2018年11月14日(水)

派遣、安定より自由な仕事 無期雇用進まず時給高水準

2018/5/7 16:18
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3月に1年半ぶりに前年比プラスに転じた派遣時給。仕事を探す人が多い3月は例年高時給の求人が目立ち、4月以降もこの傾向が続いているもようだ。背景にあるのが派遣社員制度を巡る法改正だ。就労期限がない無期雇用を選ばず、有期雇用で仕事を探す派遣社員が増加。人手確保の好機とみた企業が積極的に人材を募集し、時給を下支えしている。

無期雇用の希望者の少なさが、派遣時給上昇に拍車をかけている(勤務中の派遣社員ら)

「無期雇用の希望者は派遣社員の対象者の1~2割にとどまる」。エン・ジャパンの担当者はこう打ち明ける。人材派遣各社からも「無期雇用を選ぶ人は想定以上に少ない」との声が目立つ。

2018年は派遣社員をとりまく法制度が大きく変わる。改正労働契約法の影響で、同じ派遣会社で5年以上働く派遣社員は希望すれば派遣元で無期雇用の社員になれる。

労働者派遣法も改正された。9月末からは3年以上同じ職場で働くには、派遣先の直接雇用か派遣元の無期雇用に切り替えることが必要だ。

短期の就労を繰り返す不安定な労働環境を改善するのが法改正の狙いだ。就労期限がない無期雇用を選べば有期雇用に比べ契約更新時に「雇い止め」で職を失うリスクは小さくなる。改正当初は無期雇用への切り替えが進むとの見方もあった。

現時点でこの動きは広がっていない。リクルートスタッフィングは無期雇用への転換に関心を示したスタッフが対象者7500人のうち1割にとどまる。スタッフサービスは5%、セントメディアも対象社員の3割しか希望者が出なかった。

無期雇用に切り替わると雇用や賃金が長期にわたって保証される。一方で派遣会社が社員を配置する職場を選ぶ権利を持つ。「自由に仕事を選べるという派遣のメリットがなくなるのが不人気の理由」(リクルートスタッフィング)との見方が支配的だ。

3年以上の勤続で無期雇用に切り替わる改正法の適用を秋に控え、有期雇用で働き続けるには新しい仕事を探す必要がある。人手不足に直面する企業にとり、経験者を中心とした有期雇用の派遣社員は貴重な労働力だ。

エン・ジャパンの沼山祥史・派遣会社支援事業部長は「3月時点で新たな仕事を探す動きが出始めていた」と指摘。人材確保の好機とみた企業が「高い時給の求人を増やし、派遣時給の上昇につながった」と分析する。

派遣会社も強気に出ている。アデコは今年に入り、前年比で平均2%と昨年の倍のペースで時給を引き上げた。リクルートスタッフィングも、求人によっては100円時給を上げている。

より高い給与を求め、別の派遣会社に移る動きも広がる。エン・ジャパンによると今春は派遣元を替えた人が前年比2割増えた。「5年以上契約してきた派遣社員のうち約半数が他社に流出してしまった」(大手派遣会社)ケースもある。

パソナの佐藤スコット社長は「経験ある派遣社員の獲得へ、高い時給を提示する傾向は当面続く」と指摘する。雇用の安定を目指した新たな派遣ルールが、想定外の時給上昇を招いている。

 ▼派遣社員の無期雇用 派遣先が見つからない場合でも派遣会社から給与がもらえる勤務形態。派遣会社と定期的に契約を更新する有期雇用に比べ、就労環境が安定する。
 一方で派遣先を決める権利は派遣会社が持つようになる。従来のように職場を自由に選びにくくなる。無期雇用の対象者は(1)4月以降、5年以上同じ派遣元で働く人のうちの希望者(2)9月末以降、3年以上同じ派遣先で働く人のうち、派遣先での直接雇用に切り替える場合以外。

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