2018年11月13日(火)

米核合意離脱、中東の地政学バランス揺らす
イラン・イスラエル直接衝突の懸念

2018/5/11 0:44
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【イスタンブール=佐野彰洋】米トランプ政権によるイラン核合意からの離脱表明が中東の地政学上のバランスを揺るがしている。イスラエルは10日、シリア国内のイラン軍事施設などに大規模攻撃を加えた。将来の衝突に備えイランが築いた軍事インフラの破壊を図った。中東でも高い軍事力を持つイスラエルとイランが直接衝突する事態につながりかねないとの懸念が高まっている。

「再建には相当の時間を要するだろう」。10日、イスラエル軍の報道官は作戦の成果を誇示した。イスラエル軍によると、10日未明、シリアに展開するイランの革命防衛隊がイスラエルの占領地ゴラン高原にロケット弾20発を発射した。イスラエル側は防空システムで数発を撃墜し、死傷者はなかったという。

イスラエル軍は直ちに報復攻撃に着手。武器庫や情報拠点などのイラン関連施設やシリアの防空システムを標的に、ロシア国防省によると70発ものミサイルを発射した。

従来の対シリア空爆をはるかに上回る異例の大規模攻撃は、圧倒的な空軍力を誇示し、イラン側の戦意をそぐねらいからとみられる。イランが核兵器開発の技術につながるウラン濃縮を再開すれば、いつでもイラン本土を攻撃するとのメッセージを込めた可能性もある。

今後の焦点はイラン側の出方だ。イランはイスラエルの隣国レバノンのイスラム教シーア派武装組織「ヒズボラ」を支援しており、ヒズボラにイスラエル攻撃を命じるとの懸念が広がる。

ロシア大統領府のペスコフ報道官は10日、イスラエルとイランの双方に自制と外交手段による解決を求めた。シリア外務省は国営メディアを通じ、今回の攻撃を「侵略行為」と非難。「シリアの戦争における新局面を示すものだ」と指摘した。

一方、米ホワイトハウスは声明でイラン側が「向こう見ずな行動の結果の全責任を負う」とイランを非難した。英国のメイ首相の報道官は報道陣に「我々はイランの攻撃を非難する。イスラエルは防御する権利がある」と述べた。フランス外務省は声明文で「イランは軍事行動を慎むべきだ」と指摘した。

シリア情勢をめぐってイラン、ロシアと協力関係にあるトルコのエルドアン大統領はロウハニ・イラン大統領と電話協議した。

トランプ米政権によるイラン核合意離脱表明後の8日夜にも、シリアの首都ダマスカス近郊の軍事施設にイスラエル軍によるとみられる攻撃があり、イラン人8人を含む15人が死亡していた。

シーア派の大国であるイランの影響力拡大をサウジアラビアなどのスンニ派諸国も強く警戒する。内戦が続くイエメンからは、イランが支援するシーア派武装組織「フーシ」がサウジへのミサイル発射を繰り返している。サウジはイラン封じ込めを優先し、イスラエルと水面下で関係改善を図っているとされる。

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