2018年11月17日(土)

私鉄初のフリーゲージ、近鉄が開発着手 京都―吉野

2018/5/15 19:46
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近畿日本鉄道は15日、車輪の間隔を変えることで異なる幅の線路を走行できる「フリーゲージトレイン」(軌間可変電車、FGT)の研究開発に着手すると発表した。京都駅から吉野駅(奈良県)の区間に導入したい考えで、実用化すれば同区間が乗り換えなしの1本で結ばれる。6月22日付でFGT開発推進担当の役員を置き、国土交通省や車両メーカーと協力して研究開発を進める。

吉野線を走る観光特急「青の交響曲」

吉野線を走る観光特急「青の交響曲」

FGTを巡っては、国交省が整備新幹線の建設のため、新幹線を在来線の線路で走行できるよう開発を進めてきた。現在は九州新幹線の長崎ルートへの導入を目指しているが難航している。こうしたなか、JR以外の私鉄に導入するFGTの研究開発は国内では近鉄が初めてとなる。

鉄道車両を製造するグループ会社、近畿車両の吉川富雄常務が6月22日付でFGT開発推進担当として近鉄の取締役を兼任する。研究開発費や導入予定時期は未定だ。

近鉄は複数の鉄道会社をM&A(合併・買収)してきた歴史があり、路線によって標準軌(レール幅1435ミリ)と狭軌(同1067ミリ)の2種類が混在する。東海道新幹線の開業をきっかけに京都や名古屋から奈良や伊勢志摩などの近鉄沿線の観光地に向かう特急の路線網の構築を進めてきたが、レール幅の混在が弱点になっていた。

FGTを実用化できれば、特急が運行する全路線の直通運転が可能になり、利便性が大きく向上する。

今回FGTの導入を検討する京都線は奈良電気鉄道が前身で標準軌、吉野線は吉野鉄道が前身で狭軌を採用している。京都から吉野に向かうには橿原神宮前駅で乗り換えが必要になっており、その人数は1日1万人にのぼる。

橿原神宮前駅には狭軌と標準軌が併存する

橿原神宮前駅には狭軌と標準軌が併存する

近鉄にとって吉野は伊勢志摩と並ぶ重要な観光拠点。2004年には吉野山を含む「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産に登録されている。毎年桜の季節は乗降客数が1日1万~2万人にのぼり、インバウンド客も増えている。

大阪方面からは大阪阿部野橋駅から吉野駅までが狭軌のため、観光特急「青の交響曲(シンフォニー)」が直通運転をしている。

■FGT、新幹線導入は赤信号

線路幅が異なる路線同士を直通できるフリーゲージトレイン(FGT)は欧州で普及が進む一方、国内では苦戦している。

FGTの本格的な技術開発は国の主導で1997年に始まった。既存の在来線に新幹線が乗り入れができれば、整備新幹線の建設コストが大幅に抑えられるとして開発を進めてきた。

国土交通省は現在も2022年度開業予定の九州新幹線の長崎ルートへの導入を目指す姿勢を崩していないが、新幹線への導入には270キロメートルでの安定走行、耐久性など技術的なハードルは高い。高額な車両コストも壁となり、実現は事実上困難となっている。

JR西日本は長崎ルートへの開発をもとに雪対策などを施して北陸新幹線に導入する予定だったが、長崎ルートの難航から先延ばしを余儀なくされそうだ。

こうしたなか、近鉄は在来線同士の乗り入れで独自に開発を進める方針。新幹線に比べれば在来線への導入は開発費用が安くつく可能性がある。国の予算がつくかは分からないが、国交省はこれまで培った開発ノウハウを提供するなどして協力する意向だ。(阿曽村雄太)

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