大阪・京都の美術館 新設・改装で発信力(もっと関西)
アート

2018/5/11 17:00
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関西で美術館の新設と大規模リニューアルが相次いでいる。大阪では中之島香雪美術館がオープン。京都では堂本印象美術館が1年余りの改装期間を終え開館した。それぞれ日本と東洋の古美術、日本画家の堂本印象の専門館と役割を異にするが、ともに大きなにぎわいを見せている。

中之島で昨年に開業した超高層ビル、中之島フェスティバルタワー・ウエストの4階。3月にオープンした中之島香雪美術館で開館記念展の第2弾「美しき金に心をよせて」が開催中だ(6月24日まで)。金箔や金泥をふんだんに使った鎌倉期の仏教画や桃山時代の障壁画、江戸期の工芸品など約60点が並ぶ。

3月に開館した中之島香雪美術館に展示される長谷川等伯の「柳橋水車図屏風」(大阪市北区)

3月に開館した中之島香雪美術館に展示される長谷川等伯の「柳橋水車図屏風」(大阪市北区)

■はや来館2万人

「稚児大師像」(鎌倉時代)

「稚児大師像」(鎌倉時代)

桃山時代の絵師、長谷川等伯の「柳橋水車図屏風」(16~17世紀)は六曲一双の画面いっぱいに金色の大きな橋が描かれ、周囲を柳の木々が囲む。いかにも桃山時代らしい豪華な趣向。一方で金色の橋は宇治の平等院を連想させ、作品に深みを与える。等伯とライバル関係にあった狩野元信・永徳の「四季山水図屏風」(16世紀)は29日から展示。こちらは墨の黒に金色が映える。2つの作品をぜひ見比べてみたい。

このほか、鎌倉時代の「稚児大師像」(13世紀、27日まで展示)、江戸期の陶工、野々村仁清の「色絵忍草文茶碗(ちゃわん)」(17世紀)などが鑑賞できる。「荘厳な仏教世界や豪勢な障壁画、軽やかな工芸品など、日本美術において金は様々な表現に用いられ、欠かせない素材だった」と、同館の勝盛典子学芸部長は言う。

同館は神戸市の香雪美術館の分館という位置づけ。本館は朝日新聞の創設者の1人、村山龍平の収集品を収蔵、展示するため1973年に開館した。雪舟の山水図など貴重な作品も数多く「交通の便が良い大阪の都心部でもコレクションを鑑賞してほしい」(勝盛部長)と、中之島に進出した。初年度は8万人の来館を見込むが連休中の多数の来館者で、すでに2万人を超える勢いだ。

野々村仁清「色絵忍草文茶碗」(江戸時代)

野々村仁清「色絵忍草文茶碗」(江戸時代)

京都市北区の衣笠でも3月、堂本印象美術館がリニューアルオープンし、記念展「堂本印象 創造への挑戦」が開催中だ(6月10日まで)。約50点の印象の作品が並ぶ。

改装を終えた堂本印象美術館(京都市北区)

改装を終えた堂本印象美術館(京都市北区)

印象は目まぐるしく画風を変化させたことで知られる。初期の「木華開耶媛(このはなさくやひめ)」(1929年)は神話を題材に春の女神を端正な筆致で表現しており、いかにも日本画らしい作品だ。これに対し「交響」(61年)は勢いある筆致で描かれた完全な抽象画。同時代の現代アートや書道作品を思わせる。展示全体として、印象ならではの豊かな作品世界の広がりを的確に感じ取れる構成だ。

堂本印象「木華開耶媛(このはなさくやひめ)」(1929年)

堂本印象「木華開耶媛(このはなさくやひめ)」(1929年)

同館は66年、印象が自身の作品を展示するためアトリエと自宅の近接地に開館した。白壁に金色の装飾をあしらった外観や内装も印象がデザインした。印象の死後、91年に京都府に寄贈された。

■半世紀前の外観

堂本印象「交響」(1961年)

堂本印象「交響」(1961年)

今回のリニューアルは外壁の補修で半世紀前の開館時の色彩を取り戻した。庭園も整備して野外展示やイベントの開催も可能にした。正門前のバス停と館への通路を一体化して人の流れを導きやすくしたほか、3階に展望室も新設した。「印象は京都が誇る日本画家の1人。落ち着いた雰囲気で作品世界にひたってほしい」。同館の入江錫雄副館長は話す。

関西では中之島で大阪市が2021年度に新美術館の開館を目指すほか、改装中の京都市美術館は19年度に「京都市京セラ美術館」として再オープンする。今後、80年代までに開館した美術館が本格的なリニューアルの時期を迎え、地区の再開発に伴い自治体や企業が新設する美術館も多い。美術館は地域文化の核となる施設。新設やリニューアルで美術の世界がより身近に感じられるはずだ。

(大阪・文化担当 田村広済)

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