2018年9月25日(火)

「空飛ぶタクシー」、仁義無き主導権争い

2018/5/9 14:57
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 【ロサンゼルス=白石武志】小型飛行機を使った「空飛ぶタクシー」の開発競争が熱を帯びている。2023年の商用化を目指す米ウーバーテクノロジーズは8日、ロサンゼルスで開発者会議を開き、最新のコンセプト機などを公開した。会議ではライバルからの人材引き抜きも明らかになるなど、夢の技術をめぐる仁義無き主導権争いの一端も垣間見えた。

ウーバーが仕様を公開したコンセプト機のイメージ

ウーバーの空飛ぶタクシー事業を指揮するアリソン氏はライバルから転じた(8日、米ロサンゼルス)

 ウーバーが都市内航空輸送サービスに関する開発者会議「エレベートサミット」を開くのは17年に続き2回目。機体メーカーや航空規制当局などの専門家を集め、安全な機体づくりや新たな航空管制のあり方など、空飛ぶタクシーの実用化に立ちはだかる複雑な課題を議論するのが目的だ。

 8日のイベントでは5つのプロペラを制御して自在に飛行する最新のコンセプト機「eCRM」の仕様を公開した。ビルの屋上などから垂直離着陸が可能で、パイロットのほかに4人の乗客が乗り込める。機体を共同開発するパートナーに共通の参照モデルとして設計図を共有し、外部の力を借りて開発を加速する方針も示した。

 ウーバーは20年に米ダラス近郊などで試験飛行を実施し、23年をメドに空飛ぶタクシーを使った都市航空輸送サービス「ウーバーエア」を米国内などで始める計画を表明済み。将来的には操縦を自動化して人件費を抑制し、同じ距離であれば自動車を使ったライドシェアサービス「ウーバーX」とほぼ同じコストで移動できるようになるという。

 すでに軍用機「オスプレイ」を製造する米ベルヘリコプターやブラジルの航空機大手エンブラエルなどと提携し、各社を競わせながら安全で量産しやすい小型航空機の開発を進めている。8日には無人航空機の開発で知られる米カレム・エアクラフトとも新たに提携すると発表した。

 陸に続き、空のモビリティー(移動)市場の主導権を握ろうと矢継ぎ早に手を打つウーバー。その積極姿勢とともに8日の会議で注目を集めたのが、プレゼンテーションに登壇した幹部の顔ぶれだ。

 今春から空飛ぶタクシー事業を率いるエリック・アリソン氏は米新興企業のキティホークで自律飛行する2人乗りの小型機「コーラ」の開発に携わっていた技術者だ。同社は自動運転車の開発などでウーバーと火花を散らすグーグル共同創業者のラリー・ペイジ氏が支援することで知られる。

 小型航空機向けの電池開発を率いるセリーナ・ミコライチャク氏も、今年1月にウーバーに転じる前は米テスラに在籍していた。機体システム開発の責任者を務めるマーク・ムーア氏は米航空宇宙局(NASA)で32年の経験を持つ垂直離着陸技術の専門家だ。

 ウーバーによる積極的なヘッドハンティングは、自動運転に関する企業秘密が持ち出されたと主張するグーグル系のウェイモとの間で訴訟を招いた。今年2月にウーバーがウェイモ側に2億4500万ドル(約270億円)相当の自社株を譲渡することなどで和解したばかりだが、ウーバーの方針は揺らいでいないもようだ。

 限られた数の技術者を大手企業が奪い合う構図は、空飛ぶタクシーの開発でも同じ。米ボーイングが17年に自律飛行システムの開発を手掛ける米オーロラ・フライト・サイエンシズを買収するなど、人材獲得を狙ったM&A(合併・買収)も活発になっている。

 近年、空飛ぶクルマの分野で存在感を高めているのが中国勢だ。スウェーデンのボルボや英高級車のロータスを傘下に収める浙江吉利控股集団は17年に空飛ぶクルマを手掛ける米新興企業のテラフージアを買収。公道の走行と飛行が可能な車両を19年に発売する計画を示している。

 航空やものづくりの知見に乏しいウーバーは積極的な人材獲得によってノウハウを補い、ライバルとの開発競争を勝ち抜く考えのようだ。ただ今年3月には米国で公道試験中の自動運転車が歩行者を死亡させる事故を起こしたばかり。多数の小型飛行機が低空を飛び交う交通サービスは前例がないだけに、安全を最優先する企業文化を構築できなければ「空の革命」は絵空事で終わる可能性もある。

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