2018年11月18日(日)

はしか「空白の世代」に流行の危険
国立感染症研究所 多屋馨子室長に聞く

2018/5/9 11:30
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沖縄県や愛知県などで「はしか」の感染が広がっている。出張で各地を行き来するビジネスパーソンにとっても他人事ではないだろう。しかも、はしかは命を落とすこともある危険な感染症でありながら、予防接種が不十分だった「空白の世代」が存在している。国立感染症研究所感染症疫学センター第三室の多屋馨子室長に、備えるべきポイントを聞いた。

ワクチンの予防接種が重要だ(東京都渋谷区のMYメディカルクリニック)

ワクチンの予防接種が重要だ(東京都渋谷区のMYメディカルクリニック)

――なぜ最近になって流行したのでしょう。

「予防接種が不十分な世代の人がいるからだ。50歳より上の世代であれば子どもの頃にはしかにかかり、抗体ができていることが多い。また若い世代は2度の予防接種が定期接種化しているため抗体を持っている人が多い。これに対し、2017年の調査では、はしか患者が多かったのは18~40歳だった。この中間世代は抗体を持っていないか不十分なため、ウイルスから身を守れない人が多い」

――中間世代は働き盛りに相当します。どう予防すればいいですか。

「最近では16年にも関西や東京で感染者が相次いだことがある。はしかはワクチン接種以外に予防方法がない。ただし過去に感染した経験があれば体内にウイルスが入っても、自分自身が作った免疫で身を守れる」

「予防接種は2回受ければ安心だ。1回の接種で約95%の人に抗体ができるといわれる。接種後、抗体ができても時間とともに量が減ることもある。2回受けると99%以上の人が抗体を持つ」

国立感染症研究所感染症疫学センター第三室の多屋馨子室長

国立感染症研究所感染症疫学センター第三室の多屋馨子室長

――この連休中に旅行先などで感染した人もいるかもしれません。発症した場合はどのように対処すればいいですか。

「発症した状態で病院の外来に行くと移動中や病院内でウイルスを拡散してしまう。過去に2度予防接種を受けた記録や感染歴がない場合は、まず病院や保健所に電話で問い合わせてほしい」

――そもそもはしかとはどんな病気ですか。

「はしかはウイルス性の感染症で、正式名称を麻疹(ましん)という。感染者のせきやくしゃみなどの飛沫を浴びなくても、空気中をただようウイルスを吸い込むだけで感染する。空気感染しないインフルエンザに比べ感染力は格段に強い」

「感染すると10~12日の潜伏期間ののち、38度台の熱、せき、のどの痛み、鼻水などが数日つづく。この期間をカタル期という。発熱の1日ほど前から感染力をもち、カタル期が最も感染力が強い。カタル期を過ぎると一時的に熱が下がるが、すぐに39~40度の高熱とともに発疹が現れる。脳炎や肺炎の合併症で死に至るケースもある」

――予防接種を受けたかどうか分からないという声も聞きます。

「必ず記録で確認するように。『記憶』はあてにならない。母子健康手帳は成人したら手元に持っておきたい」

「今後海外からウイルスが持ち込まれることもあり得る。この機に必ず予防接種を受けてほしい。ただし妊婦やワクチンに重度のアレルギーがある人などは受けられないので注意が必要だ」

(聞き手は桜井豪)

■ワクチン増産には時間

国内では、はしかワクチンは武田薬品工業、北里第一三共ワクチン(埼玉県北本市)、阪大微生物病研究会(大阪府吹田市)の3社が製造している。製造には半年ほどかかるため、感染症の流行に合わせて増産するのは難しいが、今のところ供給は問題ないようだ。

はしかワクチンは生ワクチンと呼ばれ、病原性をなくしたはしかウイルスからつくる。培養にはニワトリの胚細胞を使うため、まず鶏卵を確保しなければならないことも時間がかかる要因だ。

また、生ワクチンは有効期間が1年弱と短いため、大量に備蓄しておくことは不可能だ。「国内での感染が広がったため、足元の需要は高まっている」(医薬品卸大手のメディパルホールディングス)という。

一方、厚生労働省は一度に複数のワクチンを接種できる混合ワクチンの普及を進めている。「単剤ワクチンが不足しているという声はあるが、混合ワクチンは十分にあるので問題はない」(厚労省)としている。

[日経産業新聞 2018年5月9日付]

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