米、軍事用ドローンの輸出規制緩和へ 雇用創出狙う
【ワシントン=中村亮】米政府は19日、防衛装備品の輸出促進策を発表した。軍事用の無人機(ドローン)に関して米国の防衛関連企業が外国政府と直接交渉できるようにして輸出承認にかかる期間を短くする。厳しい審査対象とする機種も減らす。防衛産業を後押しし、国内雇用や投資拡大につなげる。防衛品の輸出で攻勢をかける中国やロシアに対抗する。
米国務省は国内の軍事関連企業と協議し、今後60日以内に輸出拡大に向けた行動計画の詳細を詰める。軍事用のドローンは企業と外国政府の直接交渉を認める。当事者同士で取引価格や契約条件を柔軟に変えながら交渉できれば承認までにかかる期間が短くなる。米政府が仲介役になる交渉では承認まで数年かかることが多いという。
厳しい審査の対象とする機種も減らす。たとえば巡航ミサイルに攻撃対象の位置を伝える装置を搭載したドローンは、直接的な攻撃能力はないため「非軍事」に区分けして審査を軽くする。通常兵器に関しても売却期間の短縮に向けた規制緩和を行動計画に盛り込む見通しだ。
トランプ米大統領は18日の記者会見で防衛装備品の輸出に関して「国防総省や国務省の官僚のせいで注文に至るまでに数年かかっていた」と説明し「これからは数日の問題になる」と強調していた。米政府は高度な技術を使う防衛装備品の輸出は技術が流出したり、転売でテロリストの手に渡ったりするのを防ぐため厳しく審査してきた。ただ米国内の軍事関連企業は手続きに時間がかかるとして改善を求めていた。
トランプ政権が輸出規制を緩めるのは防衛産業を通じて国内経済を活性化させるためだ。11月の米議会中間選挙をにらんで、影響力の大きい軍事関連企業に配慮する。輸出が増えればトランプ氏の目指す貿易赤字の削減にもつながる。
米政府高官は19日「中国などは国際市場で激しく売り込みをかけている」と危機感を表明。「(オバマ前政権の)過剰な輸出規制が望ましくない結果を導いた」と批判した。中国やロシアは米国よりも安い価格で提供しているといい、売却先の国への資金支援なども検討する。