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欧州CL4強対決 優勝候補筆頭はバイエルン

欧州の最強クラブを決める大会、チャンピオンズリーグ(CL)の4強が出そろった。準決勝のカードはイングランドのリバプールとイタリアのローマ、ドイツのバイエルン・ミュンヘンとスペインのレアル・マドリード。2017~18年シーズンの欧州王座に一番近いのはバイエルンだと私はにらんでいる。

準決勝はホーム・アンド・アウェーで行われる。リバプール―ローマ戦が現地時間の4月24日と5月2日、バイエルン―レアル戦が同4月25日と5月1日に行われ、一発勝負の決勝戦はウクライナのキエフで5月26日に開催される。私の見立てでは、準決勝のバイエルン―レアルが事実上の決勝戦となり、これを勝ち抜いたバイエルンが栄冠を手にするという気がしている。

レバンドフスキ、今が盛り

レアルは固定したメンバーでこの数年を戦ってきて伸びしろがもういっぱいいっぱいになっている感がある。今季は国内リーグでFCバルセロナ、アトレチコ・マドリードの後じんを拝し現在3位(第33節終了時)。4位のバレンシアに勝ち点3差であおられており、チーム状態は決してよくない。

特に気がかりなのが失点の多さで、国内リーグでは33試合で36失点も許している(バルセロナは19、Aマドリードは18)。CLの準々決勝だったユベントス戦も第1戦をアウェーで3-0で制したと思ったら、第2戦はホームで3失点し、延長突入寸前に得たPKで辛うじて勝ち上がった。現状では、何点取れば安全圏なのかわからないくらい安定感を欠いている。

一方のバイエルンはブンデスリーガ6連覇を早々に決め、5月19日(現地時間)に行われるDFBポカール杯決勝(日本の天皇杯に相当)にも駒を進めた。成績的にも日程的にも主力選手に休養を与えながら戦っても、どこからも文句が出ない状況で、CLを合わせた3冠獲得の可能性は十分にある。

バイエルンにはポーランド代表のレバンドフスキ、レアルにはポルトガル代表のクリスティアノ・ロナルドという傑出したストライカーがいる。実績はロナルドの方が上だし、相変わらず点も取っているが、往時のスーパーマンのような力はさすがに陰ってきた。ゴールを奪うには周りの力が必要になってきたようにみえる。

ストライカーとしての盛りを感じさせるのは、むしろレバンドフスキの方で、このFWを抑えるのはレアルの現在のDF陣では相当厳しいように思える。レバンドフスキを生かす周りの組織もバイエルンの方がよく整備されているように思う。

おそらく、ロナルドがいちばん頼りにしているのはクロアチア代表のMFモドリッチだろう。現在はレアルというチーム自体がモドリッチの出来次第なところがある。モドリッチとブラジル代表のカゼミロ、ドイツ代表のクロースで組む中盤はボランチタイプを並べるやり方で、これまで数々の栄光を手にしてきた。ケガがちなFWベイルに代わってスペイン代表のMFイスコが力をつけたのも大きかった。イスコの成長で何とか持ちこたえてはいるものの、前線の攻撃力に頼りすぎる基本構造は変わっておらず、ロナルドの駆動力の低下とともにその弊害が目立つようになってきた。

レアルには左SBマルセロの攻撃参加という強烈な武器がある。が、これはバイエルンには好都合かもしれない。このチームには両サイドの背後を突ける選手、ロッベンだとかリベリ、コマンといった、とてつもなく速くてうまい選手がいる。レアルの両SBの攻め上がりを手ぐすね引いて待っている状態だろう。

リバプールのプレス、ローマに?

リバプール―ローマ戦は世評に反して? 私はローマが勝つ気がしている。準々決勝でプレミアリーグを独走で制したマンチェスター・シティーに2連勝したリバプールのサッカーは本当に素晴らしかった。高い位置から強烈なプレスをかけ、奪ったボールを高速カウンターにつなげる戦術が見事にはまった。が、あの戦い方には「はまる相手」と「はまらない相手」がいる。

マンチェスター・シティーはそれが見事にはまる相手だった。相手がプレスをかけて来るのが分かっていてもパスをつなぐことをやめない哲学を持ったチームだからだ。ローマは違う。相手が前からボールを取りにきたら平気でロングボールを縦に蹴ってくる。そういうボールを受けるのに最適なジェコという大型FWもいる。

こういうシンプルな攻撃を日本のファンはバカにしがちだが、リバプールのように重心が前にかかったチームはボールを後ろに飛ばされると、やることが往々にしてなくなってしまう。

プレミアリーグの試合を見ているとリバプールは本当にいいサッカーをしていると思う。前線のサラー、マネなんか本当に強烈だ。けれど、就任3年目のクロップ監督のチームに勢いは感じても欧州チャンピオンになるほど成熟している感じはしない。

ローマはリバプールと違って「守りながら攻められる」のが強み。準々決勝で第1戦をアウェーで1-4と大敗しながら、2戦目にホームで3-0と完勝し、優勝候補のバルセロナを倒した自信は大きい。選手全員が体を張れるし、中盤のストロートマン、デロッシにしても攻められるほどに反発力が増すタイプ。攻守両面でセットプレーに強さもある。

バイエルン、大舞台の経験で差

ファイナルの相手がリバプールになってもローマになっても優勝するのはバイエルンだと思う。大舞台の経験の差で一日の長があるからだ。心情的にはローマやリバプールに勝たせてやりたいが、レアル戦をクリアしたバイエルンはメンタル面も含めてコンディションを最高潮に仕上げてくるだろう。

そういう流れになると、力を最大限に発揮しそうなのがバイエルンを率いるハインケス監督の手腕だ。この72歳の百戦錬磨の監督は選手を回すのが本当にうまい。昨年10月に成績不振により解任されたアンチェロッティ監督から指揮を引き継ぐと、あっという間にチームを立て直してみせた。

言い方は悪いが、5年前に監督業からの引退を告げてからはリビングのテレビでサッカーを見るくらいだったのではないか。そんな老将を引っ張り出した途端にこの快進撃である。こうなると、最先端の戦術がどうのこうのじゃなくて、選手一人ひとりの心情を把握するのにたけているとしか思えない。戦術的なことはコーチに任せ、人心掌握に徹しているのだと思う。

監督、コーチ、選手、フロントのそれぞれの筋目をきちんとつけて、越権行為は許さない。バイエルンを率いて国内タイトルをほしいままにし、バイエルンやレアル・マドリードで欧州タイトルを獲得した輝かしい実績もあるから有名選手も言うことを聴く。聴かせるパーソナリティーの持ち主というべきか。とにかく監督が代わってから選手の不平不満が外に出なくなった。バイエルンは自分の庭みたいなものだから仕事のしやすさがあったとはいえ、大した人だと思う。

CLの決勝は取り返しがつかない一本勝負だから、余計に経験の差が出やすい。そういう試合でハインケス監督のキャリアは有形無形の力になるだろう。

リバプールもローマもレアルも今シーズンの国内リーグで優勝争いに絡むことはなかった。ここでの順位はこの1年間の調子のバロメーターといえる。バイエルンはすべてのタイトルを狙い、着々と三冠に近づいている。それだけ今のバイエルンは強いという意味であり、充実の証しといえる。

ただし、準決勝までのCLにはホーム・アンド・アウェーによる2回戦制の妙味がある。準々決勝の第1戦を4-1で大勝したバルセロナがローマでの第2戦を0-3とされ、アウェーゴールの差でひっくり返された試合はその典型だった。本当にまさかの敗退だった。

レアル、今季無冠の危機も

このアウェーゴールの重みは試合を思わぬ方向に動かす要因になる。バルセロナにしても大勝の中で許した1点が、最初はかすり傷程度に思えたのに第2戦の途中からどんどん重くなったことだろう。一度おびえてしまったり、浮足立ったりすると、チャンスは相手にどんどん回る。小さかった傷がどんどん傷口を広げていく。

試合はある方向に動き出したら、そう簡単には元の流れには引き戻せないものだ。「なぜ、バルサほどのチームが」というけれど、勝ち続けているチームの方がそういう展開に慣れていないともいえる。追いかける足音を聞かせて逆転することには慣れているが、追いかけられる足音を聞かされながら試合をするイメージが常勝軍団ほどないものだ。そういう怖さは準決勝の戦いでもどこかでぽっと顔を出すかもしれない。

準決勝でバイエルンとレアルが激突するのは本当にもったいないと思う。そして仮にレアルがここで負けて今季を無冠で終えるようなことになると、レアルは「一つのサイクルが終わった」という議論が沸き起こる気がする。無冠で終わったのは「ジダン監督のせいだ」とか誰それが悪いというのではなくて、栄光に彩られた現在のチームも下降期に入ったのだと。

一時代を築いたチームが必ず次のサイクルに移るのは宿命のようなもの。新たなサイクルは選手という「血」を入れ替えることでしか果たせない。そういう次のサイクルに入るきっかけになる気がしている。

ロナルドらレアルのビッグネームが、その流れを覆すことができるのか。そこが準決勝の裏テーマになる気がしている。

(元J1仙台監督 清水秀彦)

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