日本にも上陸した米シェアオフィス大手のウィーワーク(WeWork)。ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長も「オフィスという古くからあるものをテクノロジーで再定義した」と認めて出資した、有力ユニコーン企業だ。追いたてられる側の既存の不動産会社は、ウィーワークをどうみているのか。CBインサイツの独自調査から意外な事実が分かってきた。
ウィーワークが社債発行で7億200万ドルを調達する方針が最近、大きく報じられた。同社は起債の一環として財務情報を公開し、売上高は急増しているものの、コストの増加に警戒が必要となる可能性を明らかにした。
ウィーワークはニュースの中だけでなく、不動産各社の決算説明会でも話題に上る機会が増えている。
意外にも、その大部分は同社を評価し、テナントとして強い関心を示す内容だ。不本意ながらもライバルとして認めたり、関心が徐々に薄れたりしている場合もある。
この記事では、CBインサイツがまとめた(上場企業6500社の過去10年分の)「決算説明会の議事録」に基づき、決算説明会でのウィーワークに関する発言を分析した。
2017年10~12月期決算での言及回数は66回で、前期の24回から増えて過去最高となった。
最も多く言及した会社は米国とカナダでウィーワークの公式サービスパートナーを務める米通信会社Ooma(オオマ)で、2位以下には不動産各社が続いた。
一部の企業はウィーワークのテナントとしての利点を評価している。ウィーワークはハイテク業界のテナントを取り込み、共有エリアや設備の設計を支援してくれるからだ。同社に疑念をにじませ、ライバル視する企業もある。単独テナントが大型スペースを使う自社の事業への影響を心配する企業もある。
決算説明会でウィーワークについて頻繁に言及した不動産会社5社は次の通りだ。
■米ボルネード、ウィーリブ事業の失速を受けて沈黙
ボルネード・リアルティ・トラスト(Vornado Realty Trust)はウィーワークに対して特に興味深い態度をとっている。
ボルネードは当初、ウィーワークをテナントに迎えることや、ウィーワークが手掛けるコラボ住宅事業「WeLive(ウィーリブ)」に関心を示していた。だが、熱意は徐々に冷め始めている。
ボルネードは13年10~12月期に開いた決算説明会で、「ワシントンDC近郊にある延べ床面積16万4000平方フィートのオフィスビルを、ウィーワークと共同で賃貸マンション約300戸に改修する」計画を発表。「働く場所を変えながら協業する今風の働き手が対象。IT(情報技術)設備を完備した家具付きの小型ユニットに、共用ダイニングやラウンジなどの交流スペースを組み合わせる」という。
ボルネードがウィーワークと手を組んだのは、ワシントンの南に隣接するバージニア州クリスタルシティーの開発地区の核に据えるためだ。翌14年1~3月期には、プロジェクトの最新状況について説明し、ウィーワークとの提携に関心があることを認めた。
ボルネードは16年初めのマンション開設後もウィーワークについて4~5回言及し、16年4~6月期に開いた決算説明会では、マンションの占有率が80%に達したことを明らかにした。
だがそれ以降の決算説明会では、ボルネードはウィーワークにもウィーリブにも一切触れていない。背景にはウィーリブ事業が開店休業状態に陥っていることがある。