2018年8月19日(日)

欧州企業、イラン事業に警戒 仏トタル事業撤退を検討

2018/5/17 19:59
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 米国のイラン核合意からの離脱を受け、欧州企業がイラン事業への警戒を強めている。仏石油メジャーのトタルは16日、米国が再開するイラン制裁から除外されない限り、イランでの天然ガス開発プロジェクトを中止すると表明した。欧州連合(EU)はイランに進出する欧州企業の保護策の検討を急ぐが、欧州企業にも撤退が広がれば、イランの核開発を押しとどめる合意維持の生命線が揺らぐのは必至だ。

 米国は核合意からの離脱に伴い、イランへの「最大の経済制裁」(トランプ大統領)を再開する。イランと取引する欧州など第三国の企業や金融機関も対象とする構えだ。「ドル建ての資金調達が失われる事態になれば耐えられない」。トタルは16日、イランでの天然ガス開発プロジェクトの資金調達の9割は米銀からだと訴え、制裁から除外されなければ撤退すると発表した。

 欧州企業によるイラン・ビジネスの維持は、イランにとって生命線だ。「孤立を脱する再生の始まりだ」。イランのロウハニ大統領は2015年に米欧とロシア、中国の計6カ国と結んだ核合意による制裁解除で外国投資を呼び込み、停滞した経済の再建につなげる絵を描いてきた。

 核合意後、欧州企業は豊かな資源と中東有数の人口を持つイラン市場に競って進出。仏ルノーやPSAなどの自動車生産、独シーメンスの発電プラント補修など大型合意が相次いだ。中でも17年に合意したトタルのガス田開発プロジェクトは、初期投資が10億ドル(1100億円)を超える最大級の事業だった。

 仏政府などは欧州企業を制裁の対象から外すよう求めているが、米国のボルトン大統領補佐官は例外扱いしない構えをみせる。欧州企業のイラン進出の象徴例だったトタルの撤退が現実になれば、他企業への影響も避けられない。ロウハニ政権は暮らしの改善という核合意の果実を失い、一段と保守強硬派の突き上げを受けるのが必至だ。

 「イランとの経済関係と貿易の正常化は、核合意の必須な要素だ」(EUのモゲリーニ外交安全保障上級代表)。EU側も欧州企業の撤退を止められずに核合意の崩壊を招けば、地理的にも近い中東で核武装が広がる「核ドミノ」の現実味が増すと警戒する。

 EU28カ国は16日夜、ブルガリアの首都ソフィアで開いた非公式首脳会議で、イランが核合意を守る限り、欧州も合意を堅持する方針で結束。米制裁の再開をにらみ、イランに進出する欧州企業の保護策の検討を急ぐことでも一致した。

 欧州投資銀行(EIB)などEU機関による対イラン投融資や、EUレベルでのイランへのユーロ建て信用枠――。首脳会議ではユンケル欧州委員長が米制裁への対応策を巡って複数の選択肢を説明したもようだ。

 欧州委は米制裁への強硬な対抗手段として、EUが欧州企業に第三国による経済制裁に従わないよう命じる「ブロッキング規則」も検討中。同規則は96年に米国の対キューバ制裁への対抗手段として制定されたが、これまで発動されたことはない。米制裁の影響を完全に除外できるのか、実効性は未知数だ。

 「特効薬はない」(EU高官)。EUは「数週間」で米国の制裁再開に備えた打開策を見いだしたい考えだが、欧州企業の懸念をぬぐえるのか、手詰まり感も広がっている。(編集委員 松尾博文、ソフィア=森本学)

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