2019年6月17日(月)

フルスイングの余韻(山崎武司)

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「リクエスト」の代償と納得できぬ「申告敬遠」

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2018/5/6 6:30
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そうはいっても、である。野球の中心は投手と打者の一騎打ちだ。相撲の立ち合いを思い浮かべてほしい。陸上のようなスタートの合図があるわけでなく、両者が手をつき、あうんの呼吸で立つ。立ち合いの変化や、その後の攻防のなかで肩透かしを引くことはあっても、すべては立ち合いが成立した後の話だ。投げるそぶりを見せず、打者が構えていなかったところに急に投げ込むのは、僕に言わせれば「立ち合い不成立」。ルールで禁じられていなくても、すべきではないことだ。

ロッテ戦の四回、申告敬遠で一塁へ向かう楽天・アマダー(3月30日)=共同

ロッテ戦の四回、申告敬遠で一塁へ向かう楽天・アマダー(3月30日)=共同

最後は実際にボールを投げなくても、申告すれば四球になる「申告敬遠」について。これは絶対に要らない。というより、いくら大リーグが採用していても、こんなものを導入してはいけない。大げさにいえば野球の根幹に関わる。

敬遠であっても投手が4球投げれば、何が起こるかわからない。過去には暴投した投手もいたし、ボール球を打ってサヨナラ安打にした打者もいた。敬遠に抗議するため、バットを持たずに打席に立った長嶋茂雄さんや、空振りした田尾安志さんのような打者もいた。実際、こんな「想定外」が起きる確率は限りなくゼロに近い。けれども確率がほとんどないということと、あらゆる可能性を最初から排除してしまうというのは全く意味合いが違う。前の打者が敬遠されるのを待つ間、じわじわとわき上がってくる闘志も過去のものになってしまった。

時短優先の行き着き先は…

申告敬遠の導入は試合時間の短縮が目的とされている。しかし野球はそもそも、時間制限を受けず、省略なしで9回を戦って勝敗を決めるゲームだ。時短優先の考えを突き詰めれば、ストライク3つではなく2つで1アウト、3アウトではなく2アウトで攻守交代、1打席に規定の数のファウルを打ったらアウトなど、なんでもありになる。「10-0でリードしているから八回の攻撃は放棄します」という省略も歓迎されるかもしれない。しかしそれはもはや野球ではないだろう。

野球を五輪競技として採用してもらうため、ソフトボールのような7回制にしてはどうかという話が出たことがある。こんなことをいう人は野球を全くわかっていない。「7回でやるぐらいなら五輪競技にならなくて結構」となぜ考えられないのか。

ダラダラした試合はもちろん減らした方がいい。しかし時短は、速やかな攻守交代やイニング間の投球練習の削減など、野球の本質に関わらない部分ですべきこと。打席に入るときの登場曲をなくすなど、やれることはいくらでもある。省いていいことと悪いこと、得られるものと失うもの。ルールや制度をいじるときは、その見極めに慎重でありたい。

(野球評論家 山崎武司)

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