2019年9月18日(水)

一枚上手の相撲論(浅香山博之)

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引き技食う原因は稽古不足 落ちた力士が悪い

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2018/5/11 6:30
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立ち合いから前へ前へと相手を押し込んでいくことがもちろん基本だが、踏ん張る相手を押し切れない場面はどうしても出てくる。そんなとき自分は稽古場で「引くんだったら、いなせ!! 相手を崩せ!!」と指導している。引きといなしは違う。引きは自分の方に真っすぐ引くことで、相手を呼び込んでしまうリスクもある。いなしは相手の体を横に崩してから前に出ること。相手のバランスを崩してから押せば、間違いなく押し切れるはずだ。

基本は前に出る相撲

相手に圧力をかけたうえで、相手が押し返そうとする力を利用して引く分にはいい。だが立ち合いから当たりもせずに変化したり、引くことばかり考えていてはダメだ。自分も墓穴を掘った苦い思い出がある。立ち合いが合わなくて思わず引いたり、立ち合いで迷っている間に軍配が返って横に逃げ、みじめな負け方をしたこともある。お客さんから「なんだあの相撲は。やる気ないんだったらやめてしまえ!!」とヤジを浴びて花道を引き揚げるのは恥ずかしかった。当然、部屋に帰れば師匠にも怒鳴られた。「こんな相撲ではダメだ」とひどく落ち込んだことをいまでも覚えている。

高田川親方の指導のもと、竜電(右)はいい相撲をとっている=共同

高田川親方の指導のもと、竜電(右)はいい相撲をとっている=共同

やはり前に出て勝つことが本当の強さなのだ。相手がどんなことをしてきても前に持っていく相撲が取れれば、向こうは引くか逃げるかしかなくなる。前に出る相撲を取り続けることで自信につながるし、結果として白星にもつながり、番付も上がっていくのだ。それでも不思議なもので、どれだけ稽古場で前に出る相撲を体に染み込ませても、本場所になると体が自然に動いて引いてしまうことがある。ただ、そんな楽な勝ち方を覚えてはいけない。自ら逃げるように引いてばかりいては先々につながっていかないし、ひいては現役生活も長くは続かないだろう。

だからこそ、幕内で相撲を取るだけでもすごい39歳の安美錦や38歳の豪風といったベテラン力士はともかく、これから強くならないといけない若手は安易に引くべきではないのだ。攻防もない取組の最後に引き技を見せられたら、お客さんもあきれるだけだろう。こざかしい力士が目に付くなか、輝や竜電はいいなあと思う。押し切れないこともままあるが、不器用ななかにも前へ前へ出ようという気持ちが伝わってくる相撲をとっている。師匠の高田川親方(元関脇安芸乃島)の厳しい指導が現れているのだろう。ぶち当たって一発で相手を吹き飛ばすような取組、見る人に「お相撲さんってすごい」と思われるような力士が増えていってほしい。

(元大関魁皇 浅香山博之)

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