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大リーグ、今も絶えぬ禁止薬物使用の現実
スポーツライター 杉浦大介

(2/2ページ)
2018/5/21 6:30
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ニューヨーク・デイリーニューズのコラム二スト、ジョン・ハーパー氏がそう記した意見が楽観的すぎるとは思わない。14年から薬物違反時の罰則が厳しくなり、1回目の違反者に対する出場停止処分は50試合から80試合に、2回目は100試合から162試合にそれぞれ増えた。3回目は永久追放であり、シーズン中に処分を受けた選手はプレーオフにも出場できない厳罰も付け加えられた。これらの新ルールは「抑止力」という意味で一定の効果を発揮しているのかもしれない。

ただその一方で、これで問題が解決したわけではない。その背後では一段と巧妙化している禁止薬物使用と検査のイタチごっこが続いており、依然として多くのスター選手が秘密裏に禁止薬物に手を染めているのではないかという疑惑は拭い去れない。

「今後も大物選手が何人か摘発されても不思議ではない。基本的に禁止薬物を使用する手口の方が常に検査の先をいっている」

今回のカノの出場停止処分を受け、あるベテランのスカウトはそう述べていた。

米国野球殿堂入りは難しく

通算2417安打、305本塁打という素晴らしい成績を残しながら、今回の処分でカノの実績への評価に大きな傷がついた。これまで薬物検査で陽性反応を示した選手の中で、名誉である米国野球殿堂入りを果たした選手は存在しない。たとえ本人がPED使用を否定しても、これでカノの殿堂入りは難しくなったと指摘する関係者が大半。付け加えるなら、今季25勝19敗と好スタートを切り、実に01年以来となるプレーオフ進出を目指すマリナーズも主砲不在となり、大きな戦力ダウンは避けられない。

現役選手を代表するカノの薬物違反は本当に様々な意味で自身、周囲に影響を及ぼすことが改めて証明された。

一方、摘発された場合に失うものがこれほど大きいにもかかわらず、それでも禁止薬物使用はなくなっていない。ポイントになるのは、たとえ出場停止処分を受けても年俸など金銭面の莫大な恩恵はなくならないことだ。PED問題に関して警笛を鳴らし続けるESPNのバスター・オルニー記者が指摘する通り、禁止薬物使用発覚後の契約破棄を認めるなど、抜本的な対策をとらない限りこの問題は続いていくのだろう。

「どういう意図で使ったかは僕にはわからないけれど、結果としてそうなってしまった。(カノは)これだけ素晴らしいキャリアを築いてきたわけだから、そういう意味では残念なこと。ただ、(過去の違反者も)現場に戻ってきているから、その後が大事」

カノ、テシェイラ氏と同じく、09年のヤンキースでワールドシリーズ制覇のメンバーだった松井秀喜氏も19日にニューヨークで野球教室を開いた際には、表情を曇らせながらそう述べていた。明るい人柄のカノは同僚、メディアにも人気があっただけに、同じように落胆している人はほかにもいるはずだ。そして、大リーグは依然として禁止薬物と縁が切れていない競技だと改めてわかったことで、ファンや関係者、選手は少なからず居心地の悪い思いを余儀なくされているのである。

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