AIスピーカー、競争は「画面」付きに グーグル参入
米グーグルは8日、画面付き人工知能(AI)スピーカーを家電メーカーと組んで7月に投入すると発表した。同様の製品ではアマゾン・ドット・コムが先行するが、グーグルは動画などソフトの多様さで違いを打ち出す。日本でもようやく普及が始まったAIスピーカーだが、技術革新が進み競争はすでに「音声」と「画像」の組み合わせへと移っている。

「ヘイグーグル。"ピザボム"のレシピを見せて」
8日から本社があるカリフォルニア州で開かれているグーグルの開発者向け年次会議「I/O(アイオー)」。壇上の女性が画面付きのAIスピーカーに話しかけると、ボール状のピザのレシピサイトが表示された。調理の流れも動画で見ることができ、音声だけよりもわかりやすい。
7000人の開発者が集まったイベントで発表した目玉のひとつが米国で発売予定の画面付きAIスピーカーだった。「スマートディスプレー」と呼ばれる同様の製品はアマゾンが2017年夏に米国で発売済み。後発となるグーグルの最大の強みは傘下の動画投稿サイト「ユーチューブ」を通じた動画や有料テレビ番組の視聴だ。アマゾン製品はグーグルとの契約上ユーチューブを再生できない。
声で目的地を示せば地図サービスの「グーグルマップ」が作動し、地図と道路状況が表示される機能もある。テレビ電話のような画面を介した通話も可能だ。
グーグルはAIスピーカー「ホーム」を自社製品として販売しているが、画面付きはまずは他社に製造を委ねる。ソニーや韓国LG電子、中国のレノボ・グループなどが提携相手に名を連ねており、グーグルは会話型AI「アシスタント」の開発に特化する。
この日会場が沸いたのが、AIが美容室に予約の電話をする新機能のデモンストレーションだった。希望の日付や時間帯などをAIスピーカーやスマートフォンに伝えると、代わりに美容院に電話をかけてくれるというものだ。
希望の時間が埋まっていたらすぐ別の時間を提示するだけでなく、相づちまで打つ様は自然で人間そのもの。この技術も数カ月以内に実用化されAIスピーカーなどに組み込まれる見通しという。
スピーカーの進化も自動会話も底流には「AIを誰もが使えるものに」というグーグルの戦略がある。言語や画像認識など「20年もの社内ノウハウが凝縮した」(幹部)アシスタントは今後もイヤホンやテレビ、車などあらゆるハードで採用が進む可能性が高い。
日本勢もLINEが年内にディスプレー付きAIスピーカーを投入する予定で、メッセージの表示などで特徴を打ち出す。AIスピーカーの競争軸は「スキル」と呼ぶ機能ソフトの種類や数に移っている。音声に加え画像や映像が加わることで、その傾向がさらに強まることは間違いない。(シリコンバレー=中西豊紀)
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