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今日も走ろう(鏑木毅)

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活動時間を変え ゆとりある豊かな生活へ

2018/5/10 6:30
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トレイルランの大会や練習で欧州へ行くと気付くことがある。それは日没の時間が遅いということだ。夕方にひと仕事終わったあとでも陽が傾くまで街や山で軽くランニングができる。昼間は仕事に精を出し、明るいうちに職場を後にする。そうやって自分自身を取り戻す時間を持てるというところに豊かさを実感する。

地中海に面したフランスの港町で

これができるのは欧米を中心として夏季に日照時間を有効活用するサマータイム制度を取り入れているのが大きな理由だろう。かつて日本でも実施されたが、かえって労働時間が長くなるのを助長し、体調を崩すなどマイナス面が多かったことや、コンピュータートラブルの懸念があり継続的な導入には至っていない。

日本の標準時間自体を変えるということを検討してもよいのではないか。この発想は猪瀬直樹元東京都知事が日本の標準時を2時間早めると日本の市場が開く時間が他のアジア地域より早まり経済的に大きなメリットを見込めるとして提唱した。実際、各国の標準時は国ごとの国内法で定めるもので、合意形成がなされれば実現は可能なようだ。

経済的な面だけでなく他にもプラスの側面があるのではないかと考える。この時間を取り入れると、17時の仕事の終業時間は現行の15時にあたり、日没までの時間が長くなる。その結果、明るい時間帯に家族や友人と過ごす時間が増え、夕食前の一時を公園で過ごしたり街角のカフェで談笑したりという、ヨーロッパの人々が享受している生活のゆとりが生まれそうだ。

また就労後の時間が増えればウイークデーにスポーツを楽しむこともできる。体を動かす習慣はさまざまな疾患を防ぎ、心を整えることにも役立つ。2020年東京オリンピックやその後の社会で、政府が生涯においてスポーツを楽しむ文化形成を目指していることを考えると大きな意味がある。

ポイントは労働の意識を変えられるか、であろう。時間があれば全て仕事に回すという従前の意識のままであれば、過去の例のように単に労働時間の延長を引き起こすだけのこと。導入するには法的な整備や労働に対する意識を変えるだけでなく、そもそも人生をどう楽しむかを社会全体で再考する必要がある。働き方の改革が叫ばれている今こそが大きなチャンスではないだろうか。

単に時間設定を変えるだけで社会がバラ色に、などと言っても懐疑的になる人がほとんどかもしれない。ただ、厚生労働省が昨年公表した日本の自殺死亡率は6位。先進国では最悪レベルだそうだ。思うに欧米人が比較的ストレスが少なく前向きに生活できるのは、仕事のあとの贅沢(ぜいたく)な時間の恩恵も少なからずある。ゆとりある社会を目指すのに標準時の設定変更は一考の価値ありと思うが、いかがだろう。

(プロトレイルランナー 鏑木毅)

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