2018年6月23日(土)

4割超が農業再開断念 福島、避難解除も課題山積

2018/5/18 9:30
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 東京電力福島第1原発事故から7年が過ぎ、福島県では避難指示解除とともに農業再開の動きも広がる。しかし避難中に田畑は荒れ、人手不足や高齢化といった課題は山積している。国などの調査に被災地の農家の4割以上が「再開するつもりはない」と回答し、今後の見通しは厳しい。

ナシの木が茂っていた場所に立つ横田芳朝さん(3月、福島県南相馬市)=共同

 「先祖代々の田畑が台無しになった。一からのやり直しは考えられない」。南相馬市小高区の横田芳朝さん(73)は、雑草が生えた荒れ地を前にため息をついた。事故前は約500本のナシの木が茂っていたが、避難中にほとんどが病気になり、昨年すべて切り倒した。「75歳までは農業を続けようと思っていたが、これから除染をして、土を耕さなければならない。風評も厳しいし、再開しても見合わない」

 かつてはコメも作っており、田植えや稲刈りは隣近所で手伝い合った。しかし事故はそのようなコミュニティーも破壊した。近所で帰還した農家はまばらで「農業は1軒だけではできない」とこぼす。横田さんも長女が暮らす埼玉県に避難中で、戻るかどうか、決心がつかないでいる。

 農業を再開しても苦労は絶えない。福島県富岡町で仲間と米作りに取り組む渡辺康男さん(67)は「元の景色を取り戻したい一心でやってきた」と話す。避難先の同県西郷村から片道約2時間かけて通う。今年の作付けは約5ヘクタールで、事故前の4分の1にとどまる。

 悩みはイノシシなどの鳥獣による被害。避難中に人里に慣れ、人間を恐れることなく田畑を荒らし回る現状は「動物天国」だという。電気柵で囲ってもイノシシは侵入し、平気で田んぼで水浴びをしたり、稲を引っこ抜いたりする。困難続きの日々だが「自分の経験を伝えることで、再開を迷っている人を少しでも後押しできれば」と願う。

 国や県、地元企業でつくる合同チームの調査によると、事故で避難指示が出た12市町村の農家約千人のうち、42%が「再開するつもりはない」と回答している。高齢化や地域の労働力不足、古里への帰還を諦めたことが理由に挙がった。チームの担当者は「若い担い手の帰還が見込めず、再開に踏み切れない農家が多い」と分析している。〔共同〕

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