2018年11月16日(金)

ロボットが海底で生物など自動採取 東大・九工大
科学記者の目 編集委員 小玉祥司

コラム(テクノロジー)
科学&新技術
2018/5/17 6:30
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東京大学と九州工業大学は、海底に潜って生物などを自動的に集める小型ロボットを開発した。大型の調査船などを使わずに、手軽に海底から生物や鉱物などのサンプルを集められる。海底の珍しい生物を調査するだけでなく、魚介類や金属などの資源を調べるためにも役立ちそうだ。

開発したロボット「Tuna-Sand2」は3月、静岡県清水沖の海底100メートルまで潜り、貝殻を自動的に集めて持ち帰ることに成功した。これまで自動で海底からサンプルを集めるロボットはなかった。

このロボットは潜ってホバリングをして、事前に設定したコースを移動しながら海底を撮影。その画像から、あらかじめ用意しておいた海底の地形や色などの条件に合わないものを探し出し、生物などを見つける。見つけた生物などは、直径5センチほどのホースで吸い込んで採取する。清水沖の実験では、実験用に用意した貝殻だけでなく、自然に落ちていた貝殻も見つけて集められた。

3月の実験ではロボットが判定した画像を海上の船にいったん送り、研究者が最終的に判断してから採取した。ロボットだけの判断で採取することも可能で、将来は判断に人工知能を導入することも考えられるという。

小型ロボット「Tuna-Sand2」は海底から自動で生物などのサンプルを採取する(東京大学生産技術研究所提供)

小型ロボット「Tuna-Sand2」は海底から自動で生物などのサンプルを採取する(東京大学生産技術研究所提供)

ただ、海上にデータを送って研究者が判断する方式では、送信した画像をもとに研究者が判断するまでの間もロボットは移動を続けているので、採取する場合は画像の撮影場所までもう一度戻ることになる。正確に発見場所に戻るだけでなく、その場所を通過したときと同じような姿勢にロボットを制御できるように改良した。サンプルを吸い込むホースの長さも当初より短くするなどした。ロボットを開発したのは2015年だったが「採取成功を発表できるようになるまで時間がかかった」と東京大学生産技術研究所の杉松治美特任研究員は話す。

これまで、海底でサンプルを集める作業は、人の乗った大型の潜水艇や、調査船とケーブルでつないで人間が遠隔操作するタイプのロボットでなければできなかった。しかし、こうした方法を使うには大型の調査船などが必要で、手軽にサンプルを集めるのは難しかった。

開発したロボットは長さ1.4メートル、幅1.2メートル、高さ1.3メートルで重さは380キログラム。小さめの冷蔵庫ほどの大きさで、小型の漁船程度でも運んで運用できる。深さが2000メートルの海底まで潜り、8時間動き回ることが可能だ。これまでより手軽に海底を調べ、サンプルを持ち帰ることができるようになる。

このロボットは、海底に熱水が噴き出している場所に集まる珍しい生物の採取などを目指している。機動的に調査することで、どのような生物がどれだけ生息しているかだけでなく、1日の時間や季節によって、分布がどう変化するかといった研究もできる。

見つけた生物の遺伝子を詳しく調べれば、新しい医薬品などの開発につながる可能性がある。日本周辺の海底には、レアアース(希土類)を含んだ泥なども見つかっており、こうした鉱物の調査にも利用できる。

海底の生物や資源の研究はまだ始まったばかり。ロボットは生物の進化や多様性といった科学的な研究だけでなく、産業につながる研究にも役立ちそうだ。

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