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米中巨大企業、アジアのネット消費争奪

ウォルマートのインド企業買収で過熱

小売り世界最大手の米ウォルマートがインドのネット通販最大手フリップカートを約160億ドル(1兆7千億円超)で買収する。ウォルマートの米アマゾン・ドット・コムへのネット上の反撃が米国外で本格化する一方、急成長するアジアのネット消費を巡る米中巨大企業の争奪戦がますます熱を帯びてきた。自前経営か資本参加か、ネットと実店舗をいかに連動させるかなど事業モデルも競争の軸になりそうだ。

インドのネット通販業界は、中国・騰訊控股(テンセント)、米マイクロソフト、米ウォルマートと組むフリップカート陣営、2位のアマゾン、中国・アリババ集団とソフトバンクグループを資本源とするPaytmブランド陣営という、3強がはっきりしてきた。

中国ではアリババ傘下のTモールとテンセント陣営の京東集団(JDドットコム)がネット小売りの2強。ウォルマートは自前のネット小売事業の継続をあきらめ16年にJDに売却。JDの大株主になり、テンセント―JD―ウォルマートの3社提携を形成した。アマゾンは自力経営での中国攻略を続けている。

アリババは東南アジアのネット小売り最大手、シンガポールのラザダ・グループを16年に子会社化。アマゾンは17年にシンガポールで生鮮食料品ネット通販を開始した。

米中巨大企業と地元企業の入り乱れる成長市場争奪戦だ。そのなかで、母国外でも自前経営を指向するアマゾンに対し、その他の巨大プレーヤーは資本参加や提携による外国市場参入が目立つ。

ウォルマートは買収発表と同時にフリップカート経営陣の続投と、将来の同社の株式上場を宣言した。インドでは小売業への外資保有規制が厳しいため、法的に小売りに該当しない米コストコ方式の実店舗網の自家経営で攻略を試みてきたが、中国同様、地元ネット企業の株主としての活動に軸足を移す。

電子小売市場でアマゾンに圧倒されている地元米国でも16年にジェット・ドット・コムを3千億円超で買収。自前のネット通販サービス頼みから脱却した。西友を通じて浸透した日本では新たに楽天と提携。実店舗でもネットでも自社看板にはこだわらない。

アジアの新興企業投資のトップ集団にいるソフトバンクは多数のネット関連企業の大株主となり、ゆるやかな提携先を増やす「群」の形成を戦略として前面に打ち出しつつある。

そのソフトバンクとアリババが巨額の軍資金をつぎ込むPaytmの運営会社ワン97コミュニケーションズの創業者、ビジェイ・シェカー・シャルマ会長は「インドのネット小売市場はまだ幼児期。今からでも十分トップを狙える」と、フリップカートがまだ射程圏内にあることを強調する。

「資金より事業モデルの競争だ」ともいい、モバイル決済とネット小売をセットで自前経営し両方で頂上を目指す、中国でのアリババ集団と似た路線でフリップカートやアマゾンと競争していく構想を最近本紙に明らかにした。

一方アマゾンは13年にインドで、地元小売業者にネット上の売り場などを提供するモデルで買い物サイトを開設。完全子会社による自前経営で急成長し、フリップカート系列とアマゾンの2強で同国ネット小売りの7割を占めるまでになった。

さらにアマゾンは米国で自然食品スーパーを買収するなど小売実店舗網とネットとの連携戦略を進める。インドでも今後、実店舗チェーンの買収が確実と専門家はみる。

アマゾンと米中巨大企業の経営力競争はまだ序の口だ。

(編集委員 小柳建彦)

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