週末レシピ 半熟を塩水で一晩 コンビニ定番「塩卵」

夏の訪れを感じる今日この頃。中華料理店の軒先に張られ始めた「冷やし中華はじめました」の札が、より一層季節の移り変わりを感じさせます。
夏の定番メニューである冷やし中華に欠かせないのが、そう、半熟のゆで卵です。口に含むととろりと溶け出す黄身の濃厚な黄金色と、白身の潔いまでの白さのコントラストには、多くの人が食欲をそそられることでしょう。これまでにも半熟卵のレシピは紹介されてきましたが、今回は、そこにちょっとひと工夫した「塩卵」の作り方をご紹介したいと思います。
塩卵とは何かというと、そのものずばり、「塩味の卵」のこと。ちなみに、中国にも「塩卵(鹹蛋)」があり、アヒルの卵を濃度の高い塩水に数カ月もの間漬け込んで発酵させた保存食で、古くは南北朝の時代から現在に至るまで広く食べられています。しかし、今回ご紹介する「塩卵」は、中国のような保存食ではなく、塩水につけて半日でできる、塩味のゆで卵のことです。保存食ではないのでご注意を。
実はこの塩卵、非常に身近なところで販売されています。そう、コンビニです。「味付き半熟ゆで卵」「ゆで卵」として販売されていますが、どれもずばり最初から塩味なのです。
かつては普通のゆで卵に塩が添付されて販売されていたものですが、「塩が均一にふりかけられない」「塩がこぼれてしまって食べにくい」などの声があったのかなかったのか、いつの間にか利便性を高め、「最初から塩味がついたゆで卵」へと変化していました。
すでに15年以上も販売が続くロングヒット商品であり、一度食べたら病みつきになる人が続出。そしてシンプルなおいしさだけに飽きが来ないのか、リピート購入が多いのも特徴だそうです。
使用する調味料は基本的に塩がメインなので、卵はもちろんのこと、使用する塩にもこだわりがあります。愛媛県産の「伯方の塩」を使用したり、塩ににがり(粗製海水塩化マグネシウム)と砂糖を加えているものもありました。
にがりとは、海水から塩を製造する際に塩の結晶を収穫したあとに残る、マグネシウムを主体とする濃縮されたミネラル液で、たんぱく質の凝固作用があるため、豆腐づくりなどに主に活用されています。にがりを添加することで白身に食感を出し、砂糖を入れることで黄身の保水性を高めてていると推測できますね。奥が深いです、コンビニの塩卵。

ちなみに、コンビニで売っているゆで卵は殻つきなのにどうして黄身までしっかり塩味がするのか疑問に思ったことはありませんか。これは実に単純で、卵の殻には目には見えないほどの小さな穴が数千個もあいているからなのです。ゆでたての卵を熱いうちに塩水に漬け込むと、浸透圧の働きで、この数千個もの細かい穴から塩水が内部に入り込んでいき、味をつけてくれるというわけです。
今回ご紹介するレシピでは殻はむいていますが、冷蔵庫で数日置いておきたいという場合は、殻つきのままで作っていただいても構いません。その場合、殻をむいてから漬けるよりも味が浸透しづらいので、漬け込む時間を長くして調節してください。
<材料>
新鮮な卵…1個
水…300ミリリットル
お好みの塩…6グラム
<作り方>
(1)鍋にたっぷりのお湯を入れて沸騰させる。塩水を作っておく
(2)冷蔵庫から取り出した卵を静かに(1)に入れる。お玉でゆっくりと支えながらゆでる
(3)8分間ゆでたらすぐに取り出し、冷水に3分間漬ける
(4)殻をむいて、(1)で作った塩水に漬け込んで、半日~1日置いたらできあがり

このレシピの(3)の段階では、黄身はとろりと流れ出るくらい軟らかい状態にあります。それを塩水に漬け込むことで、浸透脱水作用が働き、中から水分を吸い出してくれるため、最終的に半熟状態に仕上げるためには、この段階ではゆですぎないことが重要です。
そして、塩の浸透脱水作用は、塩分濃度2%から働くため、水の量に対して塩は2%以上入れるようにしましょう。塩味の強弱は、漬け込む時間によって変化しますので、塩味を効かせたい人は長めに、ほんのりとした塩味で楽しみたい人は1日しっかり漬け込んで、半日経ったら塩水から取り出すことをおすすめします。
シンプルに塩が味付けの主役になるので、使う塩にはもちろんこだわってほしいのですが、ここで注意が必要なのが、その重さとしょっぱさ。塩は結晶の形によってかさ密度が異なるため、よく「塩小さじ1杯は5グラム」と言いますが、使う塩によっては同じグラム数でも見た目の量が異なります。
そして、塩100グラム中に含まれる塩化ナトリウムの量(食塩相当量)の多少によって、同じグラム数の塩でもしょっぱさが異なります。いわゆる「精製塩」や「食卓塩」はナトリウムの純度が高いのでかなりしょっぱく、ナトリウム以外のマグネシウムなどのミネラルを含む塩は、しょっぱさがまろやかな傾向にあります。
ちょっと面倒かもしれませんが、塩に含まれる塩分量を把握すること、そしてしっかり計量することで、おいしい塩卵ができあがりますので、ぜひ一度、使う塩のパッケージの裏面を見てみてください。

それでは最後に、「塩卵」を作るのにお薦めの塩を3つご紹介したいと思います。
今までに1200種類以上の塩をテイスティングした経験上から言うと、黄身のうまみや白身の甘さを引き立てるにはカルシウムが多い塩が良いようです。また、黄身のうまみだけを引き立てたい場合は、ナトリウム純度が高めのしょっぱさの強い塩が良いようです。使う塩によって、「塩卵」の味は大きく変化しますので、いろいろ試してください。

まず1つ目は、沖縄県産の「うるわしの花塩」。
沖縄本島中部に位置する北谷町で生産された海水塩に、与那国島産の造礁珊瑚カルシウムをブレンドした、カルシウムリッチな塩です。しょっぱさは非常にまろやかで、むしろ甘味を感じるほど。この塩の甘味が、卵の白身の繊細な甘さをぐぐっと引き立ててくれます。カルシウムが水に溶けにくいので、塩を水に溶かした際に白濁しますが、あまり気にしなくても大丈夫です。

2つ目は、新潟県の「佐渡藻塩」。
藻塩は、海藻のエキスを抽出した海水塩のことで、世界のほかのエリアでは見られない日本独自のものです。現在では日本各地で生産されていますが、ホンダワラ、アラメ、ナガモの3種類の海藻を使用しているこの藻塩は非常に珍しいタイプです。
海藻由来の濃厚なうまみがあり、3種類使用していることでまるで上品なあわせだしのような風味を醸し出しています。卵にもその味わいが浸透するため、和風の上品な味わいの塩卵ができあがります。塩を水に溶かすと海藻エキスの影響で茶色く色づきます。

最後はちょっと変り種で、インド産の「マグマ塩」。
ヒマラヤ山脈から掘り出される岩塩なのですが、結晶してから地中のマグマの高熱で焼かれたため、濃い赤紫色をしています。ピンク色や透明の岩塩と大きく異なるのは、その風味。温泉卵を思わせるような強い硫黄の香りと味わいを感じることができます。
そのため、この塩で塩水を作って卵を漬けると、自宅で簡単に温泉卵の気分が味わえるのです。水に塩を溶かした時に、ぶわっと硫黄の香りが広がり、さらに水に反応して灰色に変化しますが、身体に害はないので気にせずにそのままご使用ください。
作り方は非常に簡単なので、ぜひ今度の週末にトライしてくださいね。冷蔵庫で3~4日保存できるので、ウイークデーの料理に一味添えたり、晩酌のさかなとしても大活躍してくれますよ。
(一般社団法人日本ソルトコーディネーター協会代表理事 青山志穂)
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