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今日も走ろう(鏑木毅)

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「老い」と奮闘 打開策探し楽しめるかが鍵

2018/5/3 6:30
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9年前の40歳の時に世界最高峰のトレイルランニングの舞台「UTMB」で世界3位となった。コースはヨーロッパのモンブランを1周巡る171キロメートルの山岳ルートで、登る高さの累計は1万メートルにも及ぶ。50歳を迎える来年、「Never」というプロジェクト名のもと再びこの舞台を目指すことを決意し、その準備に試行錯誤している。ただ、以前のようには体がいうことをきかず苦悩している。

新たに自転車トレーニングを取り入れた

新たに自転車トレーニングを取り入れた

そんな「老い」との奮闘の日々のなかで先日、面白い発見をした。

当時と比べてどのように体が変化しているか、さまざまな方面から身体計測してもらうと、意外なことに筋力や瞬発力などに衰えはほぼみられなかった。大きく変わったことは一つ。それは筋力を実際の走りに伝える能力が著しく低下していたということだった。簡単に言ってしまえば、筋肉量自体は十分あるのにそれをうまく使えていないということになる。

これを機にトレーニング内容を再検証した。やがておぼろげながら「これかもしれない」というものがわかり、日々そこを重点的に補強してみた。その結果、忘れていた当時の動きがわずかずつであるものの再現できるようになった。100マイル超という長大なレースですぐに結果が出るかどうか、軽々に判断はできないけれど、何らかの復活の糸口が見つかった気がしてほっとした。

一般的に競技キャリアの長いアスリートには共通点があるように思える。それは全盛期とは異なる目で自分を高めるすべを把握しているということだ。

トップを極めたアスリートには必ず独自の勝利へのプロセスがあるが、この成功の道筋を同じようにたどれなくなるとアスリートの多くは身を引く。そのため競技生活を長く続けるには、身体能力が以前に比べ衰えたとしても状況を冷静に受け止め、現状と往年のレベルの差を狭めるようにトレーニングを続ける必要がある。サッカーの三浦知良選手やスキージャンプの葛西紀明選手は、勝敗をも超えた自分だけの価値観を大切にするというアスリートとしての高い矜持(きょうじ)を持ち、肉体を維持している存在だ。

大切なのはこうした探求の過程を心の底からおもしろいと感じられるかということだろう。柔軟で前向きな心こそが年齢の限界を打ち破る鍵ではなかろうか。

アスリートにとっての「限界」とは、自己探求の日々から背を向けることに他ならない。全盛期にはやすやすとできたことができなくなる現実は確かに悲しい。それでも「あれもこれもできなくなった」と悲観的にならず、打開策探しを楽しむ心を持ち続けることが年齢との闘いにおいては大切だ。私にとって50歳でのUTMB挑戦は厳しいものになるのは間違いない。精いっぱいこの過程を楽しみたいと思う。

(プロトレイルランナー 鏑木毅)

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