17年度の粗鋼生産0.3%減 設備トラブルで商機逃す

環境エネ・素材
2018/4/20 16:09
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鉄鋼業界が設備の老朽化に足をとられている。日本鉄鋼連盟(鉄連)が20日発表した2017年度の粗鋼生産は1億484万トンで前年度を0.3%下回り、2年ぶりの減少となった。新日鉄住金やJFEスチールの工場で設備のトラブルが発生し、操業を一時的に停止したのが主な要因だ。国内の新車販売は増え、2020年の東京五輪に備えて建設需要が拡大する絶好の環境にあるが、生産トラブルが頻発して好機を生かせなかった。

好況下だが設備トラブルの頻発で国内の粗鋼生産量は減少した(新日鉄住金の大分製鉄所)

■「ばんそうこう」貼って操業

内訳は高炉でつくる「転炉鋼」が2.5%減の7925万トン、「電炉鋼」が7.2%増の2558万トンだった。

新日鉄住金では17年1月、大分製鉄所(大分市)の厚板工場で火災が発生し、同年8月7日まで操業を再開できなかった。大分製鉄所ではその後も10回以上出火や発煙が発生した。JFEスチールでも同年8月に東日本製鉄所京浜地区(川崎市)の転炉でトラブルが発生し、30万トン減産するなど影響が出た。

設備トラブルだけでなく、構造改革の一環で生産能力を落としたケースもある。神戸製鋼所は昨秋、神戸製鉄所(神戸市)の高炉を休止し、加古川製鉄所(兵庫県加古川市)に集約した。

日本の鉄鋼大手の設備は操業から50年程度たっている例が多く、トラブルや生産効率の低下を招く原因になっている。「問題が起きるたびに、ばんそうこうを貼り付けているような状況」(鉄鋼大手幹部)という。

一方、中韓勢は比較的新しい設備が多く、コスト競争力の回復が課題だ。新日鉄住金は21年3月期までの中期経営計画で国内の設備投資を3年間合計で約1兆7000億円と現在の中計より3割増やす方針を打ち出した。JFEスチールも東日本製鉄所千葉地区(千葉市)などでコークス炉の更新に着手している。設備更新を急ぎ、生産効率の引き上げとトラブルの抑制を図っている。

■18年度も需要は堅調

18年度も内需は引き続き堅調とみられる。鉄連の進藤孝生会長(新日鉄住金社長)は18年度の粗鋼生産量は「1億600万トンを超えそうだ」と述べ、17年度をやや上回る水準になると予想する。東京五輪関連施設などの建設需要が底堅い一方、自動車向けは微減になるとの見通しだ。

懸念材料は米国の鉄鋼輸入制限に端を発した保護貿易の流れだ。17、18日に開かれた日米首脳会談で、トランプ米大統領は鉄鋼の輸入制限の対象に日本を含めた。日本政府は品目別での除外に期待をかけているが、国としては対象であり続ける。

世界最大の生産量を誇る中国から米国への鋼材輸出が減少した場合、行き場を失った鋼材が日本などのアジア市場に大量に出回り、市況の悪化を招く可能性もある。鉄鋼業界は国内での生産トラブルと世界の市況の2つに気をもみながらの事業運営を迫られそうだ。(井上みなみ、大西智也)

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