常時4番を任されるだけの信頼を得ていない=共同

ただ、打率がなかなか上がらないこともあり、わずか10日ほどで4番の座はロメロに移った。そのロメロにしても2割1分6厘(5月21日現在)と小谷野より2分以上低く、マレーロに至っては1割台の不振から14日に2軍落ち。T―岡田(2割5分)と吉田正尚(2割6分8厘)は常時4番を任されるだけの信頼を得ていない。

不振の打撃陣、チーム低迷招く

「誰に、走者がいる状況で回すか」(下山コーチ)という観点から4番の人選が決まるが、今季は42試合中26試合で務めたロメロを筆頭に小谷野、中島宏之ら5人が4番を経験した。軸が定まらない打線はチーム打率がリーグ最低の2割2分5厘。試合数は最多ながら、塁打数も462とリーグ最少だ。

ともにチーム最多の5勝を挙げている新人の田嶋大樹とアルバースが引っ張る投手陣はチーム防御率(3.68)がリーグ2位と健闘しているだけに、余計に打撃陣は肩身が狭く、4位に低迷する主因になっている。

なまじ大砲がそろったことで「あいつが打ってくれたら」と互いに依存心が生じているとすれば、何という皮肉。ローズと中村紀洋が競って飛ばし合った近鉄「いてまえ打線」の流れをくむチームならではの、真の4番を奪い合う戦いが見たい。

(合六謙二)

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