/

北陸のものづくり 高みへ

北陸のものづくりが元気だ。地域経済を支える電子部品や医薬品、自動車関連の設備投資が活発だ。世界経済の成長を追い風に受注が拡大。企業の好業績が賃金や消費を押し上げ、経済の好循環につながっている。

電子や車部品、設備投資に勢い──最新鋭工場 稼働ラッシュ

マシニングセンターを組み立てるスギノマシンの滑川第6工場(富山県滑川市)

製造業による設備投資が北陸で活気づいている。深刻な人手不足は逆風だが、利便性の高い高速道路網や電気料金の安さ、豊富な水源が企業を引き付ける。

電子部品では400億円弱を投じた村田製作所の能美工場(石川県能美市)が6月に本格稼働する。スマートフォン(スマホ)の薄型化に使われる樹脂多層基板「メトロサーク」を量産する。米アップルのiPhoneなど高機能スマホへの納品が中心となる。

工場を管轄する金沢村田製作所は当初から操業率が高水準で推移するとみる。フル稼働には300人強の現場従業員が必要で多くを石川県内で採用する方針。敷地にはまだ余裕があり、金沢村田の橋本省吾取締役事業所長は「メトロサークを含め、さらなる増産投資の余地がある」と話す。

また東洋紡は10月に画面が曲げられるディスプレー用フィルムの新工場を福井県敦賀市で稼働させる。長瀬産業との共同出資会社を通じて約30億円を投じる。電子ぺーパーや有機ELの部材として販売する。

自動車関連では土木資材製造の前田工繊が富山県高岡市の2つの工場向けに総額100億円の投資を決めた。いずれも自動車のアルミホイール関連で2020年の稼働を目指す。世界的に進むホイールの大型化に対応する。子会社の本社工場に建屋を新設し大型のプレス機を導入。もう1つの工場は最新のクリーンルームを整備し、自動化も進めて歩留まり向上につなげる。

アルミニウム国内最大手のUACJも福井県坂井市に持つ製造所内で新たに160億円を投資。同社として国内最大の自動車用アルミ材工場を20年にも稼働させる。電気自動車など環境対応車用の需要増に備え、年間10万トンを製造する。

一方、スギノマシン(富山県魚津市)は17年11月、滑川事業所(同県滑川市)で高圧ジェット洗浄装置とマシニングセンターの組み立て工場を稼働させた。投資額は約22億円、洗浄機は自動車部品のバリ取りなどに使われ輸出も多い。

経済産業省によると、北陸3県の2月の鉱工業生産指数(10年=100)は128.3(季節調整済み)と全国平均の102.1を上回る状況だ。

こうした中で福井県おおい町が新たな工業団地の整備を模索するなど自治体による支援の動きも出てきた。慢性化する人手不足を乗り越えられるかどうかが好調継続のカギとなる。

薬都富山、次世代へ先手──後発薬増産や極小カプセル

江戸時代から続く製薬の伝統がある富山県。医薬品の受託製造や後発医薬品の生産がけん引して、都道府県別の医薬品生産額は全国でもトップクラスだ。さらに次世代医療向け遺伝子薬の工場や製薬会社の物流施設の新設が相次ぐ。

薬剤を体内の標的に確実に運ぶ極小カプセル――。狙ったがん細胞などに抗がん剤を届ける約80ナノ(ナノは10億分の1)メートルの製剤の生産が2020年にも富山県で始まる。富士フイルムが40億円を投じてグループ会社である富山化学工業の第二工場(富山市)の敷地に工場を建設する計画だ。

写真のフィルムで培った技術などを使い、効率的にがん組織に薬剤を放出する。富士フイルムの助野健児社長はリポソームと呼ぶこのカプセルが「がん治療を抜本的に変えるポテンシャルがある」と強調。今後は米国など海外での事業展開を視野に入れる。

県内企業で大型投資に動いたのは後発薬最大手の日医工。富山第一工場(富山県滑川市)内に約100億円を投じて建設した新しい製剤施設の稼働を始めた。「後発薬で世界のトップ10入りを目指す」(田村友一社長)取り組みの一環だ。追加投資も進めて21年3月期までに同工場全体の生産能力を2割高める。

3月末にはエーザイの後発薬子会社のエルメッドエーザイ(東京・豊島)を約170億円で買収すると発表しており、M&A(合併・買収)も重要な事業戦略と位置づけている。

包装材メーカーなど関連産業も集まり、生産拠点だけでなく物流拠点も呼び込む。ハンドクリームのユースキン製薬(川崎市)は16年4月に横浜市の生産拠点を富山市に完全移転。18年2月には川崎市の物流拠点も富山市に移した。かつては富山で生産した商品を川崎の物流拠点に運んで全国の卸に発送していた。同社は「取引のある原料メーカーが集積する富山の方が生産を効率化できた。物流拠点も同じ」と狙いを話す。

好循環、経済押し上げ──宮田慶一・日銀金沢支店長に聞く

足元の北陸3県の経済は好調さが目立つ。何が原動力となり、持続力はどうか。北陸の景気判断を「拡大している」とする日銀金沢支店の宮田慶一支店長に聞いた。

――北陸経済の現況と背景をどう見ますか。

「日銀で4月時点の景気判断を『拡大している』まで引き上げている地域は全国で北陸と東海だけ。電子部品や工作機械、建設機械など競争力を持つ企業が集積し、世界経済の成長にマッチしやすい産業構造が背景だ」

「生産の増加が売り上げ増につながり、経営者マインドが上向いて設備投資を喚起している。一方、企業業績の拡大で緩やかながら賃金が増え、消費も持ち直してきた。好循環が働き、経済を押し上げている」

――今後の見通しは。

「世界経済の拡大が続くことを前提にすると、2018年度もペースを維持しながら上向きで推移すると見る。しかし米中の貿易問題などリスク要因もある。国際競争力を持つ電子部品などに続き、経済の担い手が裾野を広げてきた。例えば繊維業界。海外の低価格品に押されていたが独自の技術や用途の拡大などで販路の開拓に成功するといった前向きな動きがある」

――北陸新幹線による経済効果は続きますか。

「金沢市でホテルの建設が相次ぐなど、好影響は引き続き見込める。開業3年が経過し一部の温泉地などで一服感もあるが、新幹線で北陸を訪れる人が域内を回遊するしかけ次第で、さらに効果に期待できる」

――人手不足問題をどう見ていますか。

「北陸に拠点を置く製造業は人手不足に対応した省力化投資にすでに着手している。人手不足という全国的な課題をバネに効率化に取り組み、生産性向上のフロントランナーとなる企業の出現を期待したい」

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

新着

注目

ビジネス

暮らし

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン