2018年5月21日(月)

中朝、米にらみ蜜月誇示 正恩氏、首脳会談控え焦りか

朝鮮半島
北米
2018/5/8 23:18
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 【ソウル=鈴木壮太郎、大連=原島大介】北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長が再び電撃訪中した。6月初めまでに予定される史上初の米朝首脳会談を前に、米国の動きを警戒する金氏が習近平(シー・ジンピン)国家主席という「後ろ盾」の存在を改めて誇示し、米国けん制を狙った可能性がある。

 習氏と金正恩氏の再会は遼寧省大連だった。2人はほほ笑みながら肩を並べて海辺を散歩し、外のベンチに座って歓談。中国国営中央テレビ(CCTV)はトップニュースとして中朝首脳の再会を報道。約9分間にわたって、2人の急接近ぶりをアピールする映像を流し続けた。

 2人の様子は対照的だった。習氏は終始、にこやかな笑みを浮かべ、身ぶり手ぶりを交えながら、金氏に語りかける姿が目立った。金正恩氏が壇上で演説した際も、まるで息子を見るような柔らかな視線を注いでいた。

 一方、金正恩氏は硬さが目立った。会談場所にはうつむき加減で入り、習氏と握手をする際も緊張した面持ちのまま笑顔はなかった。会談中も習氏の話をじっと聞く様子が繰り返し流された。

 金正恩氏の緊張の面持ちの裏側には、首脳会談を前に米側の非核化の圧力に対して焦りを募らせているとの見方がある。

 米国は5月になって、ポンペオ国務長官やボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)が、これまでの「完全で検証可能かつ不可逆的な非核化」(CVID)という表現に代わり、「恒久的で検証可能かつ不可逆的な非核化」(PVID)という言い回しを使い始めた。「恒久的」という言葉には、将来にわたる核放棄という一段強い意味が込められている。

 朝鮮中央通信によると北朝鮮の外務省報道官は6日、「北南(南北)首脳会談で朝鮮半島情勢が平和と和解に進んでいるときに、相手を威嚇する行為は対話の雰囲気に冷や水を浴びせる」と米国を強く非難した。これまで対話路線にカジを切ってから米国批判を控えてきた北朝鮮の異例の対応には焦りが透ける。米朝会談が決裂すればトランプ米大統領が武力行使するとの懸念は消えていない。

 中国にとって今回の会談は、北朝鮮の後ろ盾としての存在感を示すことで米国の強硬手段をけん制する狙いがある。習氏は金正恩氏との会談を終えるや、トランプ氏との電話協議に臨んだ。北朝鮮の非核化プロセスを念頭に「段階的な行動を望む」と伝えることで、初の首脳会談を前にギクシャクする米朝の仲介役を演じてみせた。

 先の南北首脳会談で署名した「板門店宣言」は、朝鮮戦争を終結させる平和協定の当事者として、南北米の3者、南北米中の4者と明記。そこに中国が入らないシナリオが盛り込まれた。習氏が金正恩氏との会談直後にトランプ氏と電話した一連の動きには、「朝鮮半島の対話を主導するのは韓国ではなく中国だ」との意思表明を込めた可能性がある。

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