緩和、副作用に目配り 日銀が物価達成時期を削除

2018/4/27 22:55
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日銀は27日、物価目標の達成時期を明示しないようにスタンスを変えた。5年前、「2年程度」を念頭に目標達成を約束して始めた異次元緩和。今回の変更は短期決戦からの決別を意味する。これからの5年は多少の環境変化では追加緩和をせず、副作用にも目配りする持久戦となる。

「達成時期と政策変更を機械的に結びつけているわけではない。市場に誤解があった」。黒田東彦総裁は27日午後の記者会見で淡々と語った。今回は黒田総裁が再任して初の会合。だが、5年前のような覇気に満ちた面影はなく、静かな声でゆっくりと説明した。

当初掲げた「2年程度」の看板は決して軽い約束ではなかった。5年前の会見では2年程度の達成期限を「明確にコミットする」とし、そのために必要な政策を詰め込んでいた。だが日銀が思い描いたようには物価は上がらず、達成時期は6度も先送りされてきた。

次第に「達成時期」は日銀にとって重荷となっていった。先送りが意識されると、それだけで追加緩和観測が浮上する。「過度に注目されるのは市場との対話の面で適当でなかった」(黒田総裁)。本来は日銀の覚悟を人々に示し、物価がこれから上昇するという期待を誘発させるために定めた期限だった。だが「6回も先送りすることになり、かえって期待に悪影響を与えている」との声も政策委員の間では増えていた。

もちろん、目標達成時期をなくすことで緩和姿勢が後退したと受け取られると、円高・株安を招きかねない。日銀は達成時期削除のタイミングを慎重に探ってきた。いまは景気がよく、物価も上昇基調を保っており「見通しは変わっていない」(黒田総裁)。追加緩和観測もほとんどない今は修正の好機だと判断した。27日昼に発表した直後も円高・株安に振れなかった。黒田総裁もほっとしたに違いない。

今回の修正によって、物価情勢がよほど悪化しない限りは、追加緩和の可能性は極めて低くなった。黒田総裁は「『できるだけ早期に』という姿勢は全く変わらない」と強調した。ただ期限を区切らないなら、その言葉に重みはない。

27日公表した2020年度の物価上昇率の委員9人の見通しは中央値こそ1.8%だが、4人の委員は1.3~1.7%を予想した。9人中8人の委員が下振れリスクが大きいと考えている。むしろ20年度までに2%の物価安定目標が達成される可能性は低いと示しているようなものだ。

日銀は「物価上昇の勢いが維持されているなら、現状の緩和を維持する」(幹部)と、政策が見通しの数字に縛られないとのスタンスを強めている。

日銀がこうしたカジを切ったのは緩和の副作用への懸念がじわりと高まってきたからにほかならない。緩和が長期化すると金融機関の収益を圧迫するほか、いずれバブルを誘発する恐れもある。大量に国債を買い続けると政策の持続性も危ぶまれる。現状の緩和でも強力な緩和であることに変わりはない。

市場では「早期達成にこだわると緩和の副作用が大きくなりすぎる」(東短リサーチの加藤出社長)との声が多く、前向きに受け止められている。第一生命経済研究所の熊野英生氏は「将来の出口戦略の着手に縛りをかけたくない思いがあったのだろう」と話した。

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