東北の地銀、稼ぐ力戻らず 実質業務純益 前期18%減

東北6県の地方銀行の2018年3月期決算が15日、出そろった。本業のもうけを示す実質業務純益は13行・グループ合計で前の期比18%減だった。日銀によるマイナス金利導入から3年目に入ったが、稼ぐ力がまだ戻っていない。各行は利ざやの小さい大企業から中小企業に貸出先をシフトする。店舗統廃合などコスト削減にも取り組み、収益改善を急ぐ。

預金と貸出金の利ざや収入が主な資金利益は13行・グループで前の期比1%増だった。貸し出しのボリュームを増やしたほか、有価証券の運用益でかろうじてプラスを確保した。ただ、マイナス金利で利回り低下に歯止めがかからない。日銀によると、東北の地銀の貸出約定平均金利は16年8月から1%を下回っており、本業の貸し出しで収益が上がらない状況だ。
大東銀行は投資信託など預かり資産販売に伴う収入を増やし、役務取引等利益が13%増だった。「貸し出しで収益が上がらない状況ではフィー(手数料)ビジネスに注力する」(鈴木孝雄社長)。東邦銀行の役務取引等利益も10%増で、私募債発行など法人関連手数料が押し上げた。
海外債券の運用損失も目立った。米国の金利上昇で債券価格が下落し、保有する米国債に影響が出た。北日本銀行と福島銀行は実質業務純益が赤字。北日本銀は米国債向け投資信託の含み損を処理し、国債等債券売却損が37億円に上った。福島銀も含み損を抱えた債券の売却や一部店舗の損失を計上。最終損益が30億円の赤字となった。
マイナス金利の逆風に対し、各行は大企業から地元の中小企業にシフトする。みちのく銀行の高田邦洋頭取は「中小向けに函館と青森地区に東京から資金を回した」と説明する。3月末の貸出金残高は3%伸びた。山形銀行は「もうからない東京の大企業向けをやめ、その分、県内向けを増やした」(長谷川吉茂頭取)。19年3月期の貸出金は2%増を見込む。
収益源の確保と併せて店舗コスト削減にも力を入れる。フィデアホールディングスの田尾祐一社長は「店舗の事務量を削減し人員配置を見直す」と話す。23年3月期までに40億円の経費削減をめざす。岩手銀行も「店舗統廃合は避けられない。営業担当者を増やしてレベルの高い提案をする」(田口幸雄頭取)。
秋田銀行は営業時間の見直しを検討。「昼休みの新設は可能であれば対応したい」(新谷明弘頭取)。大手住宅メーカーの定休日である水曜日に住宅ローンの相談窓口を休むことも検討する。
19年3月期は6行・2グループが最終減益を予想している。
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金融庁の有識者会議が出した報告書は、地銀経営について東北は岩手、山形、福島の3県は1行なら単独でも存続可能だが、青森と秋田は1行単独でも不採算になるとした。これについて決算会見では各銀行の頭取からコメントが相次いだ。
フィデアHD傘下の北都銀行の斉藤永吉頭取は「大変粗い分析で真に受けるのはどうかと思う」と指摘。ただ「人口減に対する危機感は持っており、対策は取っていく」と語った。みちのく銀行の高田邦洋頭取は再編について「選択肢から排除しないが、顧客のためになるかどうかという視点で判断する」と述べた。
東北銀行の村上尚登頭取は「金融庁が公表した意図がわからない」としたうえで「規模拡大だけの統合は考えていない」と話す。七十七銀行の氏家照彦頭取は「県内でそれなりのシェアがあるので必要性は感じない」とした。
仙台銀行と県をまたいで経営統合したきらやか銀行の粟野学頭取は「人口減は我々の手ではどうなるものでもない。ほかの銀行と同じことをやっていては生きる道がなくなる」と語った。
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