2018年11月17日(土)

富士フイルム、揺らぐ買収の「原資」 富士ゼロックス減益

2018/5/19 0:11
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富士フイルムホールディングス(HD)が18日発表した2018年3月期連結決算(米国会計基準)は営業利益が1306億円で前の期に比べ24%減った。主力の事務機を手掛ける富士ゼロックスの構造改革に伴い割増退職金などがかさんだため。富士フイルムHDは米ゼロックスの買収を継続する方針を改めて表明したが、富士ゼロックスの立て直しが欠かせなくなっている。

大幅減益となったのは稼ぎ頭で事務機を手掛けるドキュメント事業の不振が原因。インスタントカメラや半導体材料などは好調だが、補えなかった。ドキュメント事業の収益は、ほぼ富士ゼロックスの業績に相当する。構造改革費用の入らない17年3月期ベースでは、同事業が連結営業利益(セグメント調整前)の4割超を稼ぎ出していた。

前期の同事業の営業利益は140億円と、前の期に比べ8割強の大幅減益。割増退職金など一時費用(700億円)が利益を圧迫した。先進国を中心に事務機市場が縮小する中、富士ゼロックスは20年3月期までに国内外で1万人の従業員を減らしコスト削減や生産体制を効率化する計画だ。

ドキュメント事業は一時費用が一服する今期以降、V字回復を予定している。ただ、調査会社の米IDCによると、18年の複合機市場は前年比で3%減少する見通し。パイの取り合いが激化しており、「リストラをしている間に同業他社が富士ゼロックスの顧客を奪いにきている」(業界関係者)との声も聞かれる。

富士フイルムHDの売上高は5%増の2兆4333億円だった。同日発表した19年3月期の業績見通しは、売上高が前期比3%増の2兆5100億円。純利益は8%減の1300億円を見込む。ドキュメント事業の収益が復調するほか、インスタントカメラなど映像関連事業が伸びる計画だ。

ゼロックス買収について説明する富士フイルムホールディングスの助野社長(中)(18日午後、東証)

ゼロックス買収について説明する富士フイルムホールディングスの助野社長(中)(18日午後、東証)

ゼロックス大株主のカール・アイカーン氏は統合に反対する理由の一つに、富士ゼロックスの会計不祥事の影響が四半期ごとに高まるのに同社の価値を過大評価していると指摘している。

ゼロックス買収は富士フイルムHDが保有する富士ゼロックスの株式75%分すべてを同社に売却した資金を使うスキームだ。第三者の査定に基づき決定した、富士ゼロックス株の価値は61億ドル。その後、富士フイルムHDが売却で得た資金でゼロックスが発行する新株を取得し発行済み株式の50.1%を握る仕組み。

しかしゼロックス株は軟調で下落傾向にある。同社を富士フイルムHDが買収する際に、いわば原資となる富士ゼロックスも、稼ぐ力が価値算定時より劣れば、将来の価値は変わりうる。対立の長期化で両社の価値が変動するリスクが高まれば、計画の正当性が問われる可能性もある。

同日開いた記者会見では助野健児社長兼最高執行責任者(COO)が「(ゼロックス買収による富士ゼロックスとの)経営統合は最良の選択だ。ぶれることはない」と強調した。1月31日に両社の取締役会の全会一致で決まった買収合意は「法的拘束力を持ち一方的に契約を終了する権利はない」とし、従来の主張を繰り返した。アイカーン氏らと対立が深まって以来、古森重隆会長兼最高経営責任者(CEO)と助野氏は公の場で発言していなかった。

助野氏はアイカーン氏とダーウィン・ディーソン氏の持ち分が2人で15%程度とも指摘した。「少数株主が指名した取締役が実質的に支配する取締役会によりゼロックスすべての株主が統合メリットや価値を判断する機会が奪われれば非常に残念」と話した。

そのうえで「訴訟や損害賠償請求を含めた手段をとっていく」と繰り返した。買収手続きは当初秋にも完了するとしていたが「早くクローズする必要はない」と強調。「粘り強く訴訟を通じて主張していく」と述べた。

一方で助野氏は「(ゼロックスの取締役会が)条件変更を持ってきたらはねつける必要はない」と話し、交渉に応じる可能性も示唆した。富士フイルムは上訴で暫定的な買収差し止めを解除し臨時株主総会を開いて株主の総意を問うシナリオを描いているとみられる。

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