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前例なければ前例を作る イチローの宿命
スポーツライター 丹羽政善

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2018/5/14 6:30
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5月3日(日本時間4日)、記者会見を終えたマリナーズのイチローは着替えると、そのまま練習をするためフィールドへ向かった。

相手エンゼルスの大谷翔平が先発した6日は外での全体練習がなかった。だがイチローは通訳を伴ってグラウンドに姿を見せ、キャッチボールなどデーゲーム前に行うルーティンをいつも通りに消化している。

試合前、ファンの前で背面キャッチを披露する=共同

試合前、ファンの前で背面キャッチを披露する=共同

ちょうど、地元のリトルリーグでプレーしている子どもたちがウォーニングトラック(打球を追う外野手に外野フェンスが近づいていることを知らせるゾーン)を1周するイベントが行われており、ぐるりと球場全体を囲んでいた。イチローが出てきた瞬間に歓声を上げ、足を止める。付き添いの親たちは一斉にスマートフォンを構えた。

そんな彼らを前にイチローは遠投を披露。それだけでファンは沸いたが、通訳の返球を背面キャッチすると、歓声が拍手に変わった。

決定的に違うのは「その後」

さて、そうした景色そのものは一見、これまでとなんら変わらない。今も練習前は打撃ケージで打ち込み、試合前の練習ではチームメートらと一緒にストレッチをし、キャッチボールや守備練習、打撃練習といったメニューをこなす。

ところが、その後が決定的に違う。

1球目が投じられる前にイチローはベンチの奥へと姿を消し、スタメンに名を連ねることもなければ、代打で出場することもない。次に51番の背中が見えるのは、試合に勝った直後。チームメートを出迎えるため、ダッグアウトから出てくるときに限られる。

試合中、ベンチに入れるコーチらの数が決まっているからだが、2000年代半ばまではルールはあっても、特に強制力はなかった。ゆえに、レッドソックスなどで活躍し、同球団で監督も務めた故ジョニー・ペスキーさんは「インストラクター」という曖昧な役職のまま80歳を超えてなお、試合中にベンチにいることが許されていたが、07年からルールが厳格化された。

いずれにしても前例がないだけに、練習をすることも試合中に姿を消すことも、その光景には違和感を伴うが、首をかしげたくなるのはそのことにとどまらない。

そもそもすべてが、異例なのである。

すでに様々な形で報じられているようにマリナーズは3日、イチローが選手登録から外れ、今季はもう試合に出場せず、会長付特別補佐に就任すると発表した。

しかしそれは引退ではなく、暫定的な措置。イチローには来季、復活のチャンスが与えられるという。そのための準備として今季はチームに帯同し、練習を行うことも許可。試合中、ベンチに入ることだけが、許されない。ざっとそれが概要だが、もとをたどっていくと、判断の背景には日本で行われる来季の開幕戦が見え隠れする。

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