女性起業家、バッグでウガンダ支援
(アントレプレナー)仲本千津 代表取締役・最高執行責任者

2018/5/9 6:30
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RICCI EVERYDAY(リッチー・エブリデイ、静岡市)はアフリカ布を使用したバッグや旅行用品を製造・販売する。特にウガンダで作る色鮮やかなバッグは日本の百貨店などで人気だ。代表取締役・最高執行責任者(COO)の仲本千津氏(33)はメガバンクなどを経て起業した。向上心旺盛なウガンダの女性たちに支えられ、事業拡大にまい進する。

仲本千津・代表取締役 15年2月、ウガンダに駐在中、シングルマザーたちと会い、バッグの製造を始める。同年8月、日本法人を設立、大手百貨店で販売。16年7月、現地法人と直営店舗をカンパラ市に開設

仲本千津・代表取締役 15年2月、ウガンダに駐在中、シングルマザーたちと会い、バッグの製造を始める。同年8月、日本法人を設立、大手百貨店で販売。16年7月、現地法人と直営店舗をカンパラ市に開設

「紛争を経験した地域はどうしたら過去を乗り越え国際社会に復帰できるのか」。仲本氏は学生時代、一橋大学大学院でアフリカの紛争問題を研究した。研究の傍ら、途上国の子どもに学校給食を寄付する非営利団体「テーブルフォーツー」で研修生として働いた。その時にビジネスを通じて社会問題を解決する「社会起業家」という生き方があることを知った。

大学院を卒業後、メガバンクに入行。東京・丸の内の支社に配属され、法人営業を担当した。企業に融資をお願いする仕事に慣れるにつれ、「何万人も働く組織の中では本当に困っている人を助けるのは難しいかもしれない」と感じた。

2011年3月11日、東日本大震災が起こった。大学院時代にお世話になったテーブルフォーツーの小暮真久代表から「いつまで銀行員をやっているの」と背中を押され、同年10月に銀行を退職。農業支援を手がける国際非政府組織(NGO)に入った。

転機は14年。NGOの仕事でウガンダに駐在した。平日はウガンダ北部で農業支援に携わりつつ、土日は現地の市場を歩き回った。そこでカラフルで美しい「アフリカ布」を見つけた。「これで製品をつくれば日本人に受けそうだな」と感じたが、仲本氏はものづくりの経験がなかった。

そんな中、日本人の友人の紹介で首都カンパラ郊外の農村で暮らす女性に出会った。彼女の名はナカウチ・グレースさん。4人の子どもを抱えていたが、まともな仕事はなく、友人宅に週1回訪問して洗濯と掃除をしていただけだった。

レンガむき出しの家に住むグレースさん。それでも、土地を借りて家の周辺で鶏や豚を飼っていた。「少しでも生活を良くしたい、子どもたちを学校に行かせるお金を稼ぎたいという気概を感じた」という仲本氏は、彼女と一緒に事業をやろうと決めた。

縫製の技術を身につけてもらうため、グレースさんを職業訓練学校に送り込んだところ、講師役の女性もシングルマザーだった。縫製経験10年以上のベテランで、実際に商品のサンプルを作ってもらったところピカイチだったため、工房のリーダーに起用した。

現地でもアフリカ布を使ったバッグは売られていたが、「品質やデザインが劣り、そのままでは日本人に売れなかった」。仲本氏がデザインを考え、シングルマザーら3人がミシンや手縫いで15年2月ごろからバッグを作り始めた。

ウガンダでの生産が軌道に乗り始めた15年夏、仲本氏は日本法人を設立した。販路開拓を託したのは実家のある静岡県で暮らす母親の律枝氏(60)だ。律枝氏は専業主婦だったが、地元の大手百貨店に「娘がつくっているアフリカ布のバッグを催事で売らせてほしい」と掛け合ってくれた。

カラフルなアフリカ布を使ったバッグは日本では珍しく、催事の初日の午前中だけで20個ほど売れた。使い勝手にもこだわり、斜め掛け、ハンドバッグ、トートバッグなど生活シーンに合わせて4種類を用意する。

最近では、東京や大阪など大都市圏の百貨店にも販路は広がった。オンラインでの販売も年々伸びており、経常損益は黒字を計上できるようになった。

16年にはウガンダにも現地法人と直営店舗を設立した。工房を中心に販売や輸出など現地で働くスタッフは約20人に増えた。グレースさんは4人の子どものうち上の2人が大学に進学。「もっとお金をもらえるように仕事を頑張らないと」と意気込んでいるという。仲本氏は「仕事を通じて自信を取り戻してくれた」と手応えを感じている。

これまでの取り組みが認められ18年1月、都内で開かれた社会起業家のコンテスト「シーバスベンチャー」で仲本氏は日本代表に選ばれた。5月24日、オランダのアムステルダムで開かれる29カ国の代表者が競う世界大会に出場する。販売地域の国際化も進め、18年から19年にかけてオーストラリアと米国への進出を計画中だ。

足取りは順調だが、現状に満足はしていない。長らく内戦が続いたウガンダでは子どものときに強制的に徴兵された「元子ども兵」と呼ばれる若者がおり、まともな職に就けていない。「彼らが働ける環境を提供したい」。仲本氏の決意は固い。

(鈴木健二朗)

[日経産業新聞 2018年5月9日付]

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