/

Jリーグ前半戦、絶好調の広島に秘密はない

サッカージャーナリスト 大住良之

Jリーグ1部(J1)は第14節を終えて12勝1分け1敗。勝ち点を37とし、3節を残して広島の「第1ステージ」優勝が決まった――。

ワールドカップによる約2カ月間の中断期間を前に、5月19、20両日で全34節中の15節までを終了する。開幕は2月23日。5月20日まで13の週末があり、そのうち3月下旬は日本代表の日程で使えなかったから、残り12の週末で15節。3回も「水曜試合」を使っての日程消化だった。

しかもこのほかにJ1の18クラブ中、4クラブはアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)、他の14クラブはルヴァンカップがあった。すなわち、大半のクラブが中断前に21試合をこなすことになる。近年にないハードスケジュールである。

広島、すでに昨季上回る勝ち点

こうしたなか、圧倒的な成績を残したのが広島だった。

昨年はかろうじてJ2降格を免れる15位に終わった。

城福監督(右端)が就任した今季、広島の快進撃は驚きだった=共同

今季に向けて、これまでに指揮を執ったFC東京と甲府では、甲府でのJ2優勝以外に目立った成績を残していない城福浩監督が就任。タイ代表FWティーラシンを獲得したとはいえ、MFミキッチ(湘南に移籍)らがチームを去り、戦力が上がったようには思えなかった。

しかしリーグが開幕すると、いきなり3連勝で首位に立った。第4節は磐田と0-0で引き分けたが、第5節から5連勝。FC東京戦での1-3の敗戦をはさんで第11節から4連勝の快進撃で勝ち点は37に。2位FC東京は勝ち点27。全34節の半分にあたる17節まで残り3試合を残した時点での勝ち点10差は、「2ステージ制」であれば「第1ステージ優勝」となる。ちなみに、広島が昨年1シーズンで得た総勝ち点は33だった。

では、今季の広島はどこが強いのか。

第14節までの試合結果を見ると、第6節までとそれ以後で少し変わってきていることに気づく。第6節までの5勝はすべて1点差であり、そのうち4勝が1-0だった。シュート数は例外なく対戦相手より少なかった。しかし第7節以降の7勝は、そのうち6勝が2点差であり、8戦のうち5戦で相手より多くのシュート数を記録しているのだ。

第5節の川崎戦(アウェー)でFWパトリックが今季初ゴール。彼はこの後9試合で9得点の「大爆発」で広島の攻撃をリードする。「1点差から2点差へ」は、この「パトリックの覚醒」が大きな要素になっている。だが、広島の強さの要因をパトリック、あるいはPKストップをはじめ好セーブを繰り返しているGKの林卓人など、個人に帰することはできない。

広島の首位快走はパトリック(右)の「大爆発」だけが要因ではない=共同

今季の広島を見ていて感じるのは、攻守両面での忠実さ、基本の徹底だ。

粘る守備、奪ったら縦へ

守備ではとにかく粘る。ボールを失った瞬間に前線から1人もさぼらずに守備に入り、押し込まれて決定的なピンチになったときも何人もの選手の足が動いていて相手のシュートをブロックする。それが14試合で失点わずか6という堅守となって勝利に大きく貢献している。

一方、攻撃では特に「2点差勝利」となった第7節以降の試合でシンプルさと縦への速さが目立つ。ボールを奪うと、簡単にさばいて前に出ていく。ドリブルするチャンス、縦パスのチャンスを広島はめったに逃さない。ボールを奪ってからの優先順位が明確で、しかもチーム全体に共有されている。

「第1ステージ優勝」には大きな秘密はない。Jリーグ発表のデータでは、広島の「走行距離」は18チーム中6位、「スプリント回数」にいたっては16位。広島は現代サッカーの「常識」と言えるものを、高いレベルで、しかもどの試合でも安定して発揮しているだけなのだ。チームがここまで意思統一されていなければ、パトリックもコンスタントな得点力を出せなかっただろう。

現在のJリーグのなかでは傑出した力を持つ選手のひとりであるMF青山敏弘と、26歳のMF稲垣祥のボランチコンビは果敢にシュートレンジまで進出し、左サイドのMF柏好文とDF佐々木翔のスピードと運動量は相手にとって大きな脅威になっている。だが繰り返すが、広島の強さはチームにあり、「個の力」で勝利をもぎとっているわけではない。

広島に大差をつけられているものの、2位のFC東京、3位の札幌もここまでやると予想した人は少なかったろう。

今季のJ1で広島から勝ち点3を奪った唯一のチームであるFC東京も広島と同様、粘り強い守備と縦に速い攻撃でどんどん調子を上げてきた。なかでもFWディエゴオリヴェイラと永井謙佑の2トップが猛烈な運動量とスピードを武器に攻守両面で大活躍をみせている。

札幌は昨年半ばまで浦和を率いていたミハイロ・ペトロビッチ氏が監督に就任した。積極果敢な攻撃を推奨する新監督に若い選手たちが応え、最前線でFW都倉賢がハイレベルなポストプレーを駆使して前向きそのものの攻撃を引っぱっている。

札幌の攻撃を引っ張るFW都倉=共同

興味深いのは広島の城福監督、FC東京の長谷川健太監督、そして札幌のペトロビッチ監督と、トップ3の監督がいずれも「新任」であることだ。今季のJ1には6人の新任監督がいるが、横浜Mのアンジェ・ポステコグルー監督は挑戦的なサッカーでときに相手を圧倒する試合をみせながら、なかなか勝利に結びつかず15位、G大阪のレヴィー・クルピ監督は16位と、ともに苦しみ、明暗をみせている。

中断期間、巻き返しの好機だが…

優勝候補といわれた川崎、C大阪、鹿島、柏はJリーグの過密日程とACLが重なったためか、4月後半から精彩を欠く試合が多い。川崎は首位広島と13勝ち点差、C大阪は14勝ち点差、鹿島は19勝ち点差、柏は20勝ち点差と、大きく引き離されている。このなかで、柏は第14節終了時で下平隆宏監督の解任を決め、20日の試合からは加藤望新監督が指揮を執ることになった。

2カ月の中断期間は大きい。出遅れたチームにとっては巻き返しの大きなチャンスだ。ここでチーム戦術の徹底を図り、新戦力を加えて大変貌を遂げるチームもあるに違いない。

今季開幕前、私は「今季の勝負は中断明けだろう」と予測していた。中断時点で首位に立っていなくても、大きく離されていなければ、逆転のチャンスは十分あると考えたからだ。

しかし中断まで残り1節で勝ち点10以上の差というのは少し大きすぎる。今季の広島が特定の個人に引っ張られているわけではなく、好調の原因がチーム全体のハイレベルな攻守にあるとすれば、簡単に崩れるとは予想しがたい。広島が「粘り強い守備、シンプルにゴールに向かっていく攻撃」を持続できるなら、このまま優勝の可能性は十二分にある。

春割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料!

セレクション

トレンドウオッチ

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

新着

ビジネス

暮らし

ゆとり

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で申し込むログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で申し込むログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で申し込むログイン