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南北合同チームを圧倒 政治に負けないたくましさ

編集委員 北川和徳

卓球の世界選手権(団体戦)で突如、韓国と北朝鮮の南北合同チームが結成されたのには驚いた。1次リーグを勝ち抜いて決勝トーナメントに進出した両チームが、準々決勝の対戦を回避して合同チームを結成するなんて、他競技を含めても前代未聞のケースだろう。

どう評価すべきかは難しい。スポーツを舞台に平和や友好が進展するのは素晴らしいことだ。だが、長い交渉や準備を経て結成され、最初から合同チーム「コリア」として出場した1991年世界選手権(千葉・幕張)とは経緯がまるで違う。大会途中での2チームの合体は、スポーツとしてはどう考えてもルール違反である。

国際卓球連盟(ITTF)のワイカート会長は「ルールは尊重する。そしてルールは変わる。これはルールを超えた出来事で、平和へのサインだ」と語った。一方で、スポーツで最も尊重されるべきフェアネス(公平性)は置き去りにされた。何の非もない韓国と北朝鮮の選手たちには申し訳ないが、日本が準決勝の相手だったことを別にしても、このチームが勝ち上がらなくて良かったと思ってしまった。

日本は合同チームに完勝し、ルール違反ともいえる特例措置の"被害者"となるのを免れた。大会への影響も最小限に抑えられた。直接的に関わったのは日本と韓国、北朝鮮だけだ。韓国と北朝鮮の選手たちの心中はどうだったのだろう。

もともとは韓国5人、北朝鮮4人のメンバー構成だったが、実際に準決勝に出場できたのは韓国2人、北朝鮮1人だった。特例としてベンチ入りは10人まで認められ、残る6人のメンバーもベンチから一丸となって声援を送った。準決勝敗退の銅メダルは全員に授与された。チームの雰囲気はよかったと伝えられるが、代表としての戦いの場を奪われた選手が両国合わせて3人いる。高まる融和ムードの中で、アスリートの個人的な事情など無視されそうな北朝鮮はともかく、韓国からも彼女たちの気持ちを理解しようとする意見はまったく聞こえてこない。

「面白そう。楽しみ」17歳伊藤の強さ

五輪を含むほとんどの国際大会が事実上の国別対抗戦である状況では、政治がスポーツに関与しようとするのは必然だと思う。ゲームとしてスポーツを楽しむのではなく、国別メダル数の順位や勝敗を国家や民族の優劣と重ねて一喜一憂する雰囲気がまん延しているからこそ、スポーツに政治が入り込んでくる。そこに無意識に加担しながら、「政治をスポーツに持ち込むな」と念仏のように唱えても意味はない。

政治的思惑を免れないのはスポーツが軽く見られている証しと考えがちだが、スポーツが社会に広く大きな影響力を持つからでもある。それを自覚して、むしろ自らの価値を高めるためにそれを利用するようなたくましさ、したたかさがアスリートにもスポーツ界にも求められている。そこまで考えると、今回のITTFの判断も理解できないわけではない。

この世界選手権で個人としては全勝と大活躍だった伊藤美誠(スターツ)は、合同チーム結成を知った後、ツイッターでこうつぶやいた。「いろんな意見あると思うけど、私的には、ものすごく面白そう。そして、楽しみ」。20年大会の主役にもなりそうな17歳の少女の言葉を、とても頼もしく感じた。

(2020年東京五輪開幕まであと807日)

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