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競馬ファンの裾野拡大 アニメも入り口に

競馬場ですっかりおなじみになったスポットに「UMAJO SPOT」があります。競馬場に遊びにきた女性に快適に過ごしてもらい、より競馬を好きになってもらうのが設置の意図です。無料ドリンクや(一部有料の)スイーツの提供など、指定席でもとらない限り落ち着く場所のない女性にとっては、一息つけるオアシスのような場所になっているようです。

女性ファンの憩いの場となっている「UMAJO SPOT」

なぜ「ようです」なのか。原則として入場は女性限定で利用経験がないので、想像で語るしかないからです。利用したことのある女性タレントに少し話を聞きましたが、「ありがたい」スポットのようです。

しかし、知り合いの中には否定的な人もいます。旧知の女性ライターは「UMAJO SPOT」より、「長く競馬を支えてきたお年寄りがくつろげるスペースが必要」という意見です。もっともな声ですが、今は新たなファンを増やすことが大切だと思います。

「UMAJO SPOT」が女性ファン開拓のきっかけの一つなら、こちらはどういう分野からのファンの入り口になるのか。そう、今回の主題である「ウマ娘 プリティーダービー」です。サイバーエージェントのゲーム事業子会社、サイゲームス(東京・渋谷)のスマートフォン向けゲームアプリを翻案したアニメです。番組の冒頭に「この作品は実際の競走馬の物語をモチーフとし事実に基づいた表現を心がけたフィクションです」と説明がある通り、ウマ娘という現実世界の競走馬の名前と魂を受け継いで生まれてきた少女たちが、日本ウマ娘トレーニングセンター学園に在籍し、国民的スポーツ・エンターテインメント「トゥインクル・シリーズ」へのデビューへ向けて特訓に励むというものです。実際のエピソードをもとに、私のような競馬好きが見たら、「それか!」と叫びたくなるネタが満載です。私自身まだ見始めたばかりですが、一部をご紹介します。

アニメ「ウマ娘 プリティーダービー」 (C)2018 アニメ「ウマ娘 プリティーダービー」製作委員会

ウマ娘には馬の尻尾と耳が生えていて、ずば抜けた走力を持っています。ちなみにアニメの主人公は4月27日に不慮の事故でこの世を去ったスペシャルウィークの名前を持つウマ娘で、東京に出るまでほかのウマ娘と会ったことは一度もなく、生みの親は生まれて間もなく死亡という設定。これは実在のスペシャルウィークの母、キャンペンガールがスペシャルウィークを産んだ5日後に死んだことをモチーフとしています。

そのほかにも、数多くの名馬の名前を持ったウマ娘が登場します。サイレンススズカというウマ娘は番組冒頭のレースシーンで、前半の1000メートルを57.8秒でそのまま押し切ります。スペシャルウィークが初めてトレセン学園に入寮したとき、迎える先輩の名前がフジキセキ。いきなりクラスで話しかけてくるのがなぜかハルウララ(レースシーンでは弱かったです、やはり)。エルコンドルパサーとグラスワンダーは帰国子女、学生食堂でてんこ盛りのご飯を食べている大食いキャラがオグリキャップ。ちなみにスペシャルウィークも大食いです。

スペシャルウィークは最初のクラス分けのレース(実戦ではなく追い切りと思われますが)でエルコンドルパサーに負けるものの、上がり600メートル33.8秒という素晴らしい脚を見せ、チーム・スピカ(これが厩舎でしょうか?)にスカウト、というか無理やり連れていかれます。無理やり連れていくのがダイワスカーレットとウオッカ。この二人、認め合いながらもよくケンカするんです。

アニメに登場するスペシャルウィーク(右) (C)2018 アニメ「ウマ娘 プリティーダービー」製作委員会

その後、サイレンススズカは前半で飛ばすレースぶりをトレーナーに嫌われ、チーム・リギルからチーム・スピカに移籍してきます。ちなみにスペシャルウィークとサイレンススズカは学園の寮で同室となり、クールな優等生サイレンススズカとドジっ娘スペシャルウィークという設定になっています。生徒会長がシンボリルドルフというのもなるほどという感じです。

シンボリルドルフが登場するシーンで改めて気づいたのですが、ウマ娘の大半は前髪にメッシュが入っています。これはウマの顔にある流星や星を表しています。元の馬が芦(あし)毛の場合は銀髪になっています。ちなみに生徒会の部屋に張ってあるトレセン学園のスクールモットーは「Eclipse first, the rest nowhere」。唯一、抜きんでて並ぶものなし、というセリフがあり、そういう意味なのでしょう。ちなみにシンボリルドルフに憧れているのがトウカイテイオー。タイキシャトルのセリフで「魚と泳いでも短距離なら負けない」というのも競馬ファンならうなずけます。ドロドロ馬場の安田記念(1998年)を思い出してしまいました。

この原稿を執筆時点では放映が始まったばかりですが、とにかく競馬ファンが見れば「あれか!」と叫びたくなるネタが満載。ちなみに「あの人」もご自分の役で出演されています。舞台の大半は競馬場ですから、競馬場にいくことが聖地巡礼ということになるのでしょうか。

1998年6月、日本ダービーを制した武豊騎乗のスペシャルウィーク=共同

製作しているのはご存じ、P.A.WORKSです。死後の世界を独特な視点で描いた「Angel Beats!」、働く女の子シリーズの秀作「花咲くいろは」、綾辻行人の小説が原作のサイコスリラーサスペンス「Another」、アニメ業界の裏側を描いた「SHIROBAKO」など話題作を送り出しているアニメ製作会社です。

監督の及川啓さんは最近では「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。続」「この美術部には問題がある!」を手掛けており、学園ものを描いたら若者の細かい心情にも十分に目配りする方なのでこの点も心配はありません。

ちなみにこの「ウマ娘」のアニメは日本中央競馬会(JRA)とのコラボというわけではありません。現在、JRAがコラボしているのは「ゲゲゲの鬼太郎」で、「ゲゲゲのケイバ」というスペシャルコンテンツがホームページにも掲載されています。それに奇抜な作風で知られるアニメ「ポプテピピック」ともコラボを始めました。少し前にはスマッシュヒットになった「けものフレンズ」ともコラボをしていましたね。

とにかくどんなところからでも競馬に興味をもってもらえれば、ファンの裾野拡大につながると私は考えるのです。競馬ゲームから興味を持ったという騎手もいるぐらいですから、アニメを見て興味を持ってくれる人もきっといるのではないでしょうか。

(ラジオNIKKEIアナウンサー 檜川彰人)

 各アナウンサーが出演、ラジオNIKKEIの競馬番組はこちらでチェック! http://www.radionikkei.jp/keibaradio2/

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