2018年10月22日(月)

コメ対中輸出広がるか 認可施設増加もコストに課題

2018/5/10 19:27
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日中両政府は9日、日本産米の輸出に必要な精米指定工場と処理設備を増やすことで合意した。日本のコメ輸出量に占める比率は現状で3%にとどまる。世界最大の消費国である中国市場の開拓に一歩前進した形だが、同国と息の長い関係を築くには、コスト削減や輸入規制への対策など課題が山積している。

JA全中の中家会長は「対中輸出環境の改善は評価したい」と語った

中国にコメを輸出するには同国が安全性を認めた施設を使う必要がある。これまで精米は全国農業協同組合連合会(JA全農)が神奈川県内に持つ工場のみ登録されていた。害虫を寄せ付けないようコメをいぶす薫蒸(くんじょう)設備も神奈川の2倉庫だけだった。

日中両政府は精米の2工場を追加することに合意した。ホクレン農業協同組合連合会の北海道石狩市の拠点と、コメ卸首位である神明(神戸市)の阪神工場(兵庫県西宮市)だ。薫蒸倉庫は北海道や兵庫などの5拠点を新たに農林水産省が登録する。

神明は「中国のニーズに迅速に対応できる」(幹部)と期待する。これまでは日本各地のコメを神奈川に送って全農に委託。工場と倉庫が空いているとは限らず、調整に手間がかかった。今後は自社工場で精米し、神戸市の薫蒸倉庫を使って神戸港から輸出できる。

日本は2017年に1万1800トンのコメを輸出したが、中国向けは298トンにとどまった。香港とシンガポール向けが計6割を占める。中国のコメ消費量は日本の約20倍ともいわれる。農水省はコメと関連品の輸出を10万トンに伸ばす目標を掲げ、中国は有力な売り先候補となる。

課題はコストだ。神明が北京で販売している富山産コシヒカリの価格は2キロ2600円程度。日本の小売価格の2倍近く、香港で売る新潟産コシヒカリよりも8割高い。中国本土で輸送コストが高くつき、流通業者のマージンもかさむためだ。

中国で約600店を展開する熊本県発の味千ラーメンは日本産米のご飯を中国産米の4倍の価格で提供しているが、客層は富裕層に限られる。神明は「現地の営業活動に加え日本でのコスト削減が欠かせない」とみる。

11年の福島原子力発電所事故に伴う中国の輸入規制も残る。福島や宮城、新潟を含む10都県は全ての食品を中国に輸出できない。「新潟の米菓も日本酒も出せないのは業界にとって打撃」と南部美人(岩手県二戸市)の久慈浩介社長は漏らす。

日中両国で規制緩和に向けた話し合いのチームが設けられたが「先行きに予断は持てない」(農水省)との声は多い。全国農業協同組合中央会(JA全中)の中家徹会長は「一気に進むとはみていないが前進は評価したい」と語る。政治要因に揺さぶられる対中輸出を巡り、関係者が気をもむ状況は続きそうだ。

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