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「得点獲得力」で測る打者の価値 現役最強は柳田
野球データアナリスト 岡田友輔

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2018/4/29 6:30
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前回はセイバーメトリクスがどのように守備力を評価するかを紹介した。今回は打撃を取り上げたい。打撃に関する数字といえば、すぐに思い浮かぶのは打率、本塁打、打点だろう。いずれもタイトル争いが注目され、三冠王ともなれば球史に名を残すことになる。だが、これらの数字だけで打者の価値は十分に測れるだろうか。

チームにより多くの得点をもたらす打者は

例えば本塁打を1本打っても、走者の有無によって打点は1~4まで変わる。つまり打点は本人の打力だけでなく、前を打つ打者たちの出塁能力に大きく左右される。それに比べれば、打率や本塁打数は本人の打力を端的に示していることになる。では3割打てるが本塁打はシーズンに1桁ぐらいしか期待できない巧打者タイプと、打率は2割5分だが20本塁打を期待できる一発屋はどちらに価値があるのか。セイバーを使えば、こうした違うタイプの打者を同じ尺度で測れる。

いうまでもなく、野球は点取りゲームだ。得点が増えるほど勝率も上がる。こうした前提に立つと、価値の高い打者とは「チームにより多くの得点をもたらす打者」ということになる。最近は球団の年俸査定でも、打率以上にこの「得点獲得力」が重視されるようになった。

この能力を測るカギになるのが「出塁率」と「長打率」だ。出塁率の高い打者とは「アウトにならない打者」を指す。安打を打てなくても四球を選べれば、出塁という点では同等の価値がある。プロ野球が2リーグ制となった1950~2017年のチーム打率と得点数の関係を調べると、相関係数(多いほど相関性が高く、1で完全に一致)は0.79。それが出塁率と得点になると0.84となる。これは打率以上に出塁能力が得点に結びつくことを意味している。

打率のもうひとつの死角はすべての安打を等価として扱ってしまうことだ。しかし本塁打に単打以上の価値があるのはいうまでもない。塁打数(本塁打が4、以下三塁打は3で単打が1)を打数で割ったのが「長打率」。走者を進塁させる能力といいかえてもいい。得点との相関係数は0.88と出塁率よりさらに高くなる。

出塁率+長打率、柳田がトップ

出塁能力と長打力を兼ね備えたソフトバンク柳田は現役最強打者である=共同

出塁能力と長打力を兼ね備えたソフトバンク柳田は現役最強打者である=共同

出塁率と長打率を足した数字を「OPS(On-base Plus Slugging)」と呼ぶ。双方の要素が入っているため、得点との相関係数は0.94と非常に高い。この数字が.900以上なら一流打者、1を超えれば文字通りの超一流といえる。17年の規定打席到達者で両リーグ最高のOPSを記録したのは柳田悠岐(ソフトバンク)で、数値は1.016(出塁率4割2分6厘、長打率5割8分9厘)だった。打率3割1分、31本塁打でタイトルには届かなかったが、持ち前の選球眼でリーグ最多の89四球を選んだ。高い出塁能力と長打力を兼ね備え、15年から3年連続でパ・リーグ最高のOPSを残し、うち2年は球界最高という柳田は、得点獲得力という点で現役最強の打者といえる。

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