2018年9月26日(水)

米の企業制裁の威力と問題点

The Economist
(1/3ページ)
2018/5/9 2:00
保存
共有
印刷
その他

The Economist

 戦争は、ドローンの登場によって様変わりした。精密誘導兵器を備えた無人飛行機があれば、アフガニスタンのヒンドゥークシュ山脈であれ、シリアであれ、米国はマウスのクリック一つで遠くの敵を倒せる。経済外交においても、似たような変化が起きている。米国は世界の資金の流れやIT(情報技術)産業の頭脳ともいうべき部分を支配しており、その影響力を活用した“新型兵器”を完成させている。この“兵器”が4月、初めて大企業に対して、怒りを持って使われた。標的は、ロシアのアルミ大手ルサールと中国の通信機器大手、中興通訊(ZTE)だ。その結果はすさまじく、不安を感じさせるものだった。

■同時多発テロで変わった米国の制裁

 ウィルソン第28代米大統領は1919年、国際的な経済制裁は「音もなく破滅をもたらす措置だ」と表現した。ピーターソン国際経済研究所のゲーリー・ハフバウアー氏によると、以来、米国は70年間に制裁を約70回発動した。そのうち地政学的な目的を達成できたのは3分の1しかないと同氏は言う。それでも他国との貿易を停止し、外国人の在米資産を凍結することで痛みを与えれば、狭い意味での目標はほぼ達成できた。

 だがグローバル化が進み、90年代に入ると米国の影響力は低下した。外国企業からすれば、貿易相手国は米国以外にも多くあったし、多国籍企業は当局に罰金を科されても、それは国際的な事業の継続に必要なコストだと見なしていた。米国の影響力低下を最も物語ったのが、米国が提案して、90年代に国連が実施したイラクの石油食料交換プログラムだった。フセイン政権に不正な支払いをした疑惑をかけられた企業は2000社を超えた。

 ところが、9.11同時テロで何もかもが変わった。ブッシュ(子)政権で安全保障担当次席補佐官を務めたフアン・ザラテ氏は回顧録『財務省の戦争』(未邦訳)で、米政府は様々なデータや資金の流れが武器になることに気づいたと説明している。2001年の米国愛国者法により、米財務省は金融の健全性を脅かす存在であるとみなした外国の銀行に対し、ドル建て決済を禁止できるようになった。

 米国は01~03年にかけて、国際銀行間通信協会(スイフト)が運営する銀行間の国際決済ネットワークの送信情報を入手する権利も得た。かつては機密性が守られていたこの情報を手に入れることで、米国は敵の足取りを追えるようになった。そうなると、たいていの銀行は、間接的であっても、第三者が何重にも間に入っていても、米国が敵とみなす相手との取引は控えるようになる。ドル決済を禁止される恐れがあるからだ。ドル決済を禁じられたら、国際的な金融業を営む銀行には命取りになる。

  • 1
  • 2
  • 3
  • 次へ

秋割実施中!日経Wプランが12月末までお得!

保存
共有
印刷
その他

関連企業・業界 日経会社情報DIGITAL

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報