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本塁打で稼ぐ 勝ち組VCに見る「ベーブ・ルース効果」

CBINSIGHTS
スタートアップへの投資には失敗はつきもの。ベンチャーキャピタル(VC)による投資は、2割の投資案件がリターンの8割を生み出すという。イタリアの経済学者が提唱した「パレートの法則」がほぼ当てはまるという。米大手VC幹部はこれを「ベーブ・ルース効果」と呼ぶ。伝説の野球選手は三振も多いが本塁打を量産したためだ。本塁打をかっ飛ばした勝ち組ベンチャー投資の共通項を探る。
日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しました。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週1回掲載します。

VCは、リターンは「パレートの法則」に従っている。つまり、案件の2割がリターンの8割を生み出すものだ。優れたベンチャー投資家は、こうした勝ちを得るには、多額の損失を被ると理解した上で投資している。

米VC大手Andreesen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)のクリス・ディクソン氏は、これを1920年代の伝説的な野球選手に例えて「ベーブ・ルース効果」と呼ぶ。ベーブ・ルースは三振が多かったが、ホームラン記録も樹立したからだ。VCも大きく振れば、時にはホームランになる。こうした勝ちは全ての負けを補い、「ファンドにリターンをもたらす」というのだ。

VCが投資した企業のエグジット事例のトップ25

米Union Square Ventures(ユニオン・スクエア・ベンチャーズ、USV)のフレッド・ウィルソン氏は社内向けの文書で、ファンドを黒字にするには、10億ドル規模のエグジット(投資回収)が2回は必要だと指摘した。「もっとも、大事なのはエグジットすること」だと言う。

CBインサイツはVCに大成功をもたらした28社について分析した。今回はこの中からトップ5社の事例を紹介する。

こうした「ホームラン投資」の共通項は何か。ウェブアーカイブや、書籍、創業者へのインタビュー、CBインサイツのデータベースなどからデータや情報を抽出した。まずは概要からざっと並べてみよう。

(1)米対話アプリのワッツアップは米Sequoia Capital(セコイア・キャピタル)だけと提携することを早々に決断した。セコイアはワッツアップに6000万ドルを投資し30億ドルのリターンを得た。

(2)フェイスブックの指数関数的な成長により、米Accel Partners(アクセル・パートナーズ)など初期の投資家は大成功を収めた。フェイスブックに最初に投資したピーター・ティール氏でさえ、同社が過大評価されているとの懸念から後の増資ラウンドへの参加を見送った。だがアクセルはフェイスブックを信頼し続けた。

(3)グルーポンは社会活動のプラットフォームからクーポン共同購入へと事業モデルを転換し、共同創業者兼会長で筆頭株主のエリック・レフコフスキー氏に巨額のリターンをもたらした。

(4)米光ファイバー通信Cerent(セレント)は米Kleiner Perkins Caufield & Byers(クライナー・パーキンス・コーフィールド&バイヤーズ、KPCB)のパートナーによって設立された。KPCBは当初から投資に参加し、21億ドルのリターンを得た。

(5)写真・動画共有アプリ「スナップチャット」を運営する米スナップは初期の投資家、米Benchmark Capital Partners(ベンチマーク・キャピタル・パートナーズ)と緊密な関係を構築。「(性的なメッセージや画像などを送る)セクスティング」用の流行アプリにすぎないとのイメージを払拭した。

:具体的に記していない限り、下記で使われている「リターン」は、IPO(新規株式公開)または売却時の額面価格に基づいて計算されている。アーンアウト(例えば、ガン治療薬の開発を手掛けるステムセントルクスなどに適用される)やロックアップは計算に入れていない。

では、こうした企業や投資家は具体的にはどんな行動を取ったのか。以下に企業ごとに掘り下げてみよう。

(1)ワッツアップ

フェイスブックは14年、ワッツアップを220億ドルで買収した。民間企業によるVCの出資を受けたベンチャー企業の買収としては過去最大で、現在でもこれを上回る案件はない。これはワッツアップの唯一の投資家、セコイア・キャピタルにとっても大勝利だ。

セコイアの成功の土台になったのは、ワッツアップの共同創業者ブライアン・アクトン氏とジャン・コウム氏との専属パートナーシップだった。

初期の投資家がスタートアップに資金を投じる際は、関心を集めて投資の正当性を示すため、他の投資家も誘おうとするのが一般的だ。その結果、スタートアップの資本構成表には5~6社ものVCが名を連ねることになる。このため、初期の資金調達ラウンドは「パーティーラウンド」と呼ばれている。

だが、ワッツアップとセコイアは別の戦略をとった。セコイアは11年に実施されたワッツアップのシリーズAラウンド(調達額800万ドル、評価額7840万ドル)に単独で参加。続いてシリーズBでも唯一の投資家となった。

ワッツアップの創業者は型破りなことで知られる。例えば、2人は創業したばかりの頃、広告に異を唱えると表明した。自社サービスに広告を掲載せず、アプリ利用者の使い勝手を犠牲にして収益を上げることはないと誓ったのだ。

このため、エクイティ・ファイナンスによる資金調達額が6000万ドルにとどまるのに、外部の資金供給源として単独のVCとの関係構築を選んだのも驚きではなかった。

セコイアも、アプリ利用者が数億人に増えても収益はわずかだったワッツアップの未来を信じる姿勢を示し続けた。VCがこうした信念を持って投資する場合には、出資比率は高くなる。他のVCがひしめく案件とはこの点も対照的だ。

例えば、ツイッターは調達額が6000万ドルに達した時点で、十数社の外部投資家を抱えていた。上場時には、シリーズAを主導したUSVの出資比率はわずか5.9%だった。

ワッツアップとツイッターの資金調達
ワッツアップツイッター
シリーズA調達額800万ドル500万ドル
投資家の数18
リードインベスターセコイアUSV
シリーズB調達額5200万ドル1500万ドル
投資家の数16
リードインベスターセコイア米Spark Capital(スパーク・キャピタル)
シリーズC調達額なし3500万ドル
投資家の数なし6
リードインベスターなし米IVP

これに対し、ワッツアップは最初からVC1社としか組まない方針を示していた。セコイアはシリコンバレーのキングメーカーとしての実績と豊富な資金力を武器に、中小VCの米Felicis Ventures(フェリシス・ベンチャーズ)らを一蹴したのだ。11年4月のワッツアップのシリーズAで800万ドルを投資すると、13年7月にはさらに5200万ドルをつぎ込んだ。

ワッツアップの資金調達額と評価額
シリーズAシリーズB買収時
出資を受けた額800万ドル5200万ドルなし
企業評価額7840万ドル15億ドル220億ドル

セコイアがワッツアップの評価額を15億ドルとして5200万ドルを追加投資した時点では、ワッツアップの売上高は2000万ドルだった。つまり、セコイアはワッツアップ株を売上高の75倍以上で購入したことになる。

この決断は報われた。フェイスブックがワッツアップを220億ドルで買収した時点では、セコイアの投資額は計6000万ドル、出資比率は約18%に達していた。セコイアの持ち株には30億ドル以上の価値がつき、リターンは50倍になった。

セコイアにとって、ワッツアップがフェイスブックに買収されたのは別の意味でも満足のいく勝利だった。

フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は買収の10年前に、セコイアのパートナー、マイケル・モーリッツ氏に恨みを抱いていたショーン・パーカー氏にけしかけられてセコイアへの売り込み会議にわざと遅れたのだった。

その会議はいたずらが目的で、ザッカーバーグ氏にセコイアから出資を受ける気は毛頭なかった。ザッカーバーグ氏はパジャマ姿で到着すると、「投資を見合わせるべき10の理由」と題した米著名テレビ司会者のデビッド・レターマン風の皮肉に満ちた売り込み資料を提示した。

ザッカーバーグ氏は後にあるインタビューで「セコイアの気分を害したと思う。悪いことをした」と反省した。ザッカーバーグ氏にワッツアップを売りつけて30億ドル以上を奪ったことで、セコイアは一矢報いたことになる。もう一つの最大規模のVC案件であるフェイスブックへの投資に誘われなかった恨みも晴らせたはずだ。

 (2)フェイスブック

フェイスブックの調達額160億ドル、評価額1040億ドルのIPOにより、初期の投資家であるアクセル・パートナーズと米Breyer Capital(ブレイヤー・キャピタル)は大成功を収めた。両社は05年、当時の「Thefacebook(ザ・フェイスブック)」のシリーズAラウンド(調達額1270万ドル)を主導。株式15%を取得した。

この時点で、フェイスブックは8750万ドルというとてつもなく高い評価を得た。それから1年もたたずに、投資家が同社に殺到し始めた。

利用者数と売上高が急増していた06年のシリーズBには数社が参加。米Founders Fund(ファウンダーズ・ファンド)、米Interpublic Group(インターパブリック・グループ)、米Meritech Capital Partners(メリテック・キャピタル・パートナーズ)、米Greylock Partners(グレイロック・パートナーズ)が計2750万ドルを出資し、フェイスブックの評価額は4億6800万ドルになった。

アクセルは10年にフェイスブック株の一部を5億ドルで売却したが、12年にフェイスブックが上場した時点で持ち株に90億ドルの価値がつき、巨額のリターンを得た。この投資により、アクセルのファンド「IX」は最も運用成績の良いVCの一つになった。

一方、フェイスブックに最初に投資したピーター・ティール氏は、機会を逃した。ティール氏は04年、フェイスブックへの50万ドルのシード投資で社外取締役に就いた。ティール氏によると当時のフェイスブックの「評価額は非常に適正」で、利用者は約100万人だった。

ティール氏はフェイスブックの前代未聞の人気ぶりを目の当たりにした。アクセルやブレイヤーと共に再び投資しなかったのは、フェイスブックは過大評価されていると考えたからだ。フェイスブックがティール氏の投資からわずか8カ月後のシリーズAで(1270万ドルを)調達すると、ティール氏(とシリコンバレーの大半)はアクセルの投資額は多すぎると思った。

ここでティール氏は典型的なミスを犯していた。指数関数的な成長を見抜けなかったのだ。ティール氏は後に、フェイスブックの資金調達ラウンドに参加しなかったのは最大の過ちだったと振り返っている。そこから得た最大の教訓は、過大評価されているように「見える」企業についての考え方だったとも述べている。

「日常体験はかなり直線的なので、指数関数的な物事を大幅に過小評価してしまう。大半のVCは評価額が急増したラウンドに対し、進歩が急すぎると考えて過小評価する傾向がある」(ティール氏)

フェイスブックの月間アクティブユーザー数(MAU、百万人)の推移

ティール氏にとって、フェイスブックの成長がありきたりの直線モデルをたどっていなかったのは後から考えれば明らかだった。実際には、フェイスブックは指数関数的な成長を遂げていたからこそ過小評価されたのだ。

ティール氏は後に「一流の投資家(アクセルが念頭にある)が主導する強気の資金調達ラウンドでも、ITスタートアップは総じて過小評価されている。ラウンドの伸びが大きいほど、過小評価の程度も大きい」と述べている。

強い信念があれば、上昇局面でできる限り資金を投じるために、必要な手が打てる。エリック・レフコフスキー氏はグルーポンの設立を支援した後、これを実践した。

(3)グルーポン

11年の米グルーポンのIPOは、米ネット企業としては07年のグーグル以来の規模だった。評価額は130億ドル弱で、7億ドルを調達した。

上場初日の取引終了時点では、初期の投資家である米New Enterprises Associates(NEA)の持ち株14.7%の価値は約25億ドルだった。もっとも、グルーポンのIPOの最大の勝者は筆頭株主のエリック・レフコフスキー氏だった。

レフコフスキー氏は共同創業者、会長、投資家、筆頭株主としてグルーポンに関与。自らの様々な投資手段や経営の役割を通じ、投資側と経営側の双方に身を置いた。その手法には異論もあったが、結局レフコフスキー氏の持ち分は21.6%に達した。グルーポンが11年に上場すると、レフコフスキー氏の持ち株の価値は36億ドルになった。

発端は、レフコフスキー氏がグルーポンの設立を支援したことだった。グルーポンの共同経営者アンドリュー・メイソン氏がレフコフスキー氏の会社に就職したのを機に、両者は知り合った。メイソン氏は06年、レフコフスキー氏に対し、クラウドソースの投票サイト「ザ・ポイント」の構想を打ち明けた。

レフコフスキー氏とブラッド・キーウェル氏は07年、ザ・ポイントに100万ドルの資金を提供した。だが08年にはザ・ポイントは経営難に陥った。レフコフスキー氏はこのプラットフォームを使って共同購入し、値引きを受けている利用者がいることに気付いた。この1度限りの用途がはるかに成功する事業になるとみて、レフコフスキー氏はメイソン氏の事業モデル転換を支援した。

こうして誕生したグルーポンの資金調達ラウンドには様々なVCが参加した。シリーズAではNEA、シリーズBではアクセル、シリーズCではDST、そして9億5000万ドル以上を調達したシリーズDではグレイロック・パートナーズ、アンドリーセン・ホロウィッツ、KPCBなどが名を連ねた。それでも、どの投資家もIPOでレフコフスキー氏を上回るリターンを得られなかった。

グルーポン上場時のレフコフスキー氏の持ち株比率は21.6%で、第2の大株主であるNEAの1.5倍、共同創業者兼CEOのメイソン氏の2.8倍だった。

レフコフスキー氏は共同創業者、会長、初期投資家としての役割で複数の所有権を持ち、けた外れのリターンを得た。

レフコフスキー氏は早い段階で持ち分の一部を現金化した。シリーズC(調達額1億3500万ドル)の1億2000万ドル分と、シリーズD(調達額9億5000万ドル強)の8億1000万ドル分を既存投資家向けに償還した。

同氏は自らの投資会社Green Media(グリーン・メディア)と600 West Partners II(600ウエスト・パートナーズ2)を通じ、このうち3億8600万ドルを受け取った。しかも、この株式の取得費用はわずか546ドルで、IPO前の償還で数百ドルが数億ドルになり、さらにIPOでは数十億ドルになった。

レフコフスキー氏の共同創業者と投資家を兼ねるスタイルは異例の戦略に思えるかもしれない。だが実は「双方のためにプレーする」のはシリコンバレーの昔ながらの慣習だ。KPCBが90年代に通信会社セレントで大成功を収めた背景にも、このモデルがあった。

(4)セレント

米シスコは1999年、セレントを69億ドルで買収した。IT企業としては当時過去最大の買収だった。同社に800万ドルを出資していたKPCBにとって、この日は数十億ドルの給料日になった。

セレントを共同で創業し、率いていたのは、KPCBの元パートナー、ビノッド・コースラ氏だった。KPCBの評判と豊富な取引件数のおかげで、コースラ氏はシリコンバレーの最高のエンジニアに面識があり、市場のニーズを鋭く認識していた。セレントの構想はコースラ氏のオフィスに持ち込まれ、コースラ氏はこれを実行する適切な人材を見つけるだけでよかった。

きっかけは、ラージ・シン氏が96年にJava専門の半導体という事業構想をKPCBに持ち込んだことだった。シン氏の前の会社に出資していたコースラ氏は、この構想に「気乗りしなかった」。その一方で、シン氏に売り込みたい別の構想があった。

シン氏は「コースラ氏からはJavaでは稼げないと言われ、(光学)機器について話した」と振り返った。

コースラ氏は、インターネットのトラフィック急増に伴い、大量の音声とデータを処理できる機器の市場がつくられるとみていた。

コースラ氏はベンチャー投資家としての経験やKPCBに出入りする様々な企業による情報から、通信ネットワークが変化しつつあることを見抜いた。もっと安価で柔軟で、需要の増加に対応できる優れた接続性の解決策を提供できる商機があった。

セレントのテクノロジーは、長距離通信回線と地元の電話・データ網との接続を促した。これにより、電話会社はデータをより速く簡単に送れるようになった。

インターネットのホスト数

KPCBの98年の投資を機に光テクノロジーバブルが幕を開け、セレントの評価額は急上昇し、投資資金が流入した。シン氏とコースラ氏は同社の残りの事業から手を引き、その後2年以内に、シスコは同社を69億ドルで買収した。

あるアナリストは「誰もがKPCBのセレントへの800万ドルの投資とリターンに注目していた。レジの音が『チーン』と鳴るのを聞かずにはいられなかった」と振り返った。

(グルーポンの)レフコフスキー氏と(セレントの)KPCBがこれほどの成功を収めた一因は、投資先企業の経営を直接担っていたからだ。これにより、上昇局面で資金を投じることができた。

(5)スナップ

スナップは17年3月、評価額250億ドルで上場した。ソーシャルメディア・対話アプリ運営企業のエグジットとしては、99年以降で2番目に高い評価額だった。

ベンチマーク・キャピタル・パートナーズが当時保有していた持ち株は32億ドルになった。約800万ドルの投資が20億ドル相当に膨らんだ米Lightspeed Venture Partners(ライトスピード・ベンチャー・パートナーズ)にとっても、最も生産性の高い案件になった。

ライトスピードは12年5月、シードラウンド(調達額48万ドル)に参加し、スナップに初めて投資した。その9カ月後、ベンチマークはスナップのシリーズAで唯一の投資家として1350万ドルを出資した。ベンチマークの投資を主導したのは同社のパートナー、マット・コーラー氏とミッチ・ラスキー氏で、ラスキー氏はスナップの創業者エバン・スピーゲル氏のメンター(助言役)になった。

ラスキー氏がこの関係を構築できたのは、スピーゲル氏とライトスピードが対立したことが一因だった。これは初期段階のスタートアップ、野心的な創業者、経験豊富なVCという内圧の高い世界では珍しいことではない。

その後、フェイスブックをほうふつとさせるスナップのシリーズB(調達額6000万ドル)には、米General Catalyst(ゼネラル・カタリスト)、米SV Angel(SVエンジェル)、中国・騰訊控股(テンセント)、米Institutional Venture Partners(インスティテューショナル・ベンチャー・パートナーズ、IVP)そしてSF Growth Fundなどが参加した。どれもベンチマークやライトスピードほどの高リターンを得ていない。

ベンチマークがスナップチャットへの投資で成功したカギは、スナップチャットという企業の能力を見抜いたからだった。他のみんながアプリの流行に目を向けるなか、ベンチマークは企業に着目した。

13年の時点では、スナップチャットは裸の写真を送り合う大学生向けのアプリにすぎないとみられていた。米誌「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」が同年初めに同社の特集記事を掲載した際には、数秒で消えるモザイク写真のGIF「カバー」も掲載された。

世間とメディアはスナップチャットの将来性を過小評価していたが、ラスキー氏とベンチマークは非常に興味深い状況を目の当たりにしていた。どんなソーシャルメディアを使っているかと誰かに尋ねると、フェイスブックやインスタグラム、ツイッターと同様に、スナップチャットの名前が挙がるようになっていた。

スナップチャットとその創業者についてさらに学ぶと、ベンチマークはこの「セクスティング」アプリの将来性を確信するようになった。

ラスキー氏は後に自身のブログでこう述べている。「ベンチマークは世界を変えようとする起業家を求めている。エバンとボビーは間違いなくそうした野心の持ち主だ。スナップチャットは世界で最も重要なモバイル企業の一つになると確信している。スナップチャットの当初の勢い――1日6000万枚の『スナップ』がシェアされ、これまでに50億枚以上の写真がやり取りされている――がこれを裏付けている」

さらに、「スナップチャットの道は、ベンチマークが初期段階で支援する幸運に恵まれたもう一つのモバイルアプリ『インスタグラム』をほうふつとさせる」とも述べた。

一方、米Upfront Ventures(アップフロント・ベンチャーズ)のマーク・サスター氏などは、反道徳的行為との結びつきがネックになった。

サスター氏は後に自身のブログでこう述懐している。「『タイガーテキスト』というプロジェクトを(おそらく6カ月前に)目にしたばかりだった。これは『期待外れの対話アプリ』だった。タイガー・ウッズが送ったメッセージを愛人全員が保存していたことが、浮気の証拠になったというのが社名の由来だった。スナップチャットについて最初に議論したとき、この話が頭によみがえった」

サスター氏は浮気している夫が主な利用者になるアプリなど、支援したいと思わなかった。これは想像力の欠如で、過ちだったと認めている。

ソーシャルメディアと対話アプリのエグジット

米コンサルティング会社Altimeter Group(アルティメーター・グループ)のスーザン・エトリンガー氏は最近、米紙ニューヨーク・タイムズの取材に対し「ポルノは多くの新たなインターネットサービスの第1の用途と見られており、その通りの場合もある」と語った。とはいえ、これが唯一の主な用途という意味ではない。

スナップチャットの最初の成功の一つは、平日の午前8時~午後3時に、カリフォルニア州オレンジ郡のある小さな高校でアプリの利用が急増していることにスピーゲル氏が気付いたときに訪れた。スピーゲル氏の母親が、この高校に通うおいにアプリについて話したのだった。そこからアプリの利用が広がり、高校生たちは「クラスでデジタル版のメモを回す」(スピーゲル氏)感覚でスナップチャットを使った。

これこそがラスキー氏とベンチマークが投資したアプリだった。セクスティング用ではなく、初期の段階でもバイラリティ(口コミなどで人気が拡散すること)とエンゲージメント(愛着度)水準が明らかに優れているアプリだった。

スナップでのベンチマークや、フェイスブックでのアクセルの例が示すように、早い段階で多額の資金を提供し、投資を積極的に成功に導くのは素晴らしい戦略だ。

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