「イランのインフラのほぼ全てを攻撃」イスラエル国防相
【イスタンブール=佐野彰洋】イスラエルのリーベルマン国防相は10日、同日の対シリア攻撃を巡り「シリア国内のイランの(軍事)インフラのほぼ全てを攻撃した」と述べた。イスラエル軍によると、攻撃はイランによるロケット弾発射への報復措置。1973年の第4次中東戦争以降、イスラエルによるシリア領内への攻撃で最大規模となったもようだ。
トランプ米政権によるイラン核合意の離脱表明を受け、離脱支持のイスラエルと反発するイランの緊張が高まっている。直接衝突に発展すれば、中東情勢はさらに不安定になる公算が大きい。
イスラエル軍は10日未明、内戦が続く隣国シリアに展開するイラン革命防衛隊が、イスラエルの占領地ゴラン高原に約20発のロケット弾を発射したと発表した。
イスラエル軍は対空防衛システム「アイアンドーム」で数発を撃墜、死傷者はなかったという。
直ちにシリア領内の武器庫や情報拠点といったイラン関連施設やシリアの防空システムに激しい報復攻撃を実施した。
ロシアのタス通信によると、同国国防省は攻撃にはイスラエル軍のF15、16戦闘機28機が参加し、約60発の空対地ミサイルを発射したとの声明を出した。10発以上の地対地ミサイル攻撃も行われたという。
シリア人権監視団(英国)によると、アサド政権軍の5人を含む少なくとも23人が死亡した。シリア国営メディアはシリアの防空システムがイスラエルのミサイルを迎撃したと報じた。
ロイター通信によると、イスラエル軍の報道官はイラン側の人員よりも装備や攻撃能力の破壊に重点を置いたと説明した。アサド政権を支援し、シリアに部隊が駐留するロシアに事前に警告を発したことも明らかにした。
イスラエルは敵対するイランのシリア進出やイランが支援する、隣国レバノンのイスラム教シーア派武装組織「ヒズボラ」の強大化に強い危機感を抱いてきた。
トランプ米政権によるイラン核合意離脱表明後の8日夜にも、シリアの首都ダマスカス近郊の軍事施設にイスラエル軍によるとみられる攻撃があり、イラン人8人を含む15人が死亡していた。
シーア派の大国であるイランの影響力拡大をサウジアラビアなどのスンニ派諸国も強く警戒する。内戦が続くイエメンからはイランが支援するシーア派武装組織「フーシ」が繰り返しサウジにミサイルを撃ち込んでいる。