宝飾品店をチェーン展開するケイ・ウノ(名古屋市)は人工知能(AI)が鑑定したダイヤモンドの販売を始めた。人が行う鑑定と比べ誤差が少なくなるとしている。デジタルの鑑定書も発行し、内包された気泡などの位置がタブレットなどで確認できる。顧客に自分好みの石を選んでもらい、購買意欲をくすぐる。
イスラエルのダイヤモンド鑑定システム大手、サリネ・テクノロジー社の日本総代理店であるAP社(東京・台東)と組む。AI鑑定したダイヤモンド約50個を販売している。現在全国に35店舗あるケイ・ウノの店舗全店で取り扱う。
販売するAI鑑定のダイヤモンドは売れ筋の0.2~0.3カラットを中心にした。AIによる鑑定を行ったダイヤモンドには、宝石鑑定の専門機関である中央宝石研究所(同)が発行する鑑定書のほかに、サリネ・テクノロジー社が発行する紙と電子の鑑定書を発行する。電子の鑑定書はスマートフォン(スマホ)やタブレットで確認できる。
ダイヤモンドを360度回転して見ることができる「3Dルーペ機能」も導入した。接客時にダイヤモンドを顧客と同時に確認できる。オーダーメードの宝飾品に強みがあるケイ・ウノはより顧客の好みに合わせた提案につなげる考えだ。
内包物の位置もよりわかりやすくした。従来はルーペで確認するだけだったが、デジタル鑑定書では、ダイヤモンドのどの部分にあるか表示される。写真と図の両方で確かめることができ、購入後の返品やクレームを防ぐ効果を期待する。
他のダイヤモンドとの比較もしやすくする。ダイヤモンドの色は23段階に分けて鑑定され、値段が異なる。画面上で、異なる鑑定結果のダイヤと見比べて確認ができる。
AIによる鑑定は、人間の体調や経験、技術による誤差がない。鑑定士よりも、客観的な基準が強みだという。
サリネ・テクノロジー社が2017年に行った調査によると、鑑定士とAIによる鑑定の誤差率は、色の判断で鑑定士が3.5%、AIは1%だった。機械学習を重ねていくことで、より正確な鑑定ができるようになるという。
矢野経済研究所によると、17年の国内宝飾品の小売市場規模は9468億円と、2年続いた減少からプラス成長となった。20年は1兆17億円と予測している。
ダイヤモンドは婚約指輪の宝石として根強い人気を誇る。ゼクシィ結婚トレンド調査2017によると、婚約指輪の材質についての質問では94.5%が「ダイヤモンド」と回答したという。
人々を魅了し続けてきたダイヤモンドに、AI鑑定はより安心で正確な美の基準を与えうるかもしれない。(友部温)