クアルコム、NXP買収に壁 米中摩擦の「人質」 - 日本経済新聞
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クアルコム、NXP買収に壁 米中摩擦の「人質」

【ニューヨーク=佐藤浩実】米クアルコムは25日、オランダの車載半導体大手NXPセミコンダクターズの買収について「国家間の議論にひもづいている」との認識を示した。米中貿易摩擦の余波で、中国の買収審査が止まっているのだ。株主に約束した1株利益を実現するために、買収ではなく自社株買いを行う計画も現実味を帯び始めた。ただ、買収不成立なら、スマートフォン依存からの脱却という本来の目標は遠のく。

モレンコフCEO「国家間の問題」

「どうやって(19年度に)5.25ドルを達成するのか?」。クアルコムが25日に開いた1~3月期決算の電話会見でアナリストらは相次いで問いかけた。「5.25ドル」はアップルなどとの係争要因を除いたクアルコムの1株利益の目標値。スマートフォン向け半導体での競争力維持やコスト削減に加えて、1.5ドル分のNXPの買収効果を含んでいる。

アナリストの疑問も無理はない。「クアルコムのNXP買収」はいまや、激しさを増す米中の貿易摩擦の「人質」になっている。欧州や韓国など世界に9ある独占禁止法当局の8つが承認した買収の審査が中国では滞っているのは、米政府が中国の通信機器大手の中興通訊(ZTE)と米国企業の取引を7年間禁じたことへの報復とされる。25日には米司法省が対イラン制裁違反を理由に華為技術(ファーウェイ)の調査に入ったと米紙が報じており、対立は増すばかりだ。

3月時点では「米国にも中国にも友好的な事業モデルを構築している」と語っていたクアルコムの経営陣も、今回ばかりはトーンが変化した。スティーブ・モレンコフ最高経営責任者(CEO)は「恐らく、個々の(企業の独禁法審査という)問題を超えて、国家間のより高いレベルの議論に関連していると思う」と発言。「地政学的には難しい環境にある」とし、7月25日を期限とする買収の成否が米中の攻防に委ねられていることを言外に認めた。

プランBの自社株買いも視野

とはいえ、19年度の1株利益の目標値はブロードコムからの敵対的買収に対抗して株主にCEO自ら約束した値だ。NXPが得られなければ1.5ドル分の1株利益を他の方法で積み増さねばならず、「プランB」としての自社株買いが現実味を増すというわけだ。モレンコフ氏は「買収承認を得られると期待している」「中国の独禁法当局とは緊密にやり取りをしている」と繰り返す一方で、大規模な自社株買いの用意があるとも言及した。

ただ、自社株買いは短期的な1株利益の引き上げには貢献しても、「自動車用半導体への本格参入」という当初のもくろみからは外れてしまう。時価総額では企業規模としては小さなエヌビディアやブロードコムにすでに追い抜かれてしまったクアルコムだが、スマホ依存の脱却が遅れればますますその差は開いてしまう。

25日の決算会見の冒頭で、モレンコフ氏は5Gに対応した半導体モジュールの開発や5G関連特許のライセンス事業が、業績を押し上げる要因になると強調した。「国家間の議論」に翻弄されて身動きが取りづらくなるなかで、5Gで投資家にアピールするしかないという焦りが強まっているようにみえた。

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