球場が呼んでいる(田尾安志)

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イチロー、再起へ「過信家」の顔戻るか

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2018/5/20 6:30
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イチローがグラウンドから姿を消して、はや2週間以上たった。マリナーズの会長付特別補佐という耳慣れないポジションに就き、今季は出場しないことになったが、選手でありながら試合に出ることが許されない前代未聞の事態に、いまだにもやもやとした気持ちを拭い去れないでいる。

マリナーズが今季再びイチローを獲得した背景に、故障者が出て外野陣が手薄になったことがあった。大リーグでの行き場を失いつつあった窮地から一転、古巣にポジションを得たイチローだったが、シーズンに入ると低空飛行が続いた。やがて故障していた主力選手が復帰すると、チームは好成績を残していた若い外野手をマイナーに降格させる。この決断に地元シアトルのマスコミとファンがかみついた。「落とすべきはイチローではないのか」と。

どこにも角立たぬ絶妙な一手

確かにイチローは打率2割そこそこと不振にあえいでいた。球団とすれば、野球に取り組む姿勢や、その存在感が若手に好影響をもたらすと踏んでイチローをベンチ入りメンバーに残す判断をしたはず。そこであれだけの反発の声が上がったのは予想外のことだったろう。

ではイチローをマイナーに落とせばいいかというと、そう簡単な話ではない。何せあれだけの結果を残してきた偉大な選手。獲得しておきながら、開幕から1カ月ほどでマイナー降格という「戦力外通告」を突きつけるのは忍びない。熟慮の末にたどり着いたのがあの処遇だったのだろう。降格させることなく、穏便に出場の機会を摘み取る。イチローを傷つけない上にファンの理解も得られる、どこにも角が立たない絶妙な一手だった。

イチローが球団の提案をあっさり受け入れたのは意外だった。何よりもプレーすることにこだわってきただけに「今季出場しない」というプランは蹴り、好きなマリナーズを去ってでも出場機会を求めていくのがイチローという選手だと思っていた。復帰を待ちわびる日本はもちろん、韓国や台湾にも「選手・イチロー」を受け入れるチームは相当数あるはずだ。

そこでフロントの一人としてマリナーズに残る決断をしたのは、来季選手として復帰する可能性を残していることが大きい。加えて、メジャーリーグという舞台へのこだわりがそれほどまでに強かったのだろう。昨オフ、なかなか行き先が決まらない中でマリナーズが手を挙げたということは、もはや他球団に獲得の意思はない。今回の提案を受け入れなければメジャーにいられなくなるわけで、それは耐えがたいことだったのかもしれない。「プレーする」という条件には「メジャーで」というただし書きが付いていたことを我々は知った。

過信に揺らぎが生じたのか

私は選手たるもの、自信家でいるだけでは足りず、強く自分を信じてやまない「過信家」であるべきだと思っている。過信するくらいに自分を評価していれば、不振に陥ったときに「俺はこんなもんじゃない。もっと結果を残さないと」と努力することができる。他人に何と言われようと「自分はだめだ」などと思わず、常に前を向いていられる。そんな強い精神を持つ過信家の典型と思ってきたイチローが、今季に限った話とはいえプレーすることを諦めたのは、過信に揺らぎが生じたということでもあったのだろうか。

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