2018年10月21日(日)

未来面「つくりかえよう。」

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 日本経済新聞社は、読者や企業・団体の皆さんと一緒に日本の課題について考え、議論する「未来面」をスタートしました。今期のテーマは「つくりかえよう。」 革新的なアイデアをお寄せください。企業のトップが選んだ優れたアイデアは新聞紙面や日経電子版で紹介します。アイデアの投稿はこちらから。
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農業と農村はどうすればもっと元気になる?
中家徹・全国農業協同組合中央会会長 経営者編第2回(5月8日)

2018/5/8 2:00
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日本の農業は多くの危機に直面しています。高齢化と担い手不足で農家の数が減り、耕作放棄地が増えています。農業生産額は最近少し上向いていますが、農業が強くなったから増えたわけではありません。金額が上向いたのは生産量が減って、値段が上がったためです。

天候の影響とは関係なく、生産量の自然減が現実に起きています。そこに悪天候が重なって、農産物の値段に影響し始めています。自分の故郷の和歌山県を見ると「5~10年後はどうするんだろう」と思う農家がたくさんいます。それでいいのか。これ以上、地方を疲弊させてはならないと思っています。

ふり返れば高度成長時代、「金のタマゴ」と言われて若者が農村から都市に移りました。農家の収入はサラリーマンほどには増えませんでした。食生活が欧米化してコメをはじめとした日本の農産物の需給バランスが崩れました。そうした中で農産物の輸入も増え続けました。

いろんなことが負のスパイラルに入って、今日にいたっています。兼業農家の多くはもともと専業農家でした。でも農業では暮らしが成り立たないので、ほかで稼ぐために兼業になりました。地域社会を支えてきたのは彼らです。ただ、中には「子どもに農業を継がせたくない」と思っている人も少なくありません。

農地の集約による経営の大規模化は確かに進んでいます。グローバル化の中で海外と競争しなければならないというムードが強まり、もっと合理的に経営すべきだという機運も高まりました。農政の課題でもあります。でも条件の悪い山あいの田畑はどうすればいいのか。

ひとくちに農業と言いますが、実態は多様です。農地の集約は産業としては重要ですが、農村をどう守るかという視点を忘れるべきではありません。日本の伝統文化を誰がどうやって継承していくのか。産業政策と地域政策は車の両輪。それを無視して、いきなり手のひらを返すようなことはできません。

農協も頑張ってはきましたが、足りなかった部分もあります。「組合員のための組織」という考え方にこだわって、内向きの発想で守りの姿勢になってきた面もあります。もっとグローバルな視点に立ち、今の流れに対応して経済界と連携すべき部分も多いと思います。人工知能(AI)など想像もできなかったような技術革新を取り入れて、効率を高めることも必要でしょう。

そこで皆さんの意見を聞かせてほしい。食料自給率は先進国の中でも最低水準なのに、たくさんの食料を廃棄している現実をどう思うのか。お金を出せばすぐ食料を買える状態が今後も続くのか。農業と農村はどうすればもっと元気になるのか。戦後の食料難が忘れ去られてしまった今、農業と農村の未来について改めて問いかけたいと思います。

中家徹・全国農業協同組合中央会会長の課題に対するアイデアを募集します。投稿はこちらから

かつて農業は国民にとって今よりもっと身近なものでした。農村にいる農家の数が多かっただけではなく、都会に住んでいる人も家族や親戚で農業をやっている人を探すのは難しくありませんでした。だから「農業や農村は大切」という言葉は、多くの人の心にすんなり響きました。

もちろん今都市部で暮らしている人も、農業は大事だと思っているでしょう。でも高齢農家が引退し、あとを継ぐ人が足りなくて、荒れはてた田畑の様子をどこまで知っているでしょうか。海外から農産物を輸入できるのは、日本の国力の証しです。ただ捨てるほど食品が余っているからと言って、食料問題が無縁とは言い切れません。

難しいのは、補助金で守るだけでは未来は開けないことです。中家氏は農協について「内向きで守り」だったと語りました。「農業危機を防げなかった」などの批判もありますが、ピンチをチャンスに変えるカジを握っているのも農協。奮起に期待したいところです。(編集委員 吉田忠則)

◇   ◇

未来面は、日本経済新聞社が読者や企業・団体トップの皆さんと課題を議論し、ともに作っていく紙面です。今回の課題は「農業と農村はどうすればもっと元気になる?」です。皆さんからの投稿を募集します。5月17日(木)正午が締め切りです。優れたアイデアを経営者が選んで、次号5月28日(月)付の未来面や日経電子版の未来面サイトで紹介します。

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