2018年5月26日(土)

MRJ「今期中に資本増強」 三菱重が新中期計画

自動車・機械
2018/5/8 17:06
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 三菱重工業は8日、2019年3月期から3年間の新しい中期経営計画を発表した。前回中計で未達だった連結売上高5兆円目標を再び掲げた。稼ぎ頭の火力発電機器と民間航空機事業が失速するなか、M&A(合併・買収)で4000億円規模の増収を狙う。課題の民間ジェット機「三菱リージョナルジェット(MRJ)」では今期中の資本増強を実施する。

■M&A、4000億円上積み

 「持続的な成長軌道に戻す第一歩にする」。同日記者会見した宮永俊一社長は、新中計をこう位置付けた。同社で慣例だった任期5年を超え、異例の任期6年目に入った宮永社長は、新中計を自らが実行してきた構造改革の総仕上げとする考えだ。

 最終年の数値目標は国際会計基準で連結売上高5兆円、事業利益率6.8%、自己資本利益率(ROE)は11%とした。売り上げのうち、M&A(合併・買収)などを活用して4000億円規模を上積みする。重点課題としたのは、MRJの事業化と失速する火力発電機器の構造転換だ。

 MRJは開発の遅れで、過去に5度の納期延期を繰り返した。宮永社長は「20年半ばの納期はすべて順調だ。『戦闘状態』ではあるが、だいぶもやが晴れつつある」と強調した。

 MRJを開発する三菱航空機は18年3月末の債務超過額が約1000億円を超え、前の期に比べて約2倍に膨らんだ。今期中に開発費の峠を越す見通しだが、累計開発費は約6000億円規模に達したもようだ。宮永社長は「18年度中に三菱航空機の資本増強を実施し、債務超過の解消を目指す」と表明。具体的な手法や増資額などの言及は避けたが、事業化をにらみ、三菱航空機の経営体質を再構築する。

■火力発電、人員3割削減

 火力発電は環境規制の影響で、21年以降に石炭火力を中心に需要が落ち込む。21年3月期までの3年間で「国内の1工場1製品集約」を掲げ、ガスタービンの製造を高砂工場(兵庫県高砂市)、蒸気タービンを日立工場(茨城県日立市)、ボイラーを長崎工場(長崎市)に集約。21年以降に火力事業の人員を3割減らす方針。国内は自然減や採用抑制で20%、海外は工場再編などで10%減る見通し。

 ただ、新しい中計の達成の確度には不安がつきまとう。同日発表した18年3月期の連結業績は売上高が前の期比5%増の4兆1108億円、営業利益は16%減の1265億円、純利益は20%減の704億円だった。いずれも18年3月期までの中計で掲げた数値目標を大きく下回った。

 宮永社長が13年に経営トップに就任して以降、この5年間でライバルとの業績格差は開いた。日立製作所の18年3月期の純利益は3629億円、営業利益率は7.6%。三菱重工からスピンアウトした三菱電機の純利益も2718億円、営業利益率は7.2%になる。 時価総額も三菱重工は1兆3800億円なのに対し、日立は4兆1400億円、三菱電機は3兆5000億円に達する。米ゼネラル・エレクトリック(GE)は13兆3200億円、独シーメンスは11兆9000億円と世界の重電大手の背中は依然、遠い先にある。

■経営の重心定まらず

 電機業界のアナリストを長く務める若林秀樹東京理科大教授は「日本企業が強い事業領域は、5~10年という製品の周期で、数千~数千万台という製品の市場規模だ。具体的にはエレベーターや産業用ロボットなどの領域で、日立製作所や三菱電機はこれらの分野に経営資源の集中を進め、業績を高めている」と指摘する。ライバルに比べ、三菱重工の経営の重心はいまだ定まっていない。

 三菱重工に投資するある機関投資家は「宮永改革で経営のかじを大きく切ったが、経営のスピードが遅い。まるで航路をすぐには変えられない大型船のようだ」と不満を口にする。事業所主体の個別最適の経営から、本社主導で経営資源を素早く配分する全体最適の経営への転換も道半ばだ。

 「売上高4兆円で営業利益率7%を目標とするのが、今の三菱重工には現実的だ」(外国証券アナリスト)と規模拡大よりも利益を重視したもう一段の選択と集中の必要性を訴える。

 有言不実行との市場の評価を覆すには、新中計で目標の達成が欠かせない。宮永社長は「事業部制の縦割り社会が続いたが、やっと改革・改造が終わった。これからは組織全体の効率、業務の質を上げる新しいかたちの全体最適を探したい」と述べ、攻めに転じる意欲を示す。「即効性のある規模拡大を目指した成長投資に資金を配分する」(宮永社長)とも語った。持続的な成長路線の回帰に向け、宮永改革の実行力が改めて問われる。

(星正道)

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