2018年10月21日(日)

ココン倉富社長、ハッカー束ね実直に成長

コラム(ビジネス)
スタートアップ
2018/5/6 6:30
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サイバーセキュリティー事業などを手がけるココン(東京・渋谷)。国内屈指のハッカー集団を束ねる倉富佑也社長(25)は19歳で単身中国に渡り起業家の道を歩んだ。スタートアップでありながら果敢なM&A(合併・買収)で先端事業を拡大する。実直な若きグループ経営者は仲間を増やしながら成長を続ける。

ココンの倉富佑也社長

ココンの倉富佑也社長

埼玉県川口市にホワイトハッカーが集まる研究施設がある。セキュリティーの穴を見つけるため、疑似攻撃の対象となるのはクルマだ。施設内では車体は完全にばらされ、カーナビなどの電子回路がむき出しになっている。パソコンをつなぎ操作するのは、ココンが2015年に買収したイエラエセキュリティのエンジニアらだ。

「公道を走っている車の多くが脆弱性を抱えている。パソコンを使っておもちゃのように動かせる」。イエラエの牧田誠社長(35)は淡々と話す。国内のハッキング大会で優勝し、海外の強豪を相手に健闘するハッカーを抱える同社。大手自動車メーカーのコンサルティングも手がける。

■初会合で買収提案

そんな異色の企業がココンの傘下に入った。倉富社長は牧田氏に、最初のミーティングで買収案をぶつけてきた。「(ソフトバンクグループの)孫正義さんを超えたいんです。日本にないような大きな会社を20年、30年かけてでも一緒に築いていきましょう」

牧田氏は情報セキュリティーの専門家としてソフトバンクグループなどを経て11年に起業した。初年度から黒字だったが、企画や経理、営業を一人で担当し「売上高1億円の壁にぶつかり、へとへとになっていた」。人材を集めて指揮する自信もない。成長をあきらめていたとき、一回りも年下の倉富氏に出会った。「22歳の彼の存在感に圧倒された。この人になら仕えてもいい」。初回のミーティングから1カ月で手を結んだ。

ココンはこれまでオプトやSBIホールディングスなどから約18億円を調達。安定した経営基盤と資金力を手に昨年4月にはロボット型スーツを開発するスケルトニクスをグループ会社にした。実現したM&Aは5社におよぶ。「日本企業は商業化を見据えた研究開発(R&D)への投資が不十分。そこを変えていきたい」と力を込める。

攻めのM&Aを続ける倉富氏だが、その姿勢は謙虚だ。「ゼロの状態から会社を育ててきた創業社長の思いはないがしろにはしない。人生がかかった大きな意思決定をしてくれたお返しをしたい」。イエラエをグループ化した際は、すぐに体制を強化した。

ハッカーらを正社員として迎え、今では社員はアルバイト含め約40人に拡大した。専門家が不足する日本のサイバーセキュリティー業界で人材育成にも力を入れる。営業部隊を設けたことで取引先も増え、17年11月にはSOMPOホールディングスと提携した。

■高校3年生で起業決意

倉富氏が起業を決意したのは高校3年のとき。学ランのまま授業を抜けだし、堀場製作所創業者の故・堀場雅夫氏の講演を聞いた。「当時85歳でありながらエネルギーに満ちあふれていた。商売人として生きていこう」と決めた。海外での経験が武器になると思い、早稲田大学に入学後、すぐに上海に向かいベーグル店を立ち上げた。

毎朝6時に起き、店に立った。閉店後も工場まで足を運び、翌日の品物を確認した。家に帰るのは未明。成功する自信とは裏腹に、初日から売り上げが下がり続け3カ月で店をたたんだ。「自分ですべてやろうとして周りが見えなくなった」

失敗は次の事業につながった。店舗の立ち上げ準備で建物の完成予想図を作製した際、中国など海外でより安価にできると知り、世界規模のクラウドソーシングを当時急成長していたソーシャルゲームに応用した。帰国後、中国で築いたイラストレーターの人脈を生かし、イラスト制作を発注するシステムをつくり再び起業した。

今では、同システムに日本のイラストレーターを含む7千人が登録する。17年6月には、引き合いの強い中国でも事業を本格的に開始。4月末には中国語版のサイトを開設し、現地のゲーム会社からのサービス受託を進めている。

セキュリティー事業への参入は、この流れからの必然だった。ゲーム展開を有利に動作させる不正プログラム「チートツール」対策についての相談をきっかけに、セキュリティー診断の需要が高まるとみて、事業の横展開に至った。

ココンが手がける脆弱性診断の対象はあらゆるモノがネットにつながる「IoT」にも広がる。米国やイスラエルが圧倒的な強さを持つサイバーセキュリティー業界で、若き経営者はアジア発の有力企業をめざす。

(企業報道部 駿河翼)

[日経産業新聞 2018年5月4日付]

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